ビジネス文書やメールでよく目にする「貴殿」。素直に「きでん」と読んで正解ですが、いったい何を、誰を指す単語かわかりますか? 取引先やお客様など、こちらに利益をもたらしてくれそうな相手を立てて使用することが多いと思いますが、それ、本当に正しい? 過剰な丁寧語や、間違った敬語なら、使わない方がまし! 恥をかかない「貴殿」の使い方をマスターしましょう。
【目次】
- 「読み方」から「類語」まで、「貴殿」の基礎知識
- 「貴殿」はどんな時にどう使う?便利な「例文」5選
- 「貴殿」の類語は?自在に使い分けてボキャブラリー豊かに
- 「女史」や「嬢」はもう古い?女性に対する「貴殿」の「言い換え表現」
「読み方」から「類語」まで、「貴殿」の基礎知識
■「そもそも「貴殿」ってどんな意味?
「貴殿」は二人称の人代名詞で、「あなた」や「きみ」を、より丁寧に表現したワードです。また、相手を敬ってその住宅を指す場合も。ビジネス文書の定番「貴殿におかれましては~」の場合は、個人を指しています。
■対象となる相手は?
国語辞典『大辞泉』には、【男性が、目上または同等の男性に対して用いる】とあります。補説として【目上の相手への敬称として用いたが、のちに、同輩に対する親愛の気持ちを表す語としても用いるようになった。現代では多く手紙や文書で用いる】とも。江戸時代前期には、武家が目上の相手を尊敬して呼ぶ語として使用されましたが、のちに同輩に対しても用いるようになったのだとか。いずれにしても、男性が男性に対して使用すると限定されています。
■「貴殿」は女性にも使える?
基本的に女性が使ったり、女性に対して使ったりするのはNGのようですが、今まで使ったり使われたりしたこと、ありませんか? 実は、この「貴殿」は現代社会において変化したワード、生きた言葉でもあります。今は「男女平等、性別による差別・区別や偏見をなくそう」という時代。ビジネス文書やメールも、送る側も受け取る側もできるだけジェンダーを感じないように…というのが社会基準になり、「貴殿」も男女問わず使ったり使われたりしてOKという風潮になったのです。
「貴殿」はどんな時にどう使う?便利な「例文」5選
■1:「貴殿におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます」
ビジネス文書の「挨拶文」の定番中の定番。
■2:「ひとえに貴殿のご尽力の賜物と、大変感謝しております」
プロジェクトの成功など、協力者に対して感謝を伝えるケースに。
■3:「本件、ぜひとも貴殿のお力をお貸しいただきたくお願い申し上げます」
要請や依頼時に。「貴殿」より「○○さん」「○○様」と、個人名のほうが効果的な場合もあります。
■4:「貴殿のご意見を賜りたく、お願い申し上げます」
参考になりそうな意見やアイディアをもっていそうな相手に。
■5:末筆ながら、貴殿のご多幸をお祈りしております。
定番の結び文。今回はこれでお終い、なケースに締めくくる一文として。
「貴殿」の類語は?自在に使い分けてボキャブラリー豊かに
男女ともに使える「貴殿」の便利な言い換えワードを5つ、お教えしましょう。いずれも若干堅苦しい印象は拭えませんが、憶えておいて損はありません。また「貴社」もよく目にするワード。こちらは相手が個人ではなく、会社などの組織の場合に使います。
■1:「尊大(そんだい)」…目上の相手に
■2:「尊堂(そんどう)」…目上や対等な相手に
■3:「貴方(あなた)」…目上や対等な相手に
■4:「御身(おんみ)」…軽い尊敬を表して
■5:「上様(うえさま)」…宛名の代わりの敬称
「女史」や「嬢」はもう古い?女性に対する「貴殿」の「言い換え表現」
「貴殿」が男性が男性に対して使う「男性語」だった時代、女性に対しては「貴女(きじょ)」が使われていました。ビジネス文章で見かけることは少なくなりましたが、手書きの手紙で「あなたの~」とするところを「貴女の~」としたら素敵ですね。この場合は「きじょの~」ではなく、「あなたの~」と読むのが自然です。また、女性の名前を「○○さん」ではなく「○○女史」や「○○嬢」と呼ぶこともありますが、今ではかなり文学的な表現に感じるでしょう。
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今日は「貴殿」について見てきました。間違った使い方で恥をかかないように、正しく使いたいものですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『精選版日本国語大辞典』(小学館)/『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)/『大人なら知っておきたいモノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :