雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は「神戸アジアン食堂バルSALA」店長 黒田 尚子さんの活動をご紹介します。

黒田 尚子さん
「HARDWOOD」取締役、樹木医
(くろだ なおこ)神戸市生まれ。関西学院大学人間福祉学部社会起業学科卒業。企業で飲食店への営業業務を3年半経験し、’16年に「神戸アジアン食堂バルSALA」をオープン。学生を対象にSDGsや多文化共生などをテーマに話すことも多い。

自国の料理を仕事にすることでアジア出身の女性たちに自信と笑顔を

’16年に神戸中華街にオープンした「神戸アジアン食堂バルSALA」は、タイ、フィリピン、台湾などアジア出身の女性たちが日替わりで各国の家庭料理を提供する店だ。コンセプトは「エンパワーメント・オブ・オール・ピープル」。互いの価値を認め合い、自分の価値も認められる社会へ。

「きっかけは、社会起業(※)を学んでいた大学時代に、生活相談に乗る団体にフィールドワークに行ったこと。そこで、結婚などを機に日本にやってきたけれど、日本語でのコミュニケーションがとれず、孤立しているアジアの女性たちと知り合いました。

彼女たちは皆、口を揃えて、『自分は何もできない』と否定的なことばかり言う。どうしてなんだろう、と。でも、仲よくなってから、お弁当をつくってくれたことがあって。それぞれの国の料理は、食べたことがない味でしたが、すごくおいしかった。そして彼女たちは、料理のことならいきいきと話す。一生懸命日本語で伝えようとしてくれる姿は、私に衝撃を与えました」

試しに台湾出身女性にお願いし、大学構内で焼きビーフンの屋台をやってみたところ、即完売に。

「支援『される』側の人にも、すごい力があるんだということを実感しました。できることとできないことをさらけ出し補い合う。そういう社会をつくりたい、と」

事業として責任をもって展開していくために、卒業後は飲食の広告営業を経験、ノウハウを身につけた。開店後約3年は大赤字だったが、経営はようやく軌道に乗り、もうすぐ7年目。今年、近くにテイクアウト専門店も開いた。

「将来、私たちの店から独立する人が出るとうれしい。ここはあくまで、共生社会への通過点です」

【SDGsの現場から】

●日替わりで提供されるアジアンメニュー

サステナブル_1
働く女性の出身地はタイ、台湾、インドネシア、モルドバなど。日替わりで自国の料理を提供。

●チャルメラ屋台も製作。イベントや弁当の販売も

サステナブル_2
クラウドファンディングで屋台を製作。イベントに出店したり、弁当の販売を行ったり。

※社会起業とは…事業によって社会の課題を解決する起業。黒田さんが学んだ関西学院大学人間福祉学部社会起業学科は、日本初の社会起業を謳う学科。

PHOTO :
香西ジュン
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
木佐貫久代