「浮世(うきよ)」って何?「浮かれた世の中」でいいの?
本日9月20日は、江戸時代の浮世絵・美人画の大家・喜多川歌麿(きたがわうたまろ)の忌日だと言われています。
「浮世絵師」と聞くと、ほとんどの人が真っ先に連想する名前が、歌麿(うたまろ)・写楽(しゃらく)・広重(ひろしげ)あたりでしょう。
歌麿は美人画、写楽は役者絵、広重は『東海道五十三次』に代表される風景画…それぞれの作風も、なんとなく連想できるかと思います。それにしても、なぜ、江戸時代に代表される絵画を「浮世絵(うきよえ)」と呼ぶのでしょうか?
…というところで、本日1問目のクイズです。
【問題1】「儚む」ってなんと読む?
「儚む」という日本語の読み方をお答えください。
ヒント:「むなしく感じる。頼りなく思う。」という意味の日本語です。
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 儚(はかな)む です。
「浮世」という言葉の世界観を読み解くには、この「儚む」という言葉がキーワードになると思います。
「浮世」という言葉のルーツは「憂き世=辛い事こ多い世の中」という考え方だと言われています。平安時代の短歌などでは「うきよ」という言葉はまさに前述の意味で使用されています。
その後、仏教的思想と融合すると「憂き世」は「無常の世」というような解釈に転化し、つかみどころなく頼りない・儚(はかな)い状態を表す「浮」の字を用いた漢語「浮世(ふせい)」の影響を受け「浮世(うきよ)」と書かれるようになりました。
江戸時代に入ると「儚(はかな)い世の中ならば、いっそ思い切り浮かれて暮らそう」という享楽的な世間感が生まれ、それまで「儚い世の中」を表現していた「浮世」に「だからこそ浮かれ、今を生きよ」というような、儚さとは相反する「浮かれる」イメージも共存するようになったようです。
それがとても江戸時代らしかったことで、この時代に花開いた文化の多くに「浮世絵」「浮世草子」「浮世話」など「浮世」という言葉が使われています。この場合の「浮世」は、「憂(う)さ」「儚さ」を内包した「浮かれ=清濁あわせて受け入消化・昇華」というような「江戸時代らしさ」を意味し、江戸時代以降の「浮世」という言葉は、「(江戸時代における)当世の」「好色な」などの意味で使用されています。
…というところで、2問目のクイズです。
【問題2】喜多川歌麿の「美人大○絵」といえば、○に入る言葉は?
江戸時代当時、庶民に大人気を博した、斬新な浮世絵の描画スタイル「大○絵」といえば、○の中に入るのはどんな漢字一文字でしょうか?次の選択肢の中から正しいものを選んでください。
1:「福」が入り「大福絵(だいふくえ)」
2:「首」が入り「大首絵(おおくびえ)」
3:「技」が入り「大技絵(おおわざえ)」
…さて、正解は?
※「?」画像をスクロールすると、正解が出て参ります。
正解は… 2:「首」が入り「大首絵(おおくびえ)」 です。
まずは参考画像をご覧ください。
左右とも喜多川歌麿の作品ですが、
左側が従来のスタイルで、人物の全身及び背景なども描かれ、「現実を切り取った一枚の絵画」的な構図です。
対して右側が、クイズの答えともなった新たなスタイル「大首絵(おおくびえ)」で、こちらは「モデルの顔立ちや表情」をクローズアップするため、それまで描くことが当たり前であった背景や全身が省かれています。
こうした「美人大首絵」「役者大首絵」は、登場するやいなや、大人気を博しました。なぜならば「大首絵」は、美人画であれば、庶民がお目にかかれぬような高級遊女や、その地まで出向かなければ会えない看板娘の「ブロマイド」「ピンナップ」的な役割だったのです。「何よりもスターの顔」がしっかりと描かれていることに重きを置いた、大衆の興味を汲んだ、大変斬新な手法の登場でした。
いつの世も、マーケティング・リサーチは重要ですね。
本日は浮世絵師・喜多川歌麿の忌日にちなんで
・儚(はかな)む
という難読漢字と、
・浮世(うきよ)
という言葉の概念、
・大首絵(おおくびえ)
のトリビアをお送りしました。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- ILLUSTRATION :
- 小出 真朱