江戸時代に幕府の米を貯蔵する蔵があったことに由来するいう「蔵前」は、問屋街としての長い歴史を持ちます。最近は、古い建物をリノベーションしたカフェやお店も多く、新旧入り混じった魅力のある街として注目を集めています。

そんな蔵前にお店を構える「NAKAMURA TEA LIFE STORE」。静岡県で約100年続く老舗茶園「中村家」の茶葉を扱う日本茶専門店です。

お茶がおいしい季節を満喫するために

気温が下がり、これからますます温かいお茶がおいしく感じる季節。店主の西形さんから、日本茶のある暮らしや、よりおいしく急須でお茶を淹れるコツを教えていただきました!

今の暮らしに馴染む、お茶のスタイルを提案したい

暖簾をくぐると、茶香炉で焚かれた茶葉の香りが迎えてくれます。近所の方はもちろん、「蔵前」巡りをする若い女性や外国人観光客の方も訪れる人気店です。はじめはオンラインのみでの販売でしたが、茶葉の味わいやこれまでの日本茶にはないスタイリッシュなパッケージによって徐々に人気が高まり、2015年1月に店舗をオープンしました。

静岡県藤枝市で育った店主の西形さんは、まさに“水を飲むような感覚で”日本茶に親しんでいたそう。それが18歳で上京した際「周りの友人を見て、日本茶を飲む習慣があまりないことを知ったんです」。急須でお茶を淹れるという行為自体が、若い人にあまり馴染みのあるものではないというのは、驚きであり発見だったといいます。「地元に帰れば、茶葉農家はおいしいお茶さえつくれば売れる! という感覚。でも、東京では果たしてそうなのか? という疑問がありました」。

そして、実際にこの十数年の間で茶葉の生産量が減少してゆくのを目の当たりにしていた西形さんは、幼馴染でもある茶園「中村家」4代目の弟・中村倫男さんと一緒に、若い人たちにもお茶をもっと楽しんでもらえたらと「NAKAMURA TEA LIFE STORE」をスタートしました。

店主の西形圭吾さん

置いても「絵になる」パッケージ

印象的なのは、そのスタイリッシュなパッケージ。茶筒は浅草の老舗金具屋さんによるオリジナルです。経年変化まで楽しめるようなシンプルな茶筒に貼られるラベルは、西形さん本人がデザインをしています。「日本茶のパッケージやラベルというと、背景には茶畑があって筆で文字が書かれているような、画一的なものが多いと思うんです。でも、ワインやコーヒー豆と同じように、現代のダイニングやキッチンのシーンでも浮かないオシャレなパッケージにしたかったんですよね」。

茶畑の名前と収穫場所がデザイン。「GARDEN NO.02」100g ¥2,000(税抜)

製品ラベルには「GAEDEN NO.01」や「GARDEN NO.02」といった茶畑の名前が記されています。その下に並ぶ数字は、収穫した場所を表す畑の緯度と経度を示しています。そして、すべての茶葉に収穫日、収穫場所、栽培担当者、栽培方法が記載された品質保証書が付いています。「これは、飲む人へ安心安全を届けると同時に、茶葉への自信の証でもあります」と西形さん。

煎茶のほか、玄米茶やほうじ茶など全9種類を扱う。同じ茶園・単一品種の茶葉で飲み比べが楽しめる。

お客さんの7割が女性というお店で一番人気は、煎茶の「GARDEN NO.02」。「旨味と渋みのバランスが良いんです。“どう淹れてもおいしい”ですが、淹れ方で味わいの幅を感じることができると思います」。ギフトでは、畑違いの茶葉の飲み比べもできるとあって、2、3種類の詰め合わせが人気です。

お茶時間を彩る、急須や茶器も販売

一煎目は“お茶のエスプレッソ”

同じ茶葉でも、お湯の温度や淹れ方次第で幾通りもの味わいを楽しめるという日本茶。「一煎目は、“お茶のエスプレッソ”をぜひ! とお客様にもお伝えしています。エスプレッソという意味合いは、苦味が強いというわけではなく、お茶の持つ旨味成分だけを抽出している、というイメージです」。茶葉に常温の水を少量入れて3分待ち、濃厚な成分を抽出します。実際にいただくと、ぎゅっと凝縮された旨味をダイレクトに感じて甘味が口の中いっぱいに広がります。

お湯を使って淹れる二煎目、三煎目は、少しまろやかな味わい。「爽やかな渋みを感じると思います。お茶の渋みが苦手という方もいますが、高温過ぎるお湯を使わなければ余計な渋みは出ないんですよ」と西形さん。それでは、おいしい煎茶の淹れ方を教えていただきましょう。

おいしいお茶を淹れる4つのSTEP

■STEP1:茶匙に茶葉を取る

STEP1

100ccに茶匙一杯(約3グラム)が目安。

■STEP2:お湯を急須に注ぐ

STEP2

80度に沸かしたお湯を一度湯のみなどに移し、少し温度を下げる。「75度くらいがベストです。熱湯だと旨味が流れて、渋みばかりが残ってしまうんです」。

■STEP3:蓋をして約1分間蒸らす

STEP3

「じっくりと茶葉を開かせるため、揺らさずに待ちます」

■STEP4:静かに注ぐ

STEP4

「よく急須をぐるぐると回す方がいますが、それはNGです。湯のみに注ぐ際に、何回かに分けて注ぎ上下に動かします。急須の中で、茶葉を静かに動かすことを意識。そうすることで味が全体に行き渡ります」

急須で淹れれば、「水出し」で翌日までおいしく味わえる

お湯で淹れたあとは、「水出し」もおすすめだそう。3煎目を淹れた後、急須いっぱいに水を入れて冷蔵庫に。一晩寝かせれば、朝にもぴったりなスッキリとした味を楽しむこともできます。

3煎目の後は「水出し」で、また違った味わいに

また、急須を選ぶときには茶漉しが一体型のものを選ぶと、茶葉が自然に開きやすくより味わいを堪能できるそう。「旨味や渋み、苦味といった複雑な味を楽しめるのも日本茶ならでは魅力です。試飲もいつでも大歓迎ですので、ぜひ気軽にお店に足を運んでみてくださいね」。

西形さん愛用の茶漉し一体型の急須

忙しい日々の中で、きちんと日本茶を淹れてゆっくり飲む時間は少ないかもしれません。けれど、丁寧に淹れられたお茶を飲んだとき「おいしい」としみじみ感じられるのは、幸せなひととき。好みの茶葉や淹れ方を見つける、その時間もまたとっておきの贅沢です。この秋は、街散歩をしながらお茶の魅力を再発見してみるのはいかがでしょうか?

NAKAMUA TEA LIFE STOREの外観
NAKAMUA TEA LIFE STOREの内観

「NAKAMUA TEA LIFE STORE」では、店内でのワークショップを定期的に開催。
下記にてスケジュールの確認・申込みが可能です。
http://www.themosh.jp/events/8

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PHOTO :
品田健人
EDIT&WRITING :
八木由希乃