ビジネスシーンだけでなく、日常生活において、ごく頻繁に使われる「よろしくお願いします」という言葉。目上の方からご近所とのお付き合いまで、幅広い人間関係で挨拶の言葉として使用されています。
あまりに身近すぎて、改めて「その意味は?」と聞かれると、案外曖昧なことに気がつくのではないでしょうか。「よろしくお願いします」を上手に使いこなすために、今回はその意味と正しい使い方を確認しましょう。

【目次】

「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」を本当に正しく使えますか?

今さら聞けない「よろしくお願いします」の意味は?

■「よろしく」の「意味」

『日本国語大辞典』には「よろしく」の意味がいくつか載っていますが、挨拶に使用される際の意味としては、【好意や案ずる心を他に伝言してもらう時にいう挨拶の語。また、人に何かを頼んだりする時に添える語】と説明しています。確かに、ごくごく親しい人との会話であれば、単に「よろしく!」と使うこともありますね。
『敬語マニュアル』では、「以後のつきあいを頼むとき」使う言葉のカテゴリーの中で、「新人が組織に新しく加わったときに広く使われる」として「よろしくお願いします」を紹介しています。基本的に、誰かに頼みごとをする時に口にする言葉と考えていいでしょう。
また、「宜しく」との表記を見かけることも多いのですが、実は常用漢字表には、「宜」は「ギ」という読み方しか記載がありません。「宜しく」は当て字なのです。ひらがなで表記するようにしましょう。

ビジネスシーンを円滑に…そのまま使える「例文」3選

「よろしくお願いします」を使うシーンは、いくつか想定できます。

■1〈自己紹介の挨拶〉:「△年度入社の○○と申します。どうぞよろしくお願いします」

■2〈仕事などの依頼〉:「○○の件、ご検討の程、よろしくお願いします」

■3〈メールの最後、文末の締め〉:「引き続き、どうぞよろしくお願いいたします」

「お願いします」は、依頼や要望を表す「願い」に丁寧な接頭語の「お」をつけ、動詞「する」の連用形に丁寧語の「ます」がついてできた言葉です。ビジネスシーンでは、「します」を謙譲語である「いたします」として、相手への敬意を表す機会のほうが多いかもしれませんね。この場合、「いたします」は、補助動詞の用法なので、「致します」ではなく、ひらがな表記が正解です。
また、■1の〈自己紹介の挨拶〉では、「ふつつか者ですが」「不慣れではありますが」など、へりくだった表現を前につけることも多いようです。

「よろしくお願いします」と言われたときの「返事」「返信」は?

ここでは、上の「例文」であげた3つのシーンに応じた返答を考えてみましょう。

■1〈自己紹介の挨拶に対して〉:「こちらこそ、よろしくお願いします」

■2〈仕事などの依頼に対して〉:「承知いたしました」「喜んでお引き受けいたします」

■3〈メールの最後、文末の締めに対して〉:「こちらこそよろしくお願いいたします」

■4:「お力添えいただだきありがとうございます」

■5:「多大なるお力添えに感謝申し上げます」

相手が目上の方であれば、「こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」のように、最上級の敬語や丁寧な言葉遣いで返信するべきです。
3つめケースの場合、そもそも返信をするか否かは、状況次第です。返信する内容がないのに、「こちらこそ、お願いいたします」とあえて返信するかどうかの判断は、相手との間柄によっても変わりそうです。

失礼にならないように…使うときの「注意点」は?

先に挙げたように、「よろしくお願いします」は丁寧な表現ではありますが、上司や取引先などに対して使うには、ややフランクな印象。相手への敬意を表するためには、「よろしくお願いいたします」か、さらに丁寧な表現である「よろしくお願い申し上げます」が適切です。

■1:「よろしくお願いいたします」

■2:「よろしくお願い申し上げます」

■3:「お願いしたく存じます」

また、「例文」■2の〈仕事などの依頼〉として使う場合に限り、「〜していただければ幸いです」と、より丁寧で柔らかな表現にすることも可能です。ただし、依頼の文面としてはやや弱めで、曖昧なニュアンスの表現であることをお忘れなく。

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挨拶の言葉である「よろしくお願いします」。コミュニケーションを円滑にしてくれますが、使い方次第では、単なる社交辞令と軽く受け取られてしまうこともあるでしょう。
会話でもメールなどの文章でも、正しく、心を込めて使いたいものです。

この記事の執筆者
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『精選版日本国語大辞典』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :