ビジネスシーン、とくにメールで「お手数をおかけしますが~」というフレーズを頻繁に使う人も多いのでは? お願い事やお礼、恐縮するようなシーンではとても便利ですね。しかし、挨拶代わりのように常に使っているのでは、逆効果になることも。そもそも「お手数」の正しい意味を理解していますか? 今回は、みんながよく使っているフレーズだからこそ“デキる使い方”をマスターしたい、ワンランク上の敬語表現を見ていきましょう。

【目次】

「おてすう」と「おてかず」に違いあり?
「おてすう」と「おてかず」に違いあり?

【「お手数をおかけしますが」の「意味」と「使い方」】

「お手数をおかけしますが~」は、さまざまなバリエーションで使われるフレーズです。まずは基本形をしっかり理解していきましょう。

■「手数」はどう読むのが正解?

「手数」を正しく読めていますか? ビジネスユースでの「お手数をおかけしますが」なら、通常「おてすうをおかけしますが」と読みますが、実は「てすう」でも「てかず」でも正解です。

■「手数」の意味

名詞である「手数(てすう)」の意味を調べると、『日本国語大辞典』には【1.てまひまのかかること。めんどうなこと。てかず。】【2.他人のために尽力すること。骨おり。てかず。】とあり、「てすう」と「てかず」は同義語ということがわかります。ただし「てかず」には、「 囲碁・将棋などで、ある手段を施すのに必要な着手の数」や、「ボクシングでパンチを出す度数」という意味も。ビジネスシーンでは「てすう」と読んで正解です。

■こんなシーンで使います

ビジネスシーンで使う「手数」は、いずれにしても「手間がかかってめんどうなこと」を意味するというわけです。したがって、多くは恐縮する状況で使うことになります。

■誰に対しても使える?

取引先や上司など目上の人に対してだけでなく、たとえ部下であっても「命令ではなく依頼」であれば使えるフレーズです。上下関係などにかかわらず、誰にでも使うことができます。

■締めの文頭で使うと効果的!

依頼を締める文面の頭に「お手数をおかけしますが」ともってくるのが効果的です。


【メールや電話、対面でもすぐに使える「例文」3選】

それでは、「お手数をおかけしますが」というフレーズを用いて、恐縮しつつ面倒なことを依頼する際のビジネス例文をご紹介しましょう。

■1:「お手数をおかけしますが、何卒よろしく願いいたします」

■2:「お手数をおかけして恐縮ですが、引き続きよろしくお願い申し上げます」

■3:「お手数をおかけして申し訳ございませんが、今後とも何卒よろしくお願いいたします」

■1は、依頼内容を示したあとの締めの一文として、最も使いやすい例文です。メールや文書なら、「お手数をおかけしますが、以下、何卒よろしくお願いいたします」としたあとに依頼内容を示すことも可能。■2と3は、依頼が継続されるような場合の例文です。


【上司にも使える「言い換え」表現3選】

「お手数をおかけしますが」というフレーズは、さまざまなシーンで便利に使えるだけに定型文化してしまっているともいえます。同じ意味の言い換え表現をストックして使い分けができれば、もっと好印象を与えられるはず。取引先や上司など、目上の人に対して使いたい言い換え表現をマスターしましょう。

■1:「お手間をおかけしますが」

■2:「ご面倒をおかけしますが」

■3:「お手を煩わせることになりますが」

また、同様の意味で「お願いばかりで恐縮ですが」「恐れ入りますが」「お忙しいところ恐縮ですが」などを使用してもよいでしょう。


【頻発厳禁! 「使用上の注意まとめ」】

使用上の注意をまとめますのでご参考に。些細なことに思えても、言葉、特に敬語の使い方はあなたのビジネススキルの評価を左右します。「お手数をおかけしますが」を上手に使って、成果を上げてください。

■1:締めの冒頭に

終わり文の冒頭、あるいは挨拶の次に使うのが効果的です。

■2:ひとつのメールや会話で何度も使うべからず

「とても申し訳なく思っている」「大変恐縮している」という気持ちを表したい場合でも、しつこく使っては「口先だけ」と悪印象を与えかねません。

■3:「お手数をおかけしますが」と正しく用いる

「お手数おかけしますが」と、助詞である「を」を抜いたものも見かけます。日本語として間違いとはいえませんが、名詞+助詞で文章にするほうが読んだり聞き取ったりしやすいもの。相手のことを考えて用いましょう。

■4:使いすぎに注意!

毎回「お手数をおかけしますが」を使っていると、「面倒くさい人」「いつも無理を押しつける人」と思われてしまいます。内容は同じでも、言い換え表現を駆使するのが得策。

■5:些細なお願いには使わない。

ペンを貸してほしいとか、近くにあるものを手渡してほしいなど、そんなに面倒でも手間のかかることでもないことに使うのは大げさです。頻発を防ぐためにも、「自分が頼まれたらちょっと面倒だな」という要件にのみ使うようにしましょう。

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ついつい頻発してしまう「お手数をおかけします」。重宝する敬語フレーズこそ、注意深く使うべきです。今日も“賢い敬語美人”に一歩近づきました!

この記事の執筆者
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