「ご足労いただきありがとうございます」「ご足労をおかけしますが~」など、日常的にメールや会話で使われている「ご足労」。きちんと意味を理解して使うことで、定型文のようなこのフレーズも生き生きとしてくるはずです。今日は、ビジネスシーンでの「ご足労」の“感じのよい使い方”を覚えましょう。

【目次】

「ご足労いただきありがとうございます」にはどう返す?
「ご足労いただきありがとうございます」にはどう返す?

「ご足労」の意味は?【基礎知識編】

■なんと読む?

まずは「ご足労」の読み方から。「ごそくろう」で正解です。「足労」という単語に、語調を整えたり意味を添える役割の接頭語「ご」を付け、丁寧語「ご足労」となります。

■漢字からも意味は解読できます

「足労」の意味を見てみましょう。『日本国語大辞典』によると、【相手を敬って、その人にわざわざ来てもらったり、行ってもらったりすることをいう語。】とあります。「労」という字には「ねぎらう」という意味があるので、「足を運ぶことをねぎらう=来たり行ったりすることをねぎらう」という意味になるのです。

■誰に対して、どんな時に使うの?

次に「ご足労」を使う相手とケースは、取引先の方などが来社した際や帰るときに。また、訪問に対してのお礼メールなどにで使用します。

■社内の人にも使える?

丁寧語である「ご足労」のあとには「いただきまして~」「くださいまして~」「願います」などを足して尊敬表現にして使いますが、これは「わざわざ来ていただいた」「忙しいのに来ていただいた」などの意味を含むため。ですから、上司とはいえ社内(身内関係)には使用しません。「こちらから出向かず申し訳ございません」という気持ちを、「ご足労」に込めて使いましょう。

ビジネスでそのまま使える「例文」4選

では、上記のことを踏まえた、ビジネスでまるごと使える例文をご紹介しましょう。

■1:「ご足労をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします」

■2:「わざわざご足労いただき、誠にありがとうございます」

■3:「ご足労いただき、申し訳ございませんでした」

■4:「遠いところ恐縮ですが、ご足労いただけますと幸いです」

相手が到着した際や帰るとき、訪問を依頼したとき、帰ったあとのお礼などに用います。いずれも、「ご多忙のなかお越しいただき」や、「こちらから伺うべきところ」「あいにくの空模様のなか」など、ひと言付け加えるのが大人のマナーです。

「ご足労」と同じ意味で使える「類語」「言い換え」表現

単語としては「足労」ですが、基本的には丁寧語「ご足労」として使用します。それを踏まえ、上記の例文を言い換えてみましょう。

■1:「お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします」

「手数(てすう)」に「他人のために手間をかける」という意味があるので、「足労」の言い換えとしても的確。「お手数をおかけします」は、広い意味で使える便利なビジネスフレーズです。ただし「お手数をおかけしますが、ご足労いただけますでしょうか」は、意味が重複するためスマートな表現ではありません。「お手数~」と「ご足労」は同時に使わない、と覚えておきましょう。また、「お手数」の代わりに「ご苦労」でも同様の意味になります。

■2:「わざわざお越しいただき、誠にありがとうございます」

「お越し」は「行くこと」「来ること」の尊敬表現。「わざわざ」「遠路」「お暑いなか」などをプラスして使いたいものです。

■3:「お呼び立てして、申し訳ございませんでした」

「お呼び立て」は、人を呼び出すことの丁寧な言い方。来てもらうことを依頼する場合に使えます。

■4:「遠いところ恐縮ですが、お運びいただけますと幸いです」

「お運び」も「行くこと」「来ること」の尊敬語です。少々古風な言い方ですが、これをさらりと使えたら“敬語美人”にグンと前進!

「ご足労」フレーズへの返事、返信の正解は?

「ご足労いただきありがとうございました」と言われたり、メールなどが届いた場合の、感じのよい返答をご紹介しましょう。「お時間をいただきありがとうございました」「大変お世話になりました」など、時間を共有できたことへの感謝やねぎらいの気持ちを表すのがベストです。

「とんでもございません」や「大したことはございません」などと謙遜すると、ねぎらいや感謝を受け取らないような印象を与えてしまうかもしれません。ここは素直に感謝し、お互いをねぎらうにとどめるのが正解です。

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本日は、ビジネスシーンでの「ご足労」のスマートな使い方を学びました。使用頻度の高いフレーズなので、言い換え表現も積極的に使ってワンパターンにならないよう気を付けましょう。

この記事の執筆者
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『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(角川新書)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社) :