自らも37才で資格を取得し起業した、公認会計士の佐藤幸恵さん。「起業」といっても何をしたらいいのかわからない人のために、女性ならではの起業ノウハウを学べる連載コラムをスタートします!
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100年ライフについての書籍がベストセラーになり、社会が大きな変化の過渡期にあるのを肌で感じ無い日はありません。働き方改革や女性活躍が国を挙げての取り組みになっている中、壮年期、中年期にさしかかる私たちは、「どのように働き続け、どのように生きるか」に迷い、自ら問うている方々も多いのでは無いでしょうか。
起業をキラキラしたファッションではなく、幾多の人生経験を経てきた女性ならではの、地に足の着いた持続可能な人生の選択肢として、女性起業2.0をお話ししていきたいと思います。
今回は、女性が起業する3つのメリットです。
■1:自分の人生をデザインできる
調査(※1)によると、女性が起業を目指す理由の上位3項目は「自由に仕事をしたい」「仕事の経験・知識や資格 を生かしたい」「収入を増やしたい」になっています。
これらの動機は、組織で働く女性がライフイベントなどで組織を一旦離れると、復職の難しさや、育児や介護は時間のコントロールが自分自身ではしづらいこと、担い手が女性になっていることなど、現状の社会的課題が裏にあると思います。一度きりの人生を制度や固定観念で縛られるより、時間と収入に対して、意志と自由を手に入れ自分の才能と可能性を存分に発揮できたら、人生に対する幸福感がどんなに高まるでしょうか。自分の時間とお金をマネジメントすることは、自分の人生をデザインすることなのです。想像するだけでワクワクしませんか!? では、実際のところはどうでしょう。
私自身が起業して本当に良かったと思っている点は、時間に対する自由裁量を得たことです。私は2014年10月に父を亡くしました。そのときは議員秘書になって4か月ほどしか経っておらず、亡くなる10日前に、病院で「もう覚悟しておくように」と伝えられても、職場に気を使って毎日は父のところに行くことができませんでした。また、ふたりの子どもたちが小学生・中学生のとき、私は授業参観にトータルで1、2度しか行けませんでした。
一方、起業後の2016年4月に、母が両脚に人工股関節を入れる手術をして3か月入院しました。当時は片道1時間弱の病院まで、毎日、車で通うことができました。その間はSkypeでのミーティングやチャットツールを利用し、お客様と会う時間は相談させて頂きながら、仕事を続けることができました。
短期的には仕事のスピードが落ちましたが、長期的に考えると、仕事と介護のバランスを取りながら過ごした時間は、本当に精神的にも満たされ、その後の集中力と活力の増大により経済的効果はプラスに働きました。
政策金融公庫が貸付を実施した起業者への統計データを見ても、起業した女性の収入は、男性起業者の家族(配偶者など)が得ている収入を上回っています。
■2:ビジネスがしやすい
総務省が発行する『中小企業白書』(※2)によると、女性が起業するとき、生活関連サービス業、娯楽業、教育、学習支援業などの身近なサービスを事業領域として選択する傾向があります。生活者として、本当に必要なモノが見えているので、その領域をビジネスチャンスとして嗅ぎ分け事業を起こすことができるのです。また、単身世帯のうち、勤労者世帯の消費支出は女性の方が男性より多い。すなわち、実際の消費者としての気持ちを理解できているのです(※3)。
統計的にも、女性起業家の事業は7割強がBtoC(個人の顧客をビジネスの対象としたもの)で、その販売先は6割が女性をメインターゲットとしています(※4)。
さらに、女性起業家はミニマムに立ち上げる傾向があります。資本金や開業費は男性に比べ低くなっています。個人事業主としてビジネスをスタートすれば、登記費用など不要で、税務署と役所への書類提出のみで手続き費用は0円です。もし会社という形態を取りたいのであれば、資本金は1円から設立可能ですし、会社形態(株式会社、合同会社など)により諸費用が違うので、安い会社形態を選ぶ事も出来ます(事業目的により選択する事があるべき姿ですが)。
販売先を同性や知り合いをメインにし、小さいサイズからチャレンジするのは決して悪い事ではありません。「0から1と生み出すデザイン思考」というものを聞いた事があるかもしれませんが、今ではビジネスの世界では常識となっている創造的プロセスの手法です(※5)。簡単にいうとデザイン思考とは、商品・サービスを使う実際の顧客ニーズに近づくとともに、プロトタイピング(試作)などを通じて市場の反応を見ながら、コンセプトをカタチにしていくアプローチ方法です。
女性起業家は、深く意識していなくても、本能的にデザイン思考に近いビジネスのプロセスを踏んでいると私は見ています。その才能と可能性を発揮しない手はありません。
■3:世界が良くなる
■1で女性が起業する動機は、社会課題の反映と述べました。仮に自己実現やワクワク感で起業したとしても、結果的にその行動力が、まだどこかで悩み苦しんでいる女性の勇気となり、社会をより良くする力となっているのです。
女性起業家が得意とする事業領域は、マーケットが小さい傾向があります。しかし、そこには小さいながら確実に不自由や問題があり、その解決策を女性起業家が提供しているのです。
私の友人の女性起業家に、少数民族とコラボレートしてつくるクオリティーの高い自然素材の洋服を、世界で販売するビジネスを行っている人がいます。少数民族の自立の支援と、先進国にいながら環境に負荷をかけない持続可能な世界を実現したい人を、洋服でつないでいます。この、不効率な事業はひと昔前では小規模事業者では実現が不可能だったでしょう。しかし、今はIT、インターネットの発達によりコアニーズをコアな人に届ける事は、たったひとりの女性でも可能になっているのです。女性起業家により、より世界が良くなると信じられるのです。
与えられるキャリアや素敵な人生など、いくら待ってもやってきません。 蓄積してきたスキルや経験を切り崩して過ごすには、先が長すぎます。 しかし、悲観的になる必要もありません。 私たちは、どこからでも人生をデザインする事が可能なのです。
起業は未知の世界でリスクと感じるかもしれません。 未知なら知れば良いのです。リスクならヘッジすれば良いのです。 この連載を通じて、起業というものが身近になる事を願っています。
最後に、私の好きな言葉で締めたいと思います。
「世界に変化を望むのであれば、自らが変化となれ」ガンジー
http://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/team/kigyo/pdf/h28_0121_kigyo01_ss2.pdf
- TEXT :
- 佐藤幸恵さん 公認会計士・税理士
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- WRITING :
- 佐藤幸恵
- EDIT :
- 安念美和子