クリストフル創業190年!「ジャポニズム」と「クラフトマンシップ」へのオマージュコレクションがお目見え
1830年創業、シルバーウェアの代名詞として世界に名高いフランスのカトラリーブランド「クリストフル(Christofle)」が創業190年を迎え、輪島の漆職人である箱瀬淳一さんとのコラボレート作品を誕生させました。
遡ること19世紀。クリストフルは当時西欧諸国で花開いた「ジャポニズム」のリーダーとして多くの作品を制作。それらはブランドの大きな飛躍に貢献しました。
その、ブランド史に大きな意味を持つ「ジャポニズム」とブランドの核となる「クラフトマンシップ」へのオマージュコレクションがこのたび発表された「MOOD Christofle × Junichi Hakose(ムード クリストフル × ジュンイチ ハコセ)」です。
ストーリーを物語る作品で、日本文化を世界へ
ここ数年、さまざまなアーティストとムードのコラボレートコレクションを発表してきたクリストフルですが、創業190年の記念すべき今年、クラフトマンシップへのオマージュを捧げるべく漆工芸の第一人者、箱瀬さんとの共同プロジェクトが実現することに。
2020年11月25日(水)に青山店2階にて開催されたプレスプレビューでは、2020年12月発売の6点が一挙に揃い、贅沢にも同時に鑑賞する機会を得るとともに、箱瀬さんからも作品に対する思いを伺うことができました。
「実はああしてくれこうしてくれ、と指示を受けるのは苦手なんです(笑) だからこそ、自分自身が生み出すものに責任を持たなくてはいけない。世界に日本の文化をどう伝えたいかを考え、背景やストーリーを物語ってくれる作品を作りました」
クリストフルは通常はコラボレーションの際、いままで厳しい基準のチェックが入っていたそうですが、今回は作品ができ上がるにしたがって、そんな声も静かになり箱瀬さんに「お任せ」になったのだとか。
「とにかく気持ちを入れて、時間もギリギリまでやってます。値段とは違う次元にあるプライスレスな価値を生むために、時間は制作の絶対条件。漆は乾かす期間が大事なのでいつも同時進行です。12工程くらい『塗って研いで』の連続があり、やっと蒔絵が始まります。制作には10か月から1年かかります」
「下絵はありますが、完成されていくなかで変わっていきます。やってみて初めて、空間のとり方などわかることがあるんです。だから時間が必要。オーダーを受けてから作品をお渡しできるまでお待ちいただくことになりますが、その価値をわかって納得していただきたい」
と箱瀬さんが語る作品は、プレスプレビューの翌日にはニューヨークやロンドン、香港など世界各国へ。日本の伝統がクリストフルとのコラボレーションという新しい形で世界へ、そして次世代に羽ばたいていきます!
神々しき美しさの蒔絵カトラリーセット6選
世界限定1点の1作品と、世界限定8点の5作品の計6作品は2020年12月発売予定。残り1作品(「蝶」)は2021年春に発売予定で、すべてが受注生産です。
アートピースとして「待つことを楽しんでほしい」という手描きの一点ものは、近くで見れば見るほど、息をのむような神々しいまでの美しさ! プレスプレビュー会場に揃った6作品を、箱瀬さんのコメントともにぜひご覧ください。
■1:見る人に夢物語を空想させる、日本ならではの空間美
「一つ一つの菊に20〜30の線が引いてあります。金属製で重量のあるケースを片手で持ちながら無数の線を引くので、腕が大変なことに(笑) でき上がりを想像しながら描いていくのですが、上部と下部は花びらが消えていっており、金でぼかしてあります。上まで描かないのが日本の美なんですよね。日本は引き算、空間の美。それを、最終的には本社が納得してくれてこのデザインになりました」
■2:豪華絢爛!日本を代表する桜の名所を描いた作品
「昔から有名な吉野の桜や野菊という古いテーマを新しく見せたかったので、これらのテーマは今回のコラボレーションに外せませんでした。桜の色は顔料でつけるのですが、色が金粉の間に見える、光りながら色が見えるというのが特殊な点です」
奈良吉野山の山一面に咲く吉野桜の眩い美しさが感じられる迫力ある作品。1点目はニューヨークへ渡り、オークションにかかる可能性もあるのだそうです。
■3:伝統と未来を感じる宝物たちをちりばめて
「2つのラインの間に宝物が描かれていますが、これらのラインがなければ締まらないんです。ラインで隠すことによって、世界が広がっていく。これも日本流です。宝物の一つとして箕笠が入っていますが、本来、斧を隠すものを宝に見立てるのもユニークですよね。日本の伝統的文様を古く見せずに新しく描きたい、とこだわりました」
着物に描かれるような縁起物のほか、鶴や松竹梅などは「新しく宝に入って欲しい」という箱瀬さんの願いを込めて描いたのだと語ってくれました。
■4:生きているような躍動感!いかなる方向からも守ってくれる2体の龍
「龍といえば中国が発祥ですが、あくまで日本的な龍を描きたかったんです。表の龍は上へ昇り、裏は下へ降りてゆき、方向が違います。足の指は5本だと皇帝を表し、3本だと庶民だそうですが、この龍は4本にしました」
龍の躍動感を表現しているブルーのヤコウガイは、貝の内側のキラキラと光る部分を剥がし、青い部分だけ選別し砕いてまく、という気の遠くなるような工程を経て、作品に美しい表情を生み出しています。
■5:星座輝く夜空を駆け抜ける、日本古来の天馬
「正倉院には、ヨーロッパから渡ってきた天馬がいます。この天馬に翼がついていないという人がいますが、今度は僕が日本古来の馬をヨーロッパに返すつもりで描いたから翼がないんですよ」
場所、光を変えると全く違う煌きを放つヤコウガイと金で表現された星と星とを、細い線で結び、作品に輝きと緊張感を生み出しています。
■6:星屑の夜空に美しく舞う、愛の象徴
「鳳凰は神様で桐の木に宿るので、カトラリーには桐のマークを描きました。夜空に星座の線が輝き、目や尻尾に紫がかったヤコウガイを使っています」
羽には、金と銀、そして希少金属のパラジウムを使用。その黒っぽいトーンが漆としっくりと合い、鳳凰を神々しく上品に仕上げています。黒がベースカラーの作品は「コーヒータイムは軽やかな気持ちなって欲しい」という願いを込めて、コーヒースプーンがライトな色味になっているのも特徴です。
以上、クリストフルの創業190年を祝う、限定受注制作のコラボレーション作品をご覧いただきました。
パワーをくれる龍、おめでたい宝尽くし…、自分がどういうものを身近に置いておきたいか、思わず想像してしまうような夢あるアートピース。箱瀬さんが語る「伝統は創り出すもの」という言葉を、作品そのものが日本古来の美しさと新しさが融合された魅力で物語っています。
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 神田朝子