雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、認定NPO法人「PIECES」代表 小澤いぶきさんの活動をご紹介します。

小澤いぶきさん
認定NPO法人「PIECES」代表
(おざわ いぶき)児童精神科医、東京大学医学系研究科客員研究員。トラウマ臨床、虐待臨床などを専門として臨床に携わる。’16年、貧困や虐待の環境にある子供を支える人材を育成するためNPO法人「ピーシーズ」を立ち上げる。

子供が安心して頼れる大人を増やし、互いにつながり合う地域をつくりたい

児童精神科医として、心にケガをした子供たちと接する日々を送るなかで小澤さんは、ある思いを抱くようになった。

「医師として、病院で子供の心の傷を治療しても、彼らが帰る場所が同じ環境ならば、きっとまた傷つくことがある。シビアな環境におかれた子が頼ることができる安心できる居場所や、貧困に苦しむ子供をサポートできる資源や政策など、子供を取り巻く地域の『生態系』をつくる必要があると思ったんです」

そうして’16年、NPO法人「ピーシーズ」を立ち上げた。子供が安心して頼れる市民を育成するプログラムを企画し、葛飾区や水戸市、奈良市など全国の地域の支援団体に提供してきた。

市民の誰でも参加できる3か月のプログラムは、小澤さんが医師の立場から子供の発達やトラウマケアを伝えたり、地域で活動する人やソーシャルワーカーの話を聞くなどなどインプットの工程から始まり、地元のNPO活動にボランティアとして参加するなど、実践を行う。

プログラムに参加したコンビニのオーナーは、「店を、子供たちが気軽に立ち寄れるハブのような場所に」と、イートインスペースをいつでも子供が勉強できる場として開放。その姿を見て、大人が話しかけるなど、今もいい循環を生んでいる。

「活動を始めて多くの人が参加してくれていますが、自分にできることはあまりないと思っている人も少なくありません。この活動のハードルを下げることも私の役割だと思っています。

それでも一団体では限界があります。地域の政策に関わる行政の人や地域の大人、そして子供と共に、お互いを支え合う(※)エコシステムになるよう今後も活動します」

【SDGsの現場から】

●地域活動を推進する企業から講演会の依頼も多数

インタビュー_1
子供が孤立しないために大人はどう寄り添うか。経営者から講演会を依頼されることも。

●参加者同士で対話を深めるワークショップ

インタビュー_2
ピーシーズが行うプログラム「Citizenship for Children」では、多様なテーマの対話を行う。

※エコシステム…ある地域や空間にいる生き物が、互いに依存しつつ、相互作用しながら、生態系を維持する関係のこと。

PHOTO :
篠原宏明
EDIT :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材・文 :
大庭典子