【目次】

【「読み方」と「意味」と「注意点」など基礎知識】

■「気遣い」の読み方

「気遣い」は「きづかい」と読みます。

よくある漢字の間違いが「気い」と書いてしまうこと。 キーボード入力で「きづかい」と打てば「気い」が優先なので間違うことはないと思いますが、手書きでは「遣」「遺」、さらに「使」で迷うかもしれませんね。正しくは「気遣い」なのでしっかり意識して書きましょう。

■「気遣い」の意味

「気遣い」には、(1)あれこれと気を遣うこと、心遣い、(2)よくないことが起こる恐れ、懸念、という意味があります。今回取り上げる「お気遣いいただきありがとうございます」は(1)の意味で用いることの多いフレーズですが、「気遣い」に「懸念」という意味もあることを頭の片隅に入れておくと、語彙力アップに役立ちそうです。

■「心遣い」との違い

「気遣い」と「心遣い」は、どちらも「あれこれ気を遣う」という意味では同義ですが、ビジネスシーンなら繊細に使い分けたいところ。「気遣い」は具体的な配慮に対して、「心遣い」は心情への配慮に対して…と定義づけておけば、どちらを使うか迷いませんね。

■「お気遣いいただき」は敬語として正しい?

「お~いただき」は丁寧な謙譲語表現です。謙譲語は上位の相手に対してへりくだって用いる敬語ですから、上司や取引先、お客様など、ビジネスの現場で使用することができます。一方、同僚や部下などには謙譲語を使わないのでNG! 「お気遣いいただき」は、自分より上位の人への表現であると憶えておきましょう。

■「お気遣いいただきありがとうございます」は二重敬語?

「お気遣い」の「お」は相手の気遣いに対する尊敬表現、「~いただき」は「する」の謙譲語、「~ございます」は丁寧語。使用NGの二重敬語は「同じ種類の敬語の重複」をさすので、このフレーズの場合は該当しません。「お気遣いいただきありがとうございます」は正しい敬語表現です。


【使い方がわかる「例文」】

それでは、取引先や上司から「気遣い」を受けた場合の例文を挙げてみましょう。

■1:「ご多忙のところお気遣いいただき、誠にありがとうございました」

「ご多忙のところ」を加えることで、感謝の気持ちを増幅させた表現に。取引先など、身内ではない相手に使います。身内の場合は、「お疲れのところお気遣いいただき、ありがとうございました」がいいでしょう。

■2:「格別なお気遣いを賜りまして、心より感謝申し上げます」

「格別」「賜る」「申し上げる」を使った、最上級の言い回しの一例です。

■3:「多大なお気遣いに恐縮しております」

嬉しさと同時に驚きも感じられる表現。上司に使うなら、出産祝いをもらった場合など、職務外のケースがふさわしいでしょう。

■4:「心温まるお気遣いに感激しています」

謝意を「感激」という言葉で表した例。

■5:「日ごろより何かとお気遣いいただき、感謝の念に堪えません」

取引先にも社内の上位の人にも使えるフレーズです。


【「類語・言い換え表現」】

「お気遣い」と「お心遣い」のほかに、同じ意味で敬語表現として使える類似語や言い換え表現は多数あります。ビジネスシーンで使いやすい例をチェックしておきましょう。

■ご配慮

■ご高配

■ご高慮

■ご厚意

■お気配り

■お取り計らい

「お気遣い」を「ご厚情」や「ご懇情」に言い換えるのは、かなり改まった言い回しなので、ビジネスレターよりフォーマルなお礼状向きといえます。お祝いや感謝の席でのスピーチなどでも使えます。

■「お気遣いありがとうございます」にはどう返すべき?

最後に、「お気遣いいただきありがとうございます」への返答例を挙げておきましょう。

・とんでもないことでございます。お役に立てて幸いです。

「とんでもありません」と言いがちですが、「とんでもない」で一語なので「とんでもありません」はNG表現です。

・そのように感じていただけましたたこと、大変嬉しく存じます。

・お役に立ちましたのでしたら幸甚です。いつでもお声掛けください。

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今回は敬語表現での「気遣い」について見てきました。「心遣い」とおおよその意味は同じでも、少々ニュアンスが違うところが日本語の難しさであり、面白いところですね。敬語はとても美しい日本語表現です。毎日ひとつずつでもマスターして、“敬語美人”を目指しましょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :