「お気遣いありがとうございます」の「気遣い」とは、「心遣い」や「気配り」とはどう違う? 上司や取引先に対しても使える? ビジネスシーンならもっとふさわしいフレーズがあるのでは…など、わかっているようでよくわからない「気遣い」。言っても言われてもうれしい「お気遣いありがとうございます」を、謝意を伝えるシーンで上手に使いこなせれば、“敬語美人”に一歩近づきます。曖昧なだけに手ごわそうな単語「気遣い」について、詳しく見ていきましょう。

【目次】

「お気遣いいただきありがとうございます」のバリエーションは?  
「お気遣いいただきありがとうございます」のバリエーションは?  

間違ったら恥ずかしい! 「お気遣いいただき~」の基礎知識

会話の中でもメールでも、あるいは手紙の文中にもよく登場する「お気遣いいただきありがとうございます」。よく使われるからこそ間違いも生まれやすいこのフレーズの、まずは基礎から見ていきましょう。

■「気遣い」の読み方、書き方

これを読めない…という人はいませんね、そう「きづかい」です。では、「きづかい」と聞いて正しい漢字を書けますか? 「遣」「遺」を間違えて「気遺い」と書いてしまうこと、ありませんか? キーボード入力で「きづかい」と打てば、基本的には「気遣い」一択なので安心ですが、手書きのお礼状などで使用する際には気をつけたいもの。ちなみに「気使い」もNGです。

■正確な「意味」

「気遣い」を辞書で引くと、「あれこれと気を遣うこと、心遣い」のほかに、「よくないことが起こるおそれ、懸念」などとあります。今回のレッスン「お気遣いいただきありがとうございます」は前者の意味で用いることの多いフレーズですが、「気遣い」に「懸念」という意味もあることを頭の片隅に入れておくと、語彙力アップに役立ちそうです。

■「心遣い」との違い

「気遣い」と「心遣い」は、どちらも「あれこれ気を遣う」という意味では同義ですが、ビジネスシーンなら繊細に使い分けてみてはいかがでしょう。例えば、「心遣い」は心情への配慮に、「気遣い」は具体的な配慮に対して…と定義づけておけば、どちらを使うか迷いませんね。

■誰にでも使ってOK? 「失礼にあたるケース」は?

「お~いただき」は、丁寧な謙譲語表現です。謙譲語はへりくだって用いる敬語ですから、上司や取引先、お客様などに使用できます。一方、同僚や部下などには謙譲語を使わないので、「お気遣いいただき」は自分より上位の人への表現であると憶えておきましょう。

■「お気遣いいただきありがとうございます」は二重敬語?

「お気遣い」の「お」は相手の気遣いに対する尊敬表現、「~いただき」は「する」の謙譲語、「~ございます」は丁寧語。使用NGの二重敬語は「同じ種類の敬語の重複」ですから、「気遣いいただきありがとうございます」は正しい敬語表現なのです。

職場やメールでこのまま使える「例文5」

それでは、取引先や上司から「気遣い」を受けた場合の例文を挙げてみましょう。

■1:「ご多忙のところお気遣いいただき、誠にありがとうございました」

「ご多忙のところ」を加えることで、感謝の気持ちを増幅させた言い方。取引先など、身内ではない相手に使います。身内の場合は「お疲れのところお気遣いいただき」がいいでしょう。

■2:「格別なお気遣いを賜りまして、心より感謝申し上げます」

「格別」「賜る」「申し上げる」を使った、最上級の言い回しの一例。

■3:「多大なお気遣いに恐縮しております」

うれしさと同時に驚きも感じられる表現。上司に使うなら、出産祝いをもらった場合など職務外のケースがふさわしいでしょう。

■4:「心温まるお気遣いに感激しています」

謝意を「感激」という言葉で表した例。

■5:「日ごろより何かとお気遣いいただき、感謝の念に堪えません」

取引先にも社内の上位の人にも使えるフレーズです。

「類語」「言い換え表現」「返信フレーズ」で語彙力アップ!

「お気遣い」と「お心遣い」のほかに、同じ意味で敬語表現として使える類似語や言い換え表現は多数あります。ビジネスシーンで使いやすい例を挙げます。

■ご配慮 ■ご高配 ■ご高慮 ■ご厚意 ■お気配り ■お取り計らい

「お気遣い」を、「ご厚情」「ご懇情」に言い換えることもできますが、これはかなり改まった言い回しです。フォーマルな手紙やスピーチなどで使うのがいいでしょう。

■「お気遣いありがとうございます」にはどう返すべき?

最後に、「お気遣いいただきありがとうございます」への返答例を。

「とんでもございません」や「そのように言っていただき嬉しく存じます」などを前文にして、「お役に立てて幸いです」や、「いつでもお声掛けください」などを続ければ、さらに好印象を与えるはずです。

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敬語表現での「気遣い」について見てきました。「心遣い」とおおよその意味は同じでも、少々ニュアンスが違うところが日本語の難しさであり、面白いところ。敬語はとても美しい日本語表現です。毎日ひとつずつでもマスターして、“敬語美人”を目指しましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :