「色彩は身につけた人の魅力を高めてくれる素晴らしいものです。ただ同時に、上品に用いられる必要があることを忘れてはなりません」。著書『ファッション小辞典』(1954年刊)でこう語ったムッシュ ディオール。その言葉は、メゾンが探究を続けるカラーリングへの並々ならぬこだわりを象徴している。

類い希な美的感覚を養った幼き日々に見た特別な色

ディオールの『ディオールグレー』

ディオールの『ディオールグレー』名品DATA ニット¥71,000(クリスチャンディオール) ● 素材:ウール100% ●サイズ展開: 2 XS~ 2 XL ●色展開:1色のみ シャツ¥66,000(クリスチャンディオール〈ディオール〉)税抜、参考価格

こと『ディオールグレー』は、その名のとおりメゾンを代表する色のひとつであり、本人がとても大切にした色だ。同書のなかで「最も重宝するエレガントなニュートラルカラー。フランネル、ツイード、ウールでも美しく、そして顔色に合う」と残している。フランス北西部・ノルマンディー地方に位置するグランヴィル。そこで過ごした幼少期は、後のクリエーションに多大な影響を与えたことでも知られるが、このグレーもまた生家から見た空や、波が打ちつける海沿いの断崖絶壁の色をイメージしているとされ、グランヴィルの風景を想像させる。天才を育んだ北仏での日々に思いを馳せ、高貴なグレーを味わうのも一興である。

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