「以前から」という意味をもつ、「かねてより」という言葉。どこか奥ゆかしさを感じさせる、美しい響きの言葉です。そこで今回は「かねてより」の意味や使い方、漢字の表記、さらに「かねてから」との違いについて、解説します。

【目次】

「かねてより」はどんな意味?
「かねてより」はどんな意味?

まずは「かねてより」の基礎知識から

芸能人の結婚発表などでは、「かねてよりお付き合いしておりました○○さんと……」といった表現がよく使われます。そもそも、どんな意味をもった言葉なのでしょうか。

■「かねてより」の「意味」

「かねてより」は、「今から。事前に。前から」といった意味を持つ言葉です。「かねて」という言葉自体が「前から」という意味を持ちますが、「より」を付けることによって、いっそう「継続」の意味合いが強調されています。

■「漢字」で書くと?

『日本国語大辞典』には、「兼ねてより」と「予てより」。ふたつの記載がありますが、一般的には「かねてより」と、ひらがなで表記されることが多い言葉です。

ビジネスでは「兼ねてより」「予てより」のどちらの漢字表記が正しい?

「兼」という漢字は「ふたつ以上のものを合わせる」「前もって」というふたつの意味があります。「予」は、「前もって」という意味です。

「兼ねて」は、「ふたつ以上のものを合わせる」という意味で使うことが多いので、「かねてより」は、一般的に「予てより」と表記するほうが多いようです。ただし、ビジネスシーンだからといって、特に漢字表記にする必要はありません。

そのまま使える「かねてより」の「例文」5選

ビジネスシーンでも使うことが多い「かねてより」。「かねてより〜だった」のように、過去形の動詞と共に使われます。「以前から」よりも、丁寧な印象になりますね。

■1:「かねてより準備しておりましたイベントが開催される運びとなりました」

■2:「かねてより親交のありました○○氏に依頼する予定です」

■3:「●月△日をもちまして、かねてより計画していたプロジェクトを実行します」

■4:「実はかねてより仕事を辞めたいと考えておりました」

■5:「かねてよりお願いしておりました見積書はいかがなりましたでしょうか」

「かねてより」と「かねてから」の違いは?

「かねてから」は「かねてより」と、ほぼ同じ意味をもつ日本語です。

実は「かねて」という言葉自体に、「以前から」という意味が含まれています。そのため、「かねてより」も「かねてから」も、「重複語となるため誤用である」という説もあります。実際には、「かねてより」は『古今和歌集』でも使用されていた古い言葉ですし、「かねてから」も『日本語大辞典』に、【ずっと以前から。前々から。今までずっと】との記載があります。

ただ、正式な場や年配者とのやりとりにおいて、特に文章にする際には、「かねてから」よりも誤用と認識されにくい「かねてより」を使うほうが無難と言えるでしょう。

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「以前から」という意味をもつ「かねてより」。フォーマルなシーンで使われることも多く、この言葉を使うことで文章が丁寧でやわらいだ印象になるようです。ただし「誤用とする説もある」ことを頭に留め、相手の反応に応じ臨機応変に使い分けることを心掛けましょう。

この記事の執筆者
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『日本国語大辞典』(小学館) :