女優・羽田美智子さんが見せる、もう一つの顔とは?

女優デビューしてから32年間、芸能界の荒波を歩み続け、今もなお多くの作品に出演し、幅広い世代から愛され続ける羽田美智子さん。Precious.jp読者にとっては、透明感あふれる美肌とチャーミングな表情で化粧品会社のコマーシャルに出演されていたころからずっと、半歩前を歩いている憧れの女性的存在、かもしれません。

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自身が「本当にイイ!」と思ったものだけを紹介・販売する「羽田甚商店」店主の羽田美智子さん

その羽田さんが2020年10月9日(金)、著書『羽田さんに聞いてみた、小さな幸せの見つけ方』を発売されます。デビューしてから今までの、自らの生き方や仕事への想いが詰まった1冊です。

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『羽田さんに聞いてみた、小さな幸せの見つけ方』(宝島社)¥1,400(税抜)

本記事では、彼女が、30代からの夢であったというお店をECセレクトショップ「羽田甚商店」で実現した経緯や店主としてのポリシー、商品のこだわりなどを伺いました。

誰もが安心するような笑顔を持ち、穏やかな雰囲気が魅力の羽田さんが見せるキャリア女性としての一面や、親友のお母様が作っている驚きのマーマレードについてなど、「へぇ~!」が満載です。

6代目店主として。「羽田甚商店」起業に込めた3つの想い

Precious.jp編集部(以下同)──2019年、女優として成功していた羽田さんが屋号を継承し、羽田甚商店をオープンしたきっかけは?

もともと実家が羽田甚商店をやっていたのですが、2015年に5代目の父が店を畳むことに。本当は6代目を兄が継ぐはずだったんですが、一人は教職、一人はサラリーマン、私は女優で、継ぐ人が誰もいなくなってしまって。羽田甚商店はこれでおしまい、ということになりました。

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1865年、慶応元年創業の羽田甚商店 ©高村瑞穂

そのころ、テレビ番組『ファミリーヒストリー』で、ご先祖さまに両親が謝っている姿が流れました。私たちの代で終わらせてしまって申し訳ない、でも子どもたちも皆立派にやっているから許してくださいって。それを観て、屋号を途絶えさせるってそういうことか、と…。

実は30代のころから京都にお店を出したい!という気持ちがあって、実際に物件を探したりもしていたんです。その想いと実家の屋号を継承したいという想い、それから紹介したい商品もある、というのが重なったタイミングで、もうやっちゃったほうがいいかな」、となりました。

また、自分がこの世に生を受けてやりたかったことはなんだろう、と考えたときに、女優の夢は叶えられたので、ずっと自分の中にあったもう一つの『お店をやりたい』をやるなら今しかない!と。

──女優としてのキャリアが羽田甚商店に役立っていますか?

女優のキャリアとはちょっと違うのかもしれませんが…、女優の仕事をしていくなかで紀行ものとか旅、ドキュメンタリーといった番組のMCやナビゲーターをやらせていただく機会がとても多く、そのお陰で日本全国の職人さんに直にお会いできて、そこで日本のものづくりの真髄を垣間見ることができたんです。

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ドラマの撮影や旅番組で全国のあちこちを訪れた羽田さん ©高村瑞穂

こんな風に作られているんだ、何気ないものにも職人さんの心意気があって、もっとよくなるために努力されているんだということを知って、「その想いを代弁したい」と思うようになりました。

本当に驚く素敵なもの、を見つけるのが私のチャレンジ

──羽田甚商店をオープンする上で一番大きなチャレンジは何でしたか?

そもそもアナログ人間なのでデジタルはわからないことが多く…それはチームプレーでフォローしてもらっています(笑)

私自身が本当に驚くくらい素敵なもの、を見つけるのが大きな挑戦ですね。驚くものは滅多にないので大変です。

商店を始めてから、「こういった商品があるから取り扱いませんか」と送っていただくことがあって。人間関係の情とか繋がりとかでお断りするのはちょっと…、と思うことは多々あるんですけど、心を鬼にして(笑) 扱うのは、自分自身がこれは本当に皆様の役に立つ!と思うものと、製作工程が素晴らしく愛があるもの、そういうものに限らせていただいています。

いろんな人たちが事業を始めて、うまくいかなかった様を見ていると、引きずられたり、余計なものが入ってブレてしまっているな、と感じます。最初は素晴らしいコンセプトだったのに、非常に残念…と思うこともありました。たくさんスタッフがいるから仕方がないんですけどね。なので、私は手広くやるつもりはないんです。

──羽田甚商店をオープンする際にためらいはありませんでしたか?

後に引けない、当たって砕けろ、という気持ちと、成功しなくてもいい、と思いながらも、いいものを扱っているのだから失敗するわけがないとも思っていました(笑)

概念が変わった!友だちの母が作るマーマレード

──印象的な商品は?

手作りのものが多いので、数が限られたものしか扱っていないのです。本当にいいものは大量生産はできないんですよね。

こんなことがありました。たまたま幸運が重なって、友だちのお母様が作っているマーマレードが美味しいから食べてみなよ、と勧められて味わってみたら、素晴らしかったんです!私はそういう類のものはあまり食べてこなくって、どれもこれも余っちゃって食べきったことがないので、最初はためらいがあったのですが…、まさにマーマレードの概念が変わりました。

 

もともとは、そのお母様たちは東京で事業をされていたんですが、引退して田舎に移られたので、「生きがいを与えてほしい」と友人に頼まれたのが話の発端で。そういう経緯で、お母様のためになるなら…、と試してみたらびっくり!そこで本格的に販売することになりました。そうしたら発売5日前に、なんとイギリスのワールドオリジナルマーマレードアワード2019でブロンズ賞を獲ったんです!本当に美味しいと思ったものが世界に認められた!!と(笑)

売上げは関係なし。喜んでもらえるアイテムを作る生産者との架け橋になりたい!

日本ではジャムが第一走者でマーマレードは二番手のイメージですが、イギリスではマーマレードの概念が違うらしいです。本場で認められるには厳しい条件があり、その一つがペクチンの不使用です。うちのマーマレードも、自然な成分で固めており、ひと瓶サラッと軽く食べられてしまいます

紅茶に入れたり、豚肉を煮詰めるときに添えたり、ホットケーキやアイスクリームにのせたり、レモンスカッシュのように炭酸で割ったりして。びっくりするほど美味しかったけど世界に出したらびっくりするような賞をもらって帰ってきて…。希少なものなので、即日30分で完売してしまいました。

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深みのある優しい言葉で語る羽田さん

材料の甘夏は糸島の海風が当たるようなところで無農薬で栽培されており、同じ畑でレモンやイチジク、梅なども作っています。

季節ごとに旬のラインナップになる他のジャムもとても美味しいのですが、数がないのですぐ完売に…。正直なところ、売上げ的にはまったく見込めませんが、喜んでいただければ、生産者さんとの架け橋になれれば、という想いでやっています。

羽田甚商店


終始、優しく朗らかな口調なものの、「羽田甚商店」に対する熱い想いが、言葉の端々から伝わってきた羽田美智子さん。

後編では羽田さんが店主として歩むセカンドキャリアについてPrecious.jpに語ってくださいます。どうぞお楽しみに!

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羽田美智子さん
女優
(はだ みちこ)1968年9月24日生まれ、茨城県出身。1988年、日本旅行のキャンペーンガールに選ばれたことをきっかけにデビュー。1994年公開の映画『RAMPO』でヒロイン役に抜擢され、「日本アカデミー賞」で新人俳優賞を受賞。以降、多数の映画やテレビドラマに出演。主な出演作として『特捜9』シリーズ、『おかしな刑事』シリーズ、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』がある。自身が「本当にイイ!」と思ったものだけを紹介・販売するネット上のセレクトショップ『羽田甚商店』を2019年4月にオープン。
羽田美智子 オフィシャルブログ

問い合わせ先

宝島社

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PHOTO :
小倉雄一郎
WRITING :
神田朝子