クリスマスや忘年会、そしてお正月と、食べる機会の多い時期がようやく終わり、そろそろダイエット始めようかな、と思い始める時期になりました。どうすれば痩せられるか考えたときに目に入ってきやすいのは、さまざまなセレブリティのダイエット情報です。

書籍『I'll Have What She's Having: My Adventures in Celebrity Dieting 』には、古くは1930年代のグレタ・ガルボや1960年代のファーストレディ、ジャクリーン・ケネディ、現代のビヨンセやミランダ・カーなど、セレブリティ16人のダイエット法が紹介されています。

その中でも特に話題のものやユニークで気になったものが本当に適切なダイエット法なのかどうか? 管理栄養士の豊永彩子先生にうかがってきました。

■1:ジャクリーン・ケネディの「じゃがいも+キャビア」でダイエットは?

ジャクリーン・ケネディ・オナシス ©Aflo, PictureLux/courtesy of tiffany & co.

43歳の若さでアメリカ大統領に就任したジョン・F・ケネディの妻として夫に負けない人気を博し、ファッションアイコンとしても愛されたジャクリーン・ケネディ。美意識が高く、自分の体型にもつねに敏感だった彼女は、ある時期「1日にじゃがいも1個、それにサワークリームとキャビアをのせたものしか食べない」というダイエットを敢行していたそうです。

キャビアでダイエット……なんて発想がさすがですが、1日にじゃがいも1個なんてかなりキツそうです。それに一般的なキャビアの塩分は7〜10%と言われていて、塩分過多にならないかも心配です。

豊永先生にうかがったところ、やはり「そもそもこれはダイエットではなく、単なる絶食ですね。食事量が少なく、さらに取り入れる食材数が少ないほど、体内の栄養バランスの乱れに拍車がかかります」とのお答え。

摂取エネルギー不足により栄養素の不足、おまけに塩分過剰となれば、むくみやすくなり、見た目の印象はかえってぽっちゃりしてしまうのだとか! またこのような食事を続けることでたんぱく質が不足すれば、必要な筋力までも低下してしまい、身体全体に締まりがなくたるんだ状態になってしまうそうです。

photo:Hai Nguyen

■2:マリリン・モンローの「毎日ほぼたんぱく質オンリー」の食生活は?

マリリン・モンロー

1940年代のデビュー以来今なお人々を魅了し続けているマリリン・モンローは、36歳で謎の死をとげるまでそのスタイルをキープしていました。そんな彼女の食生活は、「朝は温めた牛乳に、生卵2個を混ぜたもの」そして「ランチは抜き、ディナーには牛レバーやステーキ、ラム肉を焼いてニンジン5本と一緒に食べ、デザートはチョコレートサンデー」というものでした。

パンやパスタといったものを食べておらず、今でいう「糖質制限ダイエット」に近いようにも見えますが、そういう意味でこの食生活はアリなんでしょうか?

でも豊永先生は、毎日こんな食事をするのは「ナシ」だと断言しています。というのは、まさにパンやパスタなど、エネルギー源になる「主食」がないので、体内で筋肉やホルモンを犠牲にしてしまっているからだそう。チョコレートサンデーでかなりの糖分過多。

豊永先生いわく「サンデーなどのスイーツに含まれる『砂糖』と、ご飯・パンなどの『主食』は同じ糖質といっても、まったくの別ものです」。スイーツ好きで、朝ごはんや残業食をお菓子で済ませている人(筆者もです)は要注意ですね。

ただマリリン・モンローの摂り入れていた食材には、よいところもあります。レバーやラム肉は良質のタンパク質食材で、精神面・美容面の調子をととのえる鉄分や亜鉛といったミネラルも補えるので、積極的に摂りたい食材だそうです。

■3:ビヨンセの「14日間もレモネードだけ飲み続ける」ダイエットは?

photo:Francesca Hotchin

現代のセレブが実践しているダイエットも、栄養学的には必ずしも最適ではないようです。

ビヨンセ・ジゼル・ノウルズが映画『ドリームガールズ』の役作りで9kg減量するために行った「マスタークレンズ」別名「レモネードダイエット」は、10日間(ビヨンセの場合は14日間)にわたってレモネードだけを飲み続けるという過酷なもの。一般的なものと違ってミネラルの多いメープルシロップや体を刺激するカイエンペッパーが含まれているとはいえ、やはりレモネードはレモネードです。

こうした単体ダイエットはときどき流行しますが、豊永先生は「代謝が低下し、太りやすい体質になることやリバウンドが心配」と言います。さらに1回でなく定期的に繰り返されることで慢性的な栄養不足となり、若い人なら排卵機能やホルモンバランスの乱れ、ミドル世代なら将来寝たきりになったり、うつを発症したりするリスクが高まってしまうそうです。女性的な機能を危険に晒し、将来の健康も脅かしてしまうことを決して忘れてはいけません。

たしかにレモネードしか飲まなければ短期間で痩せられるのだろう……と想像できますが、それによって長期的に起こるリスクも意識したほうがよさそうですね。

■4:ミランダ・カーの「週2日だけ摂取カロリーを500kcalにする」ダイエットは?

出産を経ても美しいスタイルを保ち、2017年にはIT企業・Snapの創業者でCEOのエヴァン・シュピーゲル氏と再婚、第2子妊娠を発表したミランダ・カー。

そのスタイルの秘訣のひとつは、週5日は比較的自由な食生活を送り、週2日だけ摂取カロリーを500kcalに抑える「5:2ダイエット」にあるそうです。たとえば平日の特に忙しい日を500kcalの日と決めれば、空腹を意識するヒマもないので無理なくダイエットできそうですし、食べる時間が短縮できて一石二鳥のようにも思えます。

とはいえ、成人女性の消費カロリーは基礎代謝だけでも1日1200kcal前後と言われていて、定常的に週2回も500kcalに抑えてしまうことには、リスクがあるようです。豊永先生によれば、女性は毎日最低でも約1800kcal程度を必要としていて、この必要量に1日でも足りない日があると、体内の栄養素が犠牲になります。エネルギーが慢性的に不足すると、筋力や肌、髪のつやといった生命維持に直接関わりのない部分から支障が出始め、さらには冷えや疲れ、精神的なアンバランスなどにつながっていくそう。この方法も、安易に取り入れないほうがよいようです。

■5:グレタ・ガルボの「変わった健康食材を食べる」ダイエットは?

無声映画の時代にデビューしたグレタ・ガルボは人前に出ることを嫌い、若くして引退してしまったこともあって、人を寄せ付けないミステリアスなイメージが抱かれています。そんな彼女でもダイエットには取り組んでいたようで、現役女優だった1930年代に知り合った栄養士のゲイロード・ハウザー氏の助言の元、独自の食事法を実践していました。

ハウザー氏はさまざまな健康食材の摂取を勧めていて、その中にはたとえばビール酵母や、砂糖の副産物で甘味料として使われるモラセス、バターの副産物であるバターミルクといったものがありました。モラセスやバターミルクは欧米では手に入れやすいとはいえ、普通の人が毎日食べるものでもありません。ちょっと変わった食材を食べて痩せるという発想はかなり昔からあるのですね。

でも豊永先生によれば、酵母にはたしかに糖質分解作用があるそうですが、「摂取したからと言って痩せるものでもない」そうです。またモラセスは栄養価が高いとして最近日本でも注目されつつありますが、やはり「魚介類・野菜やフルーツなどから日常的に、よく噛んで、食事を楽しみ・味わうことこそが必要な栄養摂取につながり、心身ともに美しさとしなやかさを育みます。これこそがダイエットへの近道」とのことです。

■6:エリザベス・テイラーの「週に一度だけ好きなものを食べる」ダイエットは?

エリザベス・テイラー

子役時代から活躍し「世界一の美女」と呼ばれたエリザベス・テイラーですが、若かりし頃の食生活はダイエットとは無縁だったようです。

30代の頃の彼女の食事は朝からミモザ(オレンジジュースとシャンパンのカクテル)に卵とベーコン、お昼もベーコンとピーナツバターをたっぷり詰めたパン、そして夜はフライドチキンやマッシュポテト、ポテトチップス、デザートにはスポンジケーキやクリームを重ねたトライフル、そしてたっぷりのジャック・ダニエルといったものでした。

でも中年を迎え、身長157cmにして体重180ポンド(約81kg)を超えてしまった彼女は一念発起し、25kg以上の減量に成功。55歳でダイエット本『エリザベス・テイラーの挑戦 : 私が太った理由、痩せた方法』を出版します。そこには彼女が行った食事プログラムが記されていますが、中でも彼女らしいのが「controlled pigout」(コントロールした暴食)というもの。週に一度、好きなものを好きなだけ食べるというもので、たとえば「ピザ1枚に、チョコレートサンデー」といったものです。

せっかくダイエットしていても、週一回大食していたら努力が水の泡になってしまうのでは……と思いきや、豊永先生はこの考え方に肯定的で「ストイックになりすぎず、週1回程度好きなものを取り入れることはとても大切」とのこと。とはいえ、「このような暴食ではなく『好きな食べ物をおいしくいただく』というスタンス」が大事だそうです。

1920年代から最近までのいろいろなダイエット法を見てきましたが、ほとんどが極端すぎるか、それほど効果がないというものでした。その中でも豊永先生のお墨付きを受けられたのは、エリザベス・テイラー考案「controlled pigout」の「週1回程度好きなものを食べる」という考え方の一部のみというのは、興味深いところです。

考えてみれば、セレブリティにとっての体型とは仕事道具のようなもの。ときには健康を犠牲にしてでも体型を維持、または変化させたくなるのは仕方ないのかもしれません。

でもセレブリティでない私たちにとっては、見た目の体型よりも中身の健康の方が大事です。ダイエットをするとしても、あくまで食べることを楽しみながら、健康を損ねない範囲にしていきたいですね。

豊永 彩子さん
管理栄養士(フリーランス)
(とよなが あやこ)米国NTI認定栄養コンサルタント。栄養の知識とカロリー計算を中心とする基礎栄養学だけでなく、メンタルヘルスにフォーカスし解剖生理学なども統合したホリスティック栄養学※や、カラダ本来のメカニズムを整えるメゾット(姿勢や呼吸・味覚)をプラスした考え方で、ダイエット/食事カウンセリング・セミナー講師・商品監修・レシピ本出版/書籍レシピ提供 ・レシピ提供などを多数手がける。
公式サイト
参考文献:『I'll Have What She's Having: My Adventures in Celebrity Dieting』Rebecca Harrington・著 Virago Press Ltd刊
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
福田ミホ