【目次】

【「かねてより」の意味は?漢字で書くと?】

「〇〇さんのご活躍ぶりは、かねてより耳にしておりました」のように使われる、「かねてより」。近年ではあまり耳にしなくなった言葉のひとつですが、そもそもどんな意味をもった言葉なのか、詳しくみていきましょう。

「意味」

「かねてより」は、「今から」「事前に」「前から」といった意味の言葉です。実は、「かねて」という言葉自体に「前から」「今までずっと」という意味があるのですが、「かねて+より」とすることにより、以前からずっとその状態を続けてきた」という気持ちが強調された言葉になっています。

「漢字」で書くと?

漢字では、「予てより」あるいは「兼ねてより」となりますが、「かねてより」と、ひらがなで表記されるのが一般的です。


【ビジネスでは「兼ねてより」「予てより」どちらを使う?】

「漢字の方が正式な印象?」と思いがちですが、たとえビジネスシーンであっても「かねてより」はひらがな表記が正解です。特に、「兼ねて」には「前もって」という意味の他に、「ふたつ以上のものをあわせる」という意味もあるため、誤解を避けるためにもひらがな表記がむしろ適切なのです。


【ビジネスでそのまま使える「例文」10】

■1:「かねてより準備しておりましたイベントは、来年の年明け早々に無事開催される運びとなりました」

■2:「〇〇社の業績不振についてはかねてより耳にしておりましたが、まさか倒産に追い込まれるとは……」

■3:「その件でしたら、かねてより親交のある○○氏に依頼する予定です」

■4:「●月△日をもちまして、かねてより計画していたプロジェクトを実行します」

■5:「実は…かねてより仕事を辞めたいと考えておりました」

■6:「かねてより英国に憧れていたが、今回渡航の機会をいただき嬉しい限りだ」

■7:「かねてよりこちらのプロジェクトには関心をもっており、私自身に必要な資格や知識を準備してまいりました。ぜひ、参加させてください」

■8:「かねてよりご依頼しておりました企画の進捗状況はいかがなりましたでしょうか」

■9:「かねてよりお願いしておりました見積書はいかがなりましたでしょうか」

■10:「かねてよりのご厚意に感謝申し上げます。」

「かねてより」は、「かねてより〜だった」のように、過去形の動詞と共に使われることが多い言葉です。「以前から」よりも、丁寧な印象になりますね。


【「かねてより」と「かねてから」の違いは?】

前述の通り、「かねてより」の「かねて」には、この言葉自体に「前から」という意味があるため、「『かねて−より』は重複表現では?」と誤解されることもあるようです。

しかしながら、「かねてより」は、『古今和歌集』にも「かねてより風にさきだつ波なれやあふことなきにまだき立つらん(風が吹くより前に、風に先立って立つ波のように、まだ逢ってもいないのに、早くも噂が立っているようだ)」と歌われているように、古くから使われている正しい日本語表現です(『日本国語大辞典』より)。

一方で、同じく『日本国語大辞典』によれば、「かねてから」は、「ずっと以前から」「前々から」「今までずっと」という意味の言葉。「かねてより」と「かねてから」は、ほぼ同じ意味を示す言葉だとわかります。ただし、「かねてから」は比較的新しい言葉のため、「かねてより」同様かそれ以上に、「重複表現では?」と誤解されることもあるようです。

誤用だと誤解されたくないのであれば、「かねてより」「かねてから」の言い変え表現として、「以前より」といった言葉を使うという選択もありますね!

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「かねてより」は、「以前から」という意味をもつ正しい日本語表現です。少々古風な響きを持つ言葉のため、特に目上の人や取引先に対して使うと、丁寧な印象を与えられます。ただし、「重複表現だと誤解される恐れもある」ことを念頭において、上手に使ってくださいね。

この記事の執筆者
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『日本国語大辞典』(小学館) :