ジャンニ・マシャレッリはキエーティから南へ20kmの位置にあるサン・マルティーノ・スッラ・マルチーナに生まれ、祖父のウンベルトからワイン作りの情熱を受け継いだ。20才の時にシャンパーニュに留学し収穫から醸造までを体験。その経験を地元アブルツォに持ち帰り、1981年に生家のヴィッラ・ジェンマでワイン作りを始める。

たゆみない研究と革新を繰り返し、成長を続けているワイナリー

現在はアブルッツォを代表するワイナリーへと大きく成長した「マシャレッリ」の前には、ジャンニが生まれ育ったヴィッラ・ジェンマが今も残されている。
現在はアブルッツォを代表するワイナリーへと大きく成長した「マシャレッリ」の前には、ジャンニが生まれ育ったヴィッラ・ジェンマが今も残されている。

ジャンニのモットーは「Innovazione continua 確信は続く」つまりつねにたゆみない研究と革新を繰り返し、ワイナリーを成長させてきたのだ。ジャンニはアブルッツォの在来品種=モンテプルチアーノ、トレッビアーノの可能性を信じ、フランスで学んだ核心を持ち込んだ。それはギヨー(ブドウが房をつける枝(結果母枝)が主幹から2本伸びている剪定方法)とフレンチ・オークのバリックで、アブルッツォでは未だかつて誰も導入していなかった方法だ。

ジャンニ・マシャレッリの意志を受け継ぐ

ジャンニの遺志を継ぐスタッフとともに、まだ熟成中のワインを試飲。壁にはジャンニが遺した多くの言葉がワイナリーのモットーとして描かれている。
ジャンニの遺志を継ぐスタッフとともに、まだ熟成中のワインを試飲。壁にはジャンニが遺した多くの言葉がワイナリーのモットーとして描かれている。

ファーストヴィンテージは1983年でトレッビーノとモンテプルチアーノ合計9,000本。1984年にはサン・マルティーノの優良畑からのセレクション、ヴィラ・ジェンマ・ロッソをリリース。休みなく革新に向き合うジャンニのワイン作りが本格的にスタートした。

ジャンニは2008年、52才の若さでこの世を去ったが後を継いだのはクロアチア出身のジャンニ夫人マリーナ・チヴェティチ。いまは年産250万本にまで成長したが、ジャンニがワイン作りを始めたヴィッラ・ジェンマはいまもワイナリーの正面に佇んでいる。

ジャンニが愛したペンサトイオ(思想室)からは、サン・マルティーノ・スッラ・マルチーナのぶどう畑が、まるで額縁に収められた一幅の絵画のように見渡せる。
ジャンニが愛したペンサトイオ(思想室)からは、サン・マルティーノ・スッラ・マルチーナのぶどう畑が、まるで額縁に収められた一幅の絵画のように見渡せる。

ワイナリーから、サン・マルティーノ・スッラ・マルチーナの畑に向かう。ここにあるのは、ジャンニが一人になりたい時に来たと言うペンサトイオ=思想室だ。この小さな建物は現在特別なテイスティングや食事会などに使用されており、大きく作られた窓からは眼前にモンテプルチアーノの畑が広がっているのが見える。ジャンニは1987年、当時20才だったマリーナとクロアチアで出会う。

マリーナの祖父はクロアチア沿岸部、ダルマツィア地方でワインを作っており小さい頃からマリーナも祖父のワイン作りを見て育ったという。マリーナいわくジャンニと出会った時から「冒険」は始まり、ジャンニを追ってイタリアに渡る。二人三脚でのワイン作りが始まり、ジャンニの死後はマリーナがワイナリーの経営を引き継いだ。現在は「シニョーラ・デル・ヴィーノ・アブルッツォ」とも呼ばれ多くの人々から尊敬を集めている。

マシャレッリが所有する古城カステッロ・ディ・セミヴィーコリ。宿泊施設もあるのでパーティやレセプション会場として使われる他、大事なゲストの試飲会場として使われることもある。
マシャレッリが所有する古城カステッロ・ディ・セミヴィーコリ。宿泊施設もあるのでパーティやレセプション会場として使われる他、大事なゲストの試飲会場として使われることもある。

サン・マルティーノ・スッラ・マッルチーナから移動し、北へ10kmほどにあるカステッロ・ディ・セミヴィーコリに向かう。これは17世紀に作られた貴族の館で現在はマシャレッリが所有、ウエディングやバンケット、宿泊施設も備えたワイン・リゾートとして使用されている。高台にあるので窓からはマイエッラ山地やアドリア海まで一望できる。ここでカステッロ・ディ・セミヴィーコリのディレクターであるヴァレンティーナに案内され、アブルッツォ産のサラミやチーズとともにマシャレッリのワイン計19種類を味わった。

この日カステッロ・ディ・セミヴィーコリで特別に試飲したのは白、赤、ロゼ、スパークリング合計20種類ほど。
この日カステッロ・ディ・セミヴィーコリで特別に試飲したのは白、赤、ロゼ、スパークリング合計20種類ほど。

現在マシャレッリはVilla Gemma, Marina Cvetic, Castello di Semivicoli, Gianni Masciarelli, LineaClassica, La Botte di Gianniの6ブランドのワインを生産しており、VillaGemma(ヴィッラ・ジェンマ)はモンテプルチアーノ・ダブルッツォ、チェラスオーロ・ダブルッツォ、ビアンコ・テラマーネの3種。

一方、Marina Cvetic(マリーナ・ツヴェティッチ)は1991年が初リリースでモンテプルチアーノ、トレッビアーノの他にカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、メルロー、シャルドネといったフランス品種100%計7種類。

Castello diSemivicoli(カステッロ・ディ・セミヴィーコリ)はトレッビアーノ、ペコリーノ、ロッソIGTテッレ・アクイラーネの3種。

そしてGianni Masciarelli(ジャンニ・マシャレッリ)はジャンニの死後2014年が初リリース。マリーナがジャンニの名前を冠することを強く望み、モンテプルチアーノ・ダブルッツォ、チェラスオーロ・ダブルッツォ、トレッビアーノ・ダブルッツォと言う伝統的なラインナップ3種類だ。

マリーナ夫人を中心にくつろぐマシャレッリ・ファミリー。マリーナ夫人は今もジャンニの遺志を継いでワイン作りに情熱を傾けている。
マリーナ夫人を中心にくつろぐマシャレッリ・ファミリー。マリーナ夫人は今もジャンニの遺志を継いでワイン作りに情熱を傾けている。

全てのテイスティングについて書くと冗長すぎるで、最後に特に素晴らしかったワインについてインプレッションを。もしこれらのワインを見つける機会があれば是非とも試してみてほしい。

Trebbiano d’AbruzzoCastello di Semivicoli DOC 2015(トレッビアーノ・ダブルッツォ・カステッロ・ディ・セミヴィーコリ)キウイ、パパイヤ、マンゴーナなどのトロピカルフルーツ、タンポポやひなぎくといった野の花、味わいはラベンダーのはちみつのようでとても心地よい余韻。

Montepulcianod’Abruzzo Villa Gemma Riserva 2014(モンテプルチアーノ・ダブルッツォ・ヴィッラ・ジェンマ・リゼルヴァ)陰干しブドウ、凝縮感が素晴らしくブラックベリー、ミルト、リコリス、ダークチョコレート、長期熟成にも耐えうる素晴らしいワイン。

Montepulciano d’Abruzzo Marina Cvetic 2016(モンテプルチアーノ・ダブルッツォ・マリーナ・ツヴェティッチ)バラやハイビスカスのような赤い花の香り、ダークチェリー、パンフォルテ、完熟したタンニン。

Cerasuolo d’Abruzzo Villa Gemma2018(チェラスオロ・ダブルッツォ・ヴィッラ・ジェンマ)すぐり、野いちご、梨などの白い果物、エニシダ、心地よいフレッシュな酸と軽いタンニン。

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この記事の執筆者
1998年よりフィレンツェ在住、イタリア国立ジャーナリスト協会会員。旅、料理、ワインの取材、撮影を多く手がけ「シチリア美食の王国へ」「ローマ美食散歩」「フィレンツェ美食散歩」など著書多数。イタリアで行われた「ジロトンノ」「クスクスフェスタ」などの国際イタリア料理コンテストで日本人として初めて審査員を務める。2017年5月、日本におけるイタリア食文化発展に貢献した「レポーター・デル・グスト賞」受賞。イタリアを味わうWEBマガジン「サポリタ」主宰。2017年11月には「世界一のレストラン、オステリア・フランチェスカーナ」を刊行。