昨日公開された【キャリア編】では、現在ほぼフルリモートで業務をこなしている、と語っていた日本HP Eコマース事業本部 リテールビジネス本部 本部長の宮野安理さん。コロナ以前という早い段階から会社の制度を活用して、リモートワークの生産性や効率化に向き合ってきました。

そんなリモートワークの達人である宮野さんが実践している、自宅で働くティップスについてうかがいました。

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宮野 安理さん
日本HP Eコマース事業本部|リテールビジネス本部|本部長 HP公認団体Women Impact Network Japan代表
(みやの あんり)ホテルマンとしてキャピトル東急ホテルやリッツカールトン東京での勤務を経て、2010年に日本HPへ派遣社員として入社。2014年に正社員採用後、パーソナルソリューションズ&プリンティング事業部内のリテール営業部にてトレードマーケティングを担当。2019年6月より現職。Eコマース事業本部にてコンシューマー市場の開拓、 担当する営業及び企画部門をマネジメントしている。また、ダイバーシティ&インクルージョンの取組みとして、HP公認の女性活躍促進団体「Women Impact Network Japan」を立ち上げ、女性の働き方改革に力を入れている。

日本HP 本部長 宮野安理さんへ10の質問

──Q1:自宅のワークスペースについて教えてください。

「実は非常にこだわりがあります(笑) モニター2枚を、壁からアームのようなツールで装着して、高さや奥行きをその日の体調や気分、シーンに合わせて調整できるようにしています。仕事の生産性向上をサポートする、こういったIT機器を活用した部屋づくりを心がけています。

オフィスでも仕事のしやすさは配慮されていますが、一人ひとりに合っているという状態にはまだなっていません。そこで自宅は自分にぴったりマッチした環境を意識しています。

モニター2枚は、仕事の内容で使い分けています。一つはコミュニケーション専用、もう一つはそれ以外、です。メールやチャットなのどコミュニケーションは、ときには仕事の邪魔になることも。何かの調査で知ったのですが、一度失った集中力は戻るまでかなりの時間がかかるのだそうです。それは自分の時間を非常に無駄にしていると感じたんですよね。そこで、IT機器を活用して、集中力キープなど効率化のサポートをしています。

以前から自宅だと思ったように集中できないと感じており、工夫はしていましたが、コロナ禍になってより改造をすすめました。自宅の方が集中できるので、出社日はミーティングを入れたりコミュニケーションの日と決めています。働く場所を仕事内容によって使い分けている、というイメージですね。

実は夫もコロナ以降から自宅の別の部屋でリモートワークしているのですが、私よりは慣れていないこともあり、ひと通りセッティングされた私の部屋をとても気に入り、椅子など徐々に奪われています(笑)」

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2つのモニターがセットされた自宅のテレワーク部屋。
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高さや奥行きを調整できるアームでモニターを設置。
──Q2:モーニングルーティンは?

「毎朝7時から8時までゴルフに通っています。過去に3回ほど挫折したのですが、営業職なのでお誘いを受けることが多く、コロナになってから自分に向き合う時間も増えたのでレッスンを受けています。

私はとてもせっかちなので、落ち着きを取り戻すメンタルトレーニングのような役割も。一日のスタートをゴルフレッスンから始めると頭がスッキリして、その後の仕事にも集中できるので、とてもいいルーティンを見つけました。

そして、ゴルフの前には午前6時から1時間仕事をしています。私にとっては朝が一番集中できる時間帯なので、どの仕事を持ってくるか、にも配慮しています」

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宮野さんのニューノーマルは毎朝の集中力を高めるゴルフレッスン。
──Q3:ナイトリールーティンは?

「TED TALK(※)を必ず一本聞いています。嫌なことがあっても、これを聞くと多種多様な考え方があると思えるので、1日の最後の習慣にしています。

分野としてはリーダシップやダイバーシティを選ぶことが多いですが、幅広く聞いています。日本の情報だけだと遅れをとってしまうので、それらをもとにグローバルのトレンドを得ているんです。

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それとは別に家族の掟がありまして(笑)、夫とその日の出来事や考えたことをシェアするんです。夫も私も人付き合いが多く仕事も忙しいので、なかなか共に過ごすのが難しく…。そのなかですれ違いを防ぐために自然と始めました。

その日にモヤモヤしたことを理系でエンジニアである夫に話すと、冷静に分析しアドバイスをしてくれます。そうすると、嫌な感情を残さず眠れるんですよね。夫のサポートのおかげで仕事を頑張れていると、いつも感謝しています」

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「コロナ前は自分より人に気を向けていましたが、コロナ後は自分ともっと向き合えるようになりました」

効率化には計画性と環境づくりがマスト

──Q4:ワークライフバランスのとり方は?

「あるとき海外拠点のマネージャーに、どうやって仕事とプライベートを両立するのか質問したところ『あなたは最重要顧客とのミーティングと、結婚記念日のどちらを優先する?』と聞かれました。私は最重要顧客とのミーティング、と答えたのですが、『それではワークライフバランスはとれないよ』と…。

彼女が言いたかったのは『プライベートを大事にしなさい』ではなく、『そのとき優先すべきはどっちかちゃんと考えなさい』ということ。そこで1日の時間帯ごとに、仕事もプライベートも一番優先すべきことを決めて1週間の計画を立てるようになりました。

私にとって、予定を立てることに時間を割くことはとても重要なんです。計画しておけば、途中で迷わない。迷うのって無駄な時間だと思うんですよね。そうやって気分や感情に左右されないようにしています。

仕事って8割は嫌なことで残りの2割の楽しみのために頑張っていると思うんです。だから当然やる気のでないときも。そんなときのために、座れば自動的にやらざるを得ないような、仕事がやりやすい環境づくりが重要になってくるんですよね」

──Q5:リモートワークのプラス点は? 

コミュニケーションスキルが身につくことです。なぜかというと、対面だとキャラクターの強い人に引っ張られがちですが、リモートだとバランスがとりやすく、いろんな人の意見にフォーカスしやすい。対面では控えめな人も発言しやすく、また『話せてないな』と思う人にはチャットなどのツールを活用することで意見を促すことができます。

ディスカッションの場で8割は同じ人が話している、というパターンがよくあります。でも多種多様な意見を聞けないなら、集まる意味がない。その統制がとりやすいのはリモートの方なんです。

コミュニケーションはスキルだと思っています。私はもともと人見知りで、どうしたら改善できるかよく考えました。スキルは、よく考えた人の方が上がっていくものなので、苦手だと思っている人のほうが高いスキルを得られると思っています。スキルではなく、天性の能力を持っている人の方が、こういったツールを使ったコミュニケーションは苦手かもしれません」

──Q6:マイナス点は?

「新しい人と出会うのが難しいことです。新規の開拓やコミュニティを築きあげたり広げることのハードルが高い。試行錯誤している途中です」

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ときにはHP公認団体 WIN(Women Impact Network Japan)の活動としてセミナーに登壇することも。

体力=精神力!メンタリティも磨くトレーニング

──Q7:withコロナで取り入れた新しい生活様式は?

「ゴルフとパーソナルトレーニングです。トレーニングは基礎的な筋トレをリモートで週に2回ほど30分やっています。体力と精神力はイコールだと思うので、体力をつけたい!というのがあって…。

もともとアメリカでプロ契約していたバスケ選手だったトレーナーなのですが、メンタリティ的にも鍛えてくれているような気がします。アプローチが絶妙で、すごく疲れているときも無理なく達成感を感じさせてくれるんです」

──Q8:リモート時のランチタイムについてお聞かせください。

「決まった時間はないですが、必ず1時間の休憩を入れるようにしています」

──Q9:在宅ファッションのこだわりは?

「友人のゴルフウエアブランドなのですが、コンセプトが『普段も着られる』というもので、ゴルフ以外も愛用しています。お客様と会うときも、それにジャケットを着るだけで、スーツを着ることはあまりないです。

自宅にいるのにスーツを着ていたら変だな、と(笑)

そして、商談を暗くしないよう、色は黒を避けています。自分が映える、というよりも相手を考えて服を選んでいますね。ファッションではないですが、Zoomの背景もお客様によって変えています。桜などの季節感やお客様の会社のカラーを取り入れることも」

──Q10:リモートでのコミュニケーションで大事にしていることは?

「ゴールの擦り合わせです。例えば『今日中に提出』の今日中の定義も人それぞれですよね。それなので、ズレが生じないように、ゴールを明確に確認するようにしています。それでもズレてしまうんですけどね(笑)

そのときはズレを責めるのではなく、理由を考察することのほうを大事にしています」


以上、日本HP Eコマース事業本部 リテールビジネス本部 本部長の宮野安理さんにうかがった、リモートワークについての10の質問でした。

リモート飲み会も開催し、コロナ禍においても外部との繋がりを大事にし、常に情報をアップデートしているという宮野さん。ウェブ会議やリモートワークになんとなく苦手意識を持っている人も、ぜひ彼女のティップスを参考に「Stay Positive!」の精神で、できるものから取り入れてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
立教大学法学部卒。ドイツメーカーにパーチェイサーとして勤務後、2009年に渡米し音楽修行。ジュリアード音楽院、マネス音楽院にて研鑽を積む傍ら、2014年ライターデビュー。2018年春に帰国し、英語で学ぶ音楽教室「epiphany piano studio(エピファニーピアノスタジオ)」主宰。ライターとしては、ウェブメディアを中心にファッション、トレンド、フェミニズムや音楽について執筆している。
公式サイト:epiphany piano studio
EDIT&WRITING :
神田朝子