ビジネスシーンだけでなく、テレビのニュースやママ友との会話でも聞かれるようになった「モラルハザード」というワード。あなたはその意味を正しく理解して使えていますか? もともとは保険用語や経済用語でしたが、今ではさまざまな場面で使われています。本日はそんなカタカナ語について解説します。

【目次】

商品の偽装は生産者の「モラルハザード」が原因?
商品の偽装は生産者の「モラルハザード」が原因?

【「モラルハザード」ってどういう「意味」?…基礎知識】 

■「モラルハザード」の意味をわかりやく解説!  

まずは「モラルハザード」というワードの成り立ちを説明します。「モラル[moral]」には倫理や道徳、「ハザード[hazard]」には障害物や危険、崩壊などの意味がありますね。現在さまざまなシーンで登場する「モラルハザード」は、一般的に「道徳・倫理の欠如」という意味で使われています。

■ビジネスシーンでの意味

もともとは保険業界や経済界で使われていた用語。例えば、“保険の加入によって生ずる安心感が、かえって事故を招きやすくする”といった負の現象を指していました。

しかし最近では、「金銭的に余裕があるのに学校給食費を払わない保護者」に対してなど、「倫理観の欠如」や「社会的な責任回避」といった意味で広く使われています。このような使い方は誤用だとの指摘もありましたが、現在では特に問題がないようです。

■身近な日常…コロナ禍における「モラルハザード」

もともとは、リスクによる損害を補償する制度が、リスクを回避しようとする意識を弱めてしまうことを指す「モラルハザード」について、もう少し身近な話題で解説してみましょう。

2022年夏現在、いまだに収束の兆しが見えない新型コロナウイルスの感染拡大。コロナ禍によってあらゆる業種で経済活動が停滞していることに対し、国や地方自治体などが救済策を講じています。金銭的な支援は景気の下支えとなり、被害を受けている人々の生活を支えることにつながる一方で、公的な救済が企業や労働者の努力や意欲を阻害するケースも少なくありません。このような状況が、「コロナ禍におけるモラルハザード」です。


【ビジネスでの一般的な「使い方」がわかる「例文」】

実際にどのように用いられているのか、「モラルハザード」の使用例をご紹介します。

■1:「モラルハザードの対策として、最も有効とされるのがリスク分担です」

■2:「モラルハザードの一例として、自動車保険のカバー項目が多い加入者ほど注意力が散漫で、事故率が高いという報告があります」

■3:「食品の賞味期限や産地の偽装は、生産者のモラルハザードに一因があるようだ」

また、経済学においての「モラルハザード」は、「市場での情報の偏在」を表す言葉。「情報の偏在」を簡単にいうと、取引を行う者同士の情報の量や質に差があることです。多くの情報をもっている保険会社が、あまり情報を得ていない保険加入者に対し、情報の格差を利用して利益を得る状況を指して使われます。


【「モラルハザード」を別の言葉に…「言い換え」「類語」】

■不道徳な ■倫理に反する ■道徳にもとる ■道理にそむく ■インモラルな

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教師に的外れなクレームをつける保護者や、部下を精神的に追いつめるパワハラ上司…こういう「モラルハザード」を起こしている人は、「モンスター〇〇」と呼ばれます。こんな「モラルハザード」は、起こらないに越したことはありませんね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『現代用語の基礎知識』(自由国民社)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫)/『ビジネスですぐ使える 語彙力が身につく本』(三笠書房) :