ビジネスメールでのやり取りに、「幸いに存じます」という言葉を使う機会は多いのではないでしょうか。「幸い」という言葉が持つ柔らかな響きのためか、事務的になりがちな文章も、少しだけ相手に和らいだ印象を与えることができるようです。
「幸いに存じます」の意味を深く知り、センスよく使いこなしましょう。

【目次】

センスよく「幸いに存じます」を使えますか?
センスよく「幸いに存じます」を使えますか?

「幸いに存じます」の意味は? 誰に対しても使えるの?

■「幸いに存じます」の正しい意味

「幸い」とは、自分にとって非常に望ましく、幸せに感じられる状態。運のよいことや幸運を指します。また、ある事態や状況が、ある人にとってうまく利用できるようであることや、そのさまを意味します。従って、「幸い」に、「思う」の謙譲語である「存ずる」と丁寧語の「ます」で構成された「幸いに存じます」は、「〜の状態であれば、幸せ、もしくは幸運、都合がいい、望ましい」という意味になります。

ただし、「幸いに存じます」は「必ず〜してほしい」というニュアンスは含みませんので、急ぎの用件や深刻なお願いごとには適しません。実行してほしい期限がある場合は、「~までに」と日時を添えることをお忘れなく。

■誰に対しても「幸いに存じます」は使えるの? 上司に対してはOK?

「幸いに存じます」は、基本的に目上の方に対して使う表現です。上司や先輩のほか、取引先やお客様に対して使うのが適切。自分と対等な立場の人や、部下や後輩など、目下の人には使いません。

4つのシーン別に、適切な使い方を「例文」で理解しましょう

「幸いに存じます」という言葉を、「相手に何かお願いごとをする(■1)」シーンで使う人は多いのではないでしょうか。この他にも、「相手に理解を求めるとき(■2)」「相手のために何かしたとき(■3)」「贈答品をお送りしたとき(■4)」にも使うことができます。これらの4シーンに即して、順番にそれぞれ例文を見てみましょう。

■1:「添付の資料をご一読いただけると幸いに存じます」

■2:「お忙しいところ恐縮ですが、少々お待ちいただければ幸いに存じます」

■3:「微力ながら、お役にたてれば幸いに存じます」

■4:「心ばかりの品ですが、お使いいただけますと幸いに存じます」

「幸いに存じます」を別の表現で言い換えると…それぞれの注意点は?

■1:「お心遣いをいただき、とても嬉しいです」

「嬉しいです」は、自分の感情を表す率直な言葉ですが、少々幼稚な印象を与えることは否めません。フランクな印象もあるので、目上の方に対しては使わないほうが無難

■2:「このような席にお招きいただき、喜ばしい思いです」

「喜ばしい」は、「快く、満足な気持ち」を表す言葉です。丁寧な表現ではありますが、謙譲語や尊敬語の意味は含まれていませんので、自分と対等な立場の人、部下や後輩に対して使うのが望ましいでしょう。

■3:「早急のご対応をいただき、大変助かります」

「助かります」は「自分にとって望ましい状態」であることを表す言葉ですが、「嬉しいです」同様、少々幼稚な印象となります。こちらも目上の方に対しては、使うシーンを選びましょう

■4:「このようなお席にご招待いただき、幸いでございます」

「幸いに存じます」と「幸いでございます」に、大きな意味の違いはありませんが、「ございます」は「ます」を丁寧にした表現なので、謙譲語の「存ずる」を使った「幸いに存じます」のほうが、より丁寧でへりくだった表現となります。

■5:「お褒めの言葉をいただき、ありがたく存じます」

「ありがたく存じます」は、「幸いに存じます」と同様、「~してくれるとありがたいです」という自分の感情を表す言葉です。感謝の気持ちも伝えられますので、「幸いに存じます」と同じように使えますが、印象としてはもう少し親しみのある表現となります。

類似するフレーズ「幸甚でございます」との違いは?

「幸甚」「幸甚」は、「この上もない幸せ」「大変ありがたいこと」、またその様を表す名詞・形容動詞です。「幸いに存じます」の言い換え表現とも言えますが、少々かたい印象であり、「幸甚でございます」を会話で使用することは通常ありません。ただし、相手がかなり上の立場の方ならば、メールなどの文章で「幸甚です」を使うほうがふさわしいシーンもあると考えられます。

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本日はビジネス敬語で差がつく「幸いに存じます」の使い方を確認しました。センスよく使って、印象に残るマナー美人を目指しましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『精選版 日本国語大辞典』(小学館) :