社会人生活が長くなるほど、さまざまな人間関係が築かれていくもの。職場はもちろんのこと、取引先や共同で行うプロジェクトなど、働く現場での人間関係はとても重要です。ちょっとした気遣いや心配りは関係を円滑にする一方で、不適切なひと言や一文で、ネガティブな印象を与えてしまうことも。とくに慶弔には、大人の女性としてスマートに対応したいものです。今回は、細心の注意を払いたいケースによく使われる「お心遣い」というフレーズを取り上げ、ほぼ同義語だけれど使用シーンが異なる「お気遣い」との違いをみてみましょう。

【目次】

「お心遣い」の正しい使い方は?
「お心遣い」の正しい使い方は?

「心遣い」は何を指す? その意味と「気遣い」との違い

■「お心遣い」を使うのはどんなケース? その意味は?

「何かをしてもらったとき」や「贈り物をもらったとき」に便利なフレーズで、祝儀や香典、祝電、弔電、贈答花などの返礼時によく使われます。「心遣い」は、「気を配る」や「配慮」、「心配り」という意味があり、「心配したり思いやったりする気持ち」を表します。贈るのは現金だとしても、届けたいのは気持ちなのです。もっと直接的に、「心遣い」を「心付け」や「祝儀」「香典」など、「現金」の意味を含ませて使用することもできます。

■似ているけれど違う!「気遣い」と「心遣い」の誤用に注意

1:「お心遣いいただきありがとうございます」

2:「お心遣いに感謝申し上げます」

3:「お心遣い痛み入ります」

上記の言い回し1から3は、「お心遣い」を「お気遣い」に言い換えることができます。文章としては問題ないのでどちらでもいいように思われがちですが、実は使用するシーンではNGの場合も。

例えば、訪問先でお茶菓子が出された場合は「お心遣い」でも「お気遣い」でもOKです。ただし過分な配慮に対して遠慮するような場合には、「お気遣いなく」が正解。「気遣い」には「心配」や「気がかり」という意味もあるので、心配されたり気にかけてもらった場合には、「お心遣いありがとうございます」ではなく「お気遣いありがとうございます」と返しましょう。

一方、「心遣い」には「気を遣う」という意味があり、「気遣い」にも「心を遣う」という意味があるので混同しやすいのですが、「心遣い」は相手を慮った気持ちから起こる言動、「気遣い」は相手にどう思われるかといった自意識が含まれた言動。少々乱暴ですが、こう区別しておくとわかりやすいかもしれません。

■誰に対して使うのが正解? 友人や上司にも使える?

「お心遣い」は、「心遣い」に接頭語の「お」をつけた尊敬語。「自分のような者に…」という謙遜も含まれているので、年長者や上司など、目上の人に使うのがふさわしいでしょう。ただし、自分より年齢が低い相手であっても、ビジネスシーンでは「お」をつけて使いたいもの。一方、同僚や後輩、家族や友人など、親しい間柄や気心の知れた相手であれば、「お心遣い」はトゥーマッチ。「お心遣いありがとうございます」という常套句ではなく、「お香典をいただきありがとうございます」のほうが、感謝の気持ちがリアルに伝わります。

改まったシーンで「心遣い」は使ってOK?それともNG?具体例5選

■OK:お心遣いの品をいただきまして、痛み入ります

恐縮しながらも感謝しているという意味の「痛み入る」は、「恐縮です」のワンランク上。「お心遣いの品」が、想定外に高価・豪華であったり、思いがけないものだったりと、恐縮度が高い場合に使います。

■OK:あたたかいお心遣いに感謝いたします

「あたたかい」とひと言加わるだけで、定型文でも気持ちが強く表れます。

■NG:滞在時は何かとお心遣いくださり、本当にありがとうございました

出張や旅行先など、滞在先で受けた配慮や親切に対してなら「お気遣いくださり」が正解。

■OK:その節はお心遣いを賜り、誠にありがとうございました

時間が経ってからの返礼や、再度謝意を伝えたい場合には、「いただく」や「ちょうだいする」より、相手を敬う謙譲語である「賜る」を。

■OK:みなさまのお心遣いに、故人に代わりまして厚く御礼申し上げます

葬儀への参列や香典のお礼などに使える例文です。

「心遣い」を言い換えるなら? 「類似表現」の具体例5選

「心遣い」に込めた気持ちはそのままに、類似語をTPOによって使い分けたいもの。ビジネスメールの結び文に、早速使ってみましょう。

■1:「ご配慮くださりありがとうございました」

■2:「ご高配ありがとうございます」

■3:「ご深慮いただき、誠にありがとうございました」

■4:「お取り計らいいただき、心から感謝しております」

■5:「○○様のお心配り、いつもながら感謝に堪えません」

今日は「心遣い」について見てきました。仕事上でもプライベートでも、さりげなく「心遣い」「気遣い」のできる女性でありたいですね。

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参考資料:『精選版日本国語大辞典』(小学館)/『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)/『大人なら知っておきたいモノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :