【ルール21】服よりブラシにお金をかけたっていい

A.帽子専用ブラシ
しなやかで弾力性に富んだ馬の尾毛を使用。ハンドルは木目が美しい黒檀。帽子のカーブに合わせた形状に毛を植えているため、ブラッシングしやすい。帽子専用のブラシを持つことも紳士のたしなみ。¥8,000(ボルサリーノ ジャパン)
B.カシミア専用ブラシ
ビキューナやカシミア用につくられたブラシ。やわらかな羊毛を用い、持ち手はなんと屋久杉。横浜に工房を構える職人、石川和男が丹精込めて手づくりした逸品。最上の服には最上のブラシが必要だ。¥150,000(伊勢丹新宿店〈石川ブラシ〉)
C.スーツ専用ブラシ
スーツのデイリーケアにもってこいなのが、黒馬毛を使用したハンディタイプ。静電気除去繊維を混毛しているため、静電気を帯びて付着したホコリもしっかりと落とすことができる。ブラッシングを習慣に。¥5,000(アルソーレ〈ケント〉)
D.靴ブラシ
靴用にも上質なブラシがあれば、靴磨きのテンションも上がる。汚れ落としやクリーム塗布用にはやや硬い豚毛のブラシ、仕上げの磨き用にはやわらかな山羊毛のブラシで使い分ける。上/¥10,000・下/¥6,600(ジョン ロブ ジャパン)
A.帽子専用ブラシ
しなやかで弾力性に富んだ馬の尾毛を使用。ハンドルは木目が美しい黒檀。帽子のカーブに合わせた形状に毛を植えているため、ブラッシングしやすい。帽子専用のブラシを持つことも紳士のたしなみ。¥8,000(ボルサリーノ ジャパン)
B.カシミア専用ブラシ
ビキューナやカシミア用につくられたブラシ。やわらかな羊毛を用い、持ち手はなんと屋久杉。横浜に工房を構える職人、石川和男が丹精込めて手づくりした逸品。最上の服には最上のブラシが必要だ。¥150,000(伊勢丹新宿店〈石川ブラシ〉)
C.スーツ専用ブラシ
スーツのデイリーケアにもってこいなのが、黒馬毛を使用したハンディタイプ。静電気除去繊維を混毛しているため、静電気を帯びて付着したホコリもしっかりと落とすことができる。ブラッシングを習慣に。¥5,000(アルソーレ〈ケント〉)
D.靴ブラシ
靴用にも上質なブラシがあれば、靴磨きのテンションも上がる。汚れ落としやクリーム塗布用にはやや硬い豚毛のブラシ、仕上げの磨き用にはやわらかな山羊毛のブラシで使い分ける。上/¥10,000・下/¥6,600(ジョン ロブ ジャパン)

 服にブラシをかける。スチームアイロンでシワをとる。シャツにアイロンをあて、パンツにクリースを入れる。靴磨きもある。どれも手間がかかり、本音をいえば、だれかにかわってもらいたい作業である。しかしそのメンドクサイことを自分でやるから愛情がわく。

 日頃のお手入れをすることで、モノが単なるモノではなく、自分の一部になっていくのがそのプロセスだから。そのために必要な手入れ道具なのだから上等なものを選んだってバチは当たらないのである。モノをリスペクトできないような男は、結局人間も大切にできない。一事が万事なのである。 


【ルール22】求む、美意識のある部屋着

爽やかな白地にブルー系のストライプを配したパジャマ。質のいいコットンの生地で、滑らかな肌触りを堪能できる。ボタンの素材は 白蝶貝。ルームウエアにもとことんこだわり尽くす、それが紳士たるゆえんだ。¥50,500(ラペルラジャパン)
爽やかな白地にブルー系のストライプを配したパジャマ。質のいいコットンの生地で、滑らかな肌触りを堪能できる。ボタンの素材は 白蝶貝。ルームウエアにもとことんこだわり尽くす、それが紳士たるゆえんだ。¥50,500(ラペルラジャパン)

 できることなら、パジャマの前にもうワンクッションおいてほしい。春夏なら夕食のテーブルにふさわしいコットンのニットウエアなどどうだろう。そして自室に入ったときはじめてパジャマを着、ドレッシングガウンをはおる。これも、贅沢ではあるが、毎晩フレッシュなパジャマというわけにはいかないだろうか。

 夕食という家での生活の最も大切な時間のために毎晩ホワイトタイを着用する貴族も戦前の英国には多かった。いやむしろ屋敷内での生活のほうに彼らは力を入れていたのである。


【ルール23】着替えを苦とせず

スーツ¥300,000 〈ターンブル&アッサー〉・靴¥85,000 〈クロケット&ジョーンズ〉/以上ヴァルカナイズ・ロンドン シャツ¥56,000・タイ¥29,000・チーフ¥20,000(キートン) 眼鏡¥37,000(ブリンク〈カトラー アンド グロス〉) 時計¥1,025,000(ジャガー・ルクルト)
スーツ¥300,000 〈ターンブル&アッサー〉・靴¥85,000 〈クロケット&ジョーンズ〉/以上ヴァルカナイズ・ロンドン シャツ¥56,000・タイ¥29,000・チーフ¥20,000(キートン) 眼鏡¥37,000(ブリンク〈カトラー アンド グロス〉) 時計¥1,025,000(ジャガー・ルクルト)

 ロバート・アルトマン監督の映画『ゴスフォード・パーク』は、貴族の生活の裏側を、使用人の日常を描くことで暴くという趣向が大変にオモシロイ作品だ。これを観るとわかるのだが、貴族の生活というのはまさに着替えの連続なのである。

 朝起きたら朝食のために着替える。続いて散歩や狐狩りのために着替え、昼食用に着替える。夜は客を招いての晩餐会だから当然ホワイトタイだ。館には男子貴族のためにヴァレー(ヴァレー・パーキングのヴァレーはここからきている)がいて、その着替えを準備し、着付けを手伝う。女性にはメイドがつく。

  アイビールックの元祖「VAN」の創業者石津謙介氏はTPO(タイム、プレイス、オケイジョン)という言葉を創作し、広めたが、まさに貴族の生活というのはTPOに応じた着替えに象徴される「礼儀合戦」なのである。

  職住が離れていることが多い日本の男性にとって、一日何度もの着替えは実際上難しい。しかし、プレスの効いたフレッシュな服装こそが紳士を紳士たらしめるルールの最上位であることだけは覚えておいていただきたい。


【ルール24】一生着なくてもタキシードの準備あり

普遍的でありながらモダン。パーフェクトなタキシード

タキシード¥260,000・シャツ¥55,000・ボウタイ¥16,000・カマーバンド¥30,000・カフリンクス/参考商品・靴/参考商品(ラルフ ローレン〈ラルフ ローレン パープル レーベル〉) その他/私物
タキシード¥260,000・シャツ¥55,000・ボウタイ¥16,000・カマーバンド¥30,000・カフリンクス/参考商品・靴/参考商品(ラルフ ローレン〈ラルフ ローレン パープル レーベル〉) その他/私物

 洋服の最もフォーマルなスタイルはホワイトタイ、燕尾服(テールコート)である。しかしこの最高礼のイブニングウエアは特殊で、現在は王室関係、外交関係の集まりで着用される以外にはあまり見かけない。代わってディナージャケット、米国流に言えばタキシードが主役になった。

 ところがこのタキシード、日本では冷遇されっぱなしだ。おおざっぱに冠婚葬祭というが、一般人ならせいぜい結婚披露宴に着ていくぐらいしか機会がないから、人は次第に遠ざかり、あげくはダークスーツでお茶をにごすことになる。

 しかしこれは現代日本が生んだ服装生活の悲劇である。なぜなら、タキシードぐらい男性が男性らしく、上品かつ「立派に」見える服はないからである。

 そしてもうひとつ重大事がある。タキシードを着ないということは、イブニングドレスを着た女性をエスコートしない、できないということを意味するのである。

 妻でも、恋人でも、母でも、娘でもいい。最愛の女性の晴れ姿にアテンドするという崇高な役目を担えない男がジェントルマンといえるのであろうか?


【ルール25】さりげなくエングレービング

エングレービング代は¥3,200~。納期は3週間~。各¥26,000(ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク)
エングレービング代は¥3,200~。納期は3週間~。各¥26,000(ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク)

 下着からスーツ、靴やアクセサリーに至るまですべてカスタムメイドという英国人を取材したことがある。どの品にも、ミドルネームを含んだ3文字のイニシャルが縫い込まれていたり、刻印されていたりする。

 どれも趣味は悪くないのだが、やはり何もかもとなると少し気恥ずかしさを覚える。

 イニシャル付きでもかまわないが、アクセサリーなどはセットで使わない方が良いだろう。

 カフリンクスならカフリンクスだけをさりげなく使うほうがスマートだ。それにしても向こうの人の3文字のイニシャルは、ぼくらの2文字よりバランスがよく、そこは羨ましいところだ。国によっても違うが、ミドルネームを持つ人は貴族の家系であることも多い。

 彼らは奢侈を好まない。自分が愛着を持てるものを長く使うという習慣が根付いているからこそ、3文字のイニシャルが輝いて見えるのだ。


【ルール26】デニムとTシャツ、無理やり着なくとも

 客観的に見て、Tシャツやジーンズはなかなかハードルの高いウエアである。どちらもカラダがものを言うからだ。

 Tシャツは『波止場』のマーロン・ブランドのようなたくましい胸と肩が必要だ。

ジーンズにはデヴィッド・ベッカムのような長い脚と引き締まった尻が要る。どちらも日本人男性の体形に属さない特徴なのである。

 鏡の前でよしこれならと納得できるか。または外野から拍手が聞こえるか。どちらでもないのなら、いっそ着ないほうがよろしい。

 それを家庭用語では断捨離、ビジネス用語では選択と集中という。


【ルール27】和装の深みにハマるもよし

ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館の3階に設えられた和装のディレクターである、諸田佳宏さん。理想的な着物の楽しみ方は、「シガーを味わうように、ゆっくりとした時の流れに包み込まれるような、非日常性にある」と話す。桐きり竹鳳凰文の地模様を施した、羽織の家紋にクリスタルをあしらう。象牙を細部にデザインしたサメ革の合切袋を持つなど、粋な装いが身についた達人だ。
ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館の3階に設えられた和装のディレクターである、諸田佳宏さん。理想的な着物の楽しみ方は、「シガーを味わうように、ゆっくりとした時の流れに包み込まれるような、非日常性にある」と話す。桐きり竹鳳凰文の地模様を施した、羽織の家紋にクリスタルをあしらう。象牙を細部にデザインしたサメ革の合切袋を持つなど、粋な装いが身についた達人だ。

 近年のNHK大河ドラマ『真田丸』を観て思ったことがある。日本の男はとにかく着物が似合うということである。

 侍、農家、商人、僧籍者などなど、それは衣装部が力を入れていいものを着せているのだろうが、日本人の黒い髪の毛、肌色、体格になじみがよく、色、形とも「映える」のだ。この和装の文化をあっさり捨て去っていいものであろうか。まさか、それはない。

  幸いこの国には四季折々の行事がある。受け継がれてきた伝統行事を着物で楽しむという趣向も、継承の精神を尊ぶジェントルマンらしいではないか。


【ルール28】機械類に目がないもので

日本が世界に誇る写真家木村伊兵衛は生涯、ライカを愛用したことで知られている。この写真は数少ない撮影中の木村で、スナップの名手ブレッソンによる一枚。このとき、木村もまたブレッソンを活写している。カメラボディ・レンズ(ライカカメラジャパン)ライカの精神を体現する『M』の最新モデル『ライカM(Typ262)』は、あえて動画記録などの機能を捨て去ることでカメラとしての純度を高めた究極のマシン。カメラボディ¥790,000・レンズ¥260,000(ライカカメラ ジャパン)
日本が世界に誇る写真家木村伊兵衛は生涯、ライカを愛用したことで知られている。この写真は数少ない撮影中の木村で、スナップの名手ブレッソンによる一枚。このとき、木村もまたブレッソンを活写している。カメラボディ・レンズ(ライカカメラジャパン)ライカの精神を体現する『M』の最新モデル『ライカM(Typ262)』は、あえて動画記録などの機能を捨て去ることでカメラとしての純度を高めた究極のマシン。カメラボディ¥790,000・レンズ¥260,000(ライカカメラ ジャパン)

 スマホのカメラはどんどん性能がよくなっている。日常のメモや記録、スナップ写真には今や欠かせない機能だ。しかし、趣味としての写真となると、やはり専業メーカーののデジタル一眼レフやコンパクトの敵ではない。

 決定的なのはフィルムカメラのフィルム、絵画におけるキャンバスに当たる撮像素子のサイズで、そこが、F1車と軽自動車ぐらいの差があるのである。

 撮影者の腕とヴィジョンがそこまでのレベルでないのなら、それもF1車と同じく宝のナントカではあるが……。まあ、他人様にお見せしないのなら不問としようか。


【ルール29】伝えゆくアクセサリー

時計・リング(カルティエ カスタマー サービスセンター) スーツ〈ベルヴェスト〉・タイ・チーフ〈フランコ バッシ〉/以上ビームス ハウス 丸の内 シャツ(バインド ピーアール〈ルイジ ボレッリ〉)
時計・リング(カルティエ カスタマー サービスセンター) スーツ〈ベルヴェスト〉・タイ・チーフ〈フランコ バッシ〉/以上ビームス ハウス 丸の内 シャツ(バインド ピーアール〈ルイジ ボレッリ〉)

 指輪などたかが装飾品のひとつ、などと思ってはならない。古代ローマ帝国は言わずもがな、数多の先史文明の装飾品としても世界から出土する。このように、いくつもの起源を持つ指輪は、文明世界において、常に特別の意味を持っていた。そのイメージをファンタジーの世界で描き切ったのがトールキンだったとも言える。

 そんな特別な装飾品を現代の紳士が身に着けるなら、世代も時代も超えて意味を持ち続ける名品を手にしたい。時々の流行に左右されるファッションアイテムとは違う価値が、そこにあるからだ。

 ピンク、イエロー、ホワイト。3色の18Kゴールドリングが絡み合うカルティエの傑作、トリニティ ドゥ カルティエは、紳士が身につけるべきアクセサリーに必要な美と哲学を兼ね備える、まさしく次世代へとつなぐ逸品だ。ジャン・コクトーが愛用したことでも有名である。


【ルール30】帽子。かぶるとき、脱ぐとき

¥36,000(ヴァルカナイズ・ロンドン〈ジェームス・ロック〉)
¥36,000(ヴァルカナイズ・ロンドン〈ジェームス・ロック〉)

 帽子の一大ブームである。けっこうなことである。このかぶりもののおかげで、ジェントルマンはますます小僧にはまねできない大人の礼儀を実践できるからである。

 ある時期から、この習慣は消え失せたかに見えたのだが、現在の日本では、おしゃれに積極的な男性たちを中心に帽子が好んでかぶられている。かつてのマストアイテムが復活しているるのは歓迎すべきことだ。だが、帽子のマナーも共に復活しなかったように見えるのが、悔やまれる。 

 基本のかまえを申せば、帽子は屋外用のものである。屋内では脱ぐのである(が、女性には適用されない。ご存じ?)。だが、何を持って屋内と定義するか、これには若干の思慮がいる。

 少なくとも、飲食店やバーで着帽のまま飲食するのは明確なマナー違反だ。誰もが帽子をかぶっていた時代は、たいていの店に帽子掛けがあった。現在でも外套をかけるフックがふたつに枝分かれしていて、帽子掛けとして使われている店も存在する。

 とはいえ、実際のところは、そういう店ばかりではないので、置き場所のない帽子が頭の上に乗り続けるのはわからないでもないのだが・・・、残念ながら、脱がずば似非ジェントルマン認定されてしまうのでご注意を。

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名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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イラスト/緒方 環 撮影/熊澤 透(人物)、川田有二(人物)、篠原宏明(取材)、戸田嘉昭・唐澤光也・小池紀行(パイルドライバー/静物)、小林考至(静物) スタイリスト/櫻井賢之、大西陽一(RESPECT)、村上忠正、武内雅英(code)、石川英治(tablerockstudio)、齊藤知宏 ヘア&メーク/MASAYUKI(the VOICE)、YOBOON(coccina) モデル/Yaron、Trayko、Alban 文/林 信朗 構成/矢部克已(UFFIZI MEDIA)、鷲尾顕司、高橋 大(atelier vie)、菅原幸裕、堀 けいこ、櫻井 香、山下英介(本誌) 撮影協力/銀座もとじ、マルキシ