【目次】

【 「お含みおき」ってどんな「意味」?】

■意味

原形の「含みおく」は、予め「心にとどめる」「了解する」「気を付ける」という意味。それを丁寧な尊敬表現にしたのが「お含みおき」です。

■「覚えておいてください」の敬語?

「お含みおきください」は相手に対して含みおくことをお願いするフレーズ。「心にとどめておいてください」「ご了解ください」という意味ですが、ただ知っておいてもらいたい、覚えておいて欲しいということではなく、「事情をよく理解して事前に了解してください」という、強いニュアンスを含んでいます。語感はソフトですが、なかなか押しの強いフレーズなのです。

■誰に使える?

「お含みおきください」は敬語表現ですから、ビジネスシーンでは取引先やお客さま、依頼主など、外部の人に積極的に使いたいフレーズです。少々かしこまった表現なので、社内など身内の人にはためらうかもしれませんが、上司に対しても問題なく使えます。「部長、○○の件、気を付けてください」より、「部長、○○の件、お含みおきください」のほうがスマートというわけです。

■ビジネスシーンでは「覚えておいてください」より「お含みおきください」を

「含みおく」「心にとどめる」「了解する」などを平易に言い換えると「覚えておく」「知っておく」ということ。しかし、ビジネスメールや取引先との会話の中で「覚えておいてください」は、上から目線な印象を与えかねません。

「覚えておいてほしい」「気にしておいてほしい」という思いを強調しながら、印象のいい敬語表現にしたものが「お含みおきください」だと覚えておけば間違いありません。

正しい使い方がわかる「例文」

「強く心にとどめる」「注意して対応する」「しっかり把握する」といったことを要求しつつお願いする「お含みおきください」。次に、使うシーンや相手、言い換えなどを例文から学びましょう。

■1:「申し込み期間中にお手続きを完了いただけない場合はキャンセルとさせていただきます旨、お含みおきくださいますようお願いいたします」  

■2:「必ずしもご希望に添えない場合もありますこと、お含みおきください」

■3:「連休進行ですので通常とは異なりますことを、あらかじめお含みおきくださいませ」

■4:「以上の点をお含みおきのうえ、至急ご回答いただけますようお願いいたします」

■5:「期日までにご入金いただけない場合には、しかるべき対応を取らざるを得ない旨、お含みおきください」

1~3は強く注意を促したいときに、4~5は催促や抗議の意味を含みます。少々厳しい内容であっても、感情的にならず伝えられるのがわかりますね。

「類語」「言い換え表現」

シーンや相手によって、類語や言い換え表現を用いるのが大人のたしなみです。ビジネスシーンで重宝する「お含みおきください」ですが、取引先やお客さま、依頼主、上司など、相手との関係や立場を考慮して、柔軟に言い換えてみましょう。

■1:「ご理解くださいますようお願いいたします」

■2:「何卒ご了承ください」

■3:「あらかじめご承知おきくださいませ」

■4:「お知りおきくださいますと幸いです」

■5:「くれぐれもお気に留めていただけますようお願いたします」

いずれも「お含みおきください」より具体的。ソフトな言い回しの「お含みおきください」なのか、もっと具体的に表現したほうがいいのか、状況や相手との関係性によって使い分けできるようになりたいものですね。

使うときの「注意点」まとめ

最後に、「お含みおきください」を使用する際の注意点をご紹介します。

■謝罪文には使わない

「知っておいてほしい」「理解してほしい」という意味なので、こちらに落ち度があって謝罪する場合には不適切。謝罪なら「ご容赦ください」のように許しを請う表現に。

■注意したい事案が発生している際中には使わない

「お含みおきください」は、事前に伝えておく際に使うフレーズです。注意したい出来事がすでに発生している場面では使いません。状況に応じて使い分けてくださいね。

■目上の人へは「+ワンフレーズ」で印象アップ

「~してください」はお願いする表現であるため、上から目線だと取られてしまうことがあるかもしれません。

より丁寧な言い方をしたいときは「~存じます」をプラスして、「お含みおきいただきたく存じます」のように表現するのが大人の語彙力です。

■秘密事項には使わない

内容が「ここだけの話」といった内密の場合に「お含みおきください」を使うと、「信用されていない」というニュアンスで受け取られることも。内緒の話に念押しは禁物です。

***

「知る」「理解する」「承知する」などをソフトに、しかし強調して表す「お含みおきください」を勉強しました。語彙力はビジネススキルそのものといっても過言ではありません。正しい文章をできるだけ多く目にして、敬語力を鍛えてくださいね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
『日本国語大辞典』(小学館)/『ビジネスですぐ使える 語彙力が身につく本』(三笠書房)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :