「恐縮至極」という言葉をご存知ですか? 日常会話ではあまりなじみがありませんが、改まった手紙やメールでは、使い方次第でとても重宝する言葉です。使い方がよくわかる、例文と共に解説します。一緒に学びましょう!

【目次】

「恐縮至極」は3つの場面で使われます。
「恐縮至極」は3つの場面で使われます。

【「恐縮至極」を使いこなすための「基礎知識」】

■「恐縮至極」はなんと読む?

「恐縮至極」は「きょうしゅくしごく」と読みます。

■「恐縮至極」の「意味」をわかりやすく解説すると?

「恐縮至極」の意味を、ふたつの熟語に分けて考えてみましょう。

『日本国語大辞典』によれば、「恐縮」にはふたつの意味があります。

  • ① 恐怖で身がすくむこと。
  • ② 相手に迷惑をかけたり、相手から厚意を受けたりして、申し訳なく思うこと。

②からわかるのは、「恐縮」という言葉は、「相手に迷惑をかけたとき」「相手から厚意を受けたとき」、ふたつのシーンで使われる言葉だということです。つまり、前者は「謝罪」、後者は「感謝」の意を含めて、「申し訳なく思う」のですね! へりくだり、相手に敬意を表する言葉でもあります。

一方の「至極」は、「このうえないこと。また、その様」という意味です。ほかの語について「接尾語」のように用いられることもあります。「接尾語」とは、ほかの語の後についてその語と共に一語を形成し、意味を添加する働きがあります。ここも今回のポイントのひとつです。

「恐縮」と「至極」、ふたつの単語の意味を合わせて考えると、「恐縮至極」の意味はふたつ。

  • ① 恐怖でこのうえなく身がすくむこと。
  • ② 相手に迷惑をかけたり、厚意を受けたことに対して、このうえなく申し訳なく思うこと。

つまり、「恐縮至極」は、「相手に迷惑をかけたとき」や「相手から厚意を受けたとき」に、「このうえなく」「申し訳なく思う」気持ちを表現した言葉です。自分がへりくだることで相手に対する敬意を強めた、とても改まった言葉でもあります。

■少々脱線しますが…「至極」の豆知識

前述の通り、「至極」は「接尾語」のように用いられることも多く、ほかの言葉の語尾について「このうえなく」という意味を添加する働きをもっています。例えば「恐悦至極」は時代劇などで聞いたことがあるのではないでしょうか。語尾に「至極」がついた言葉をいくつかご紹介しましょう。

恐悦至極……「恐悦」は「相手の好意をもったいなく思って喜ぶこと」。従って、「恐悦至極」は(目上の方からのご好意が)きわめて喜ばしいという意味の謙譲語です。感謝を伝えたいとき、「恐縮至極」とほぼ同じような意味で使えます。

残念至極……このうえなく残念であること。

不届至極……このうえなく人の道や礼に背いていること、けしからぬこと。

後悔至極……非常に後悔する様。後悔に耐えない様。


【「恐縮至極」はビジネスシーンで使えるの?】

漢字がもつ印象通り、「恐縮至極」はとても改まった言葉ですから、目上の方や取引先に対して使うことができます。ただし、親しい関係の上司に使う言葉としては、少々仰々しく感じられますね。そして覚えておきたいのは、「恐縮至極」は「書き言葉」であるということ。「このうえなく恐縮」した場面で使うべき言葉ですから、気軽に、あるいは頻繁に使う言葉ではありません。

どのような場面で使われるのか、例文でチェックしていきましょう。


【「恐縮至極」の理解を深める「例文」6選】

「恐縮至極」は、「相手に迷惑をかけたとき」や「相手から厚意を受けたとき」に、「このうえなく」「申し訳なく思う」気持ちを伝える際に使われます。

■相手に迷惑をかけたとき:謝罪の意を込めて

・「この度はご希望に添えず、恐縮至極に存じます」

・「この度は多大なるご迷惑をおかけし、恐縮至極に存じます」

■相手から厚意を受けたとき:感謝の意を込めて

・「身に余るお言葉をいただき、恐縮至極に存じます」

・「お忙しいところご足労いただき、恐縮至極にございます」

■相手にお願い事があるとき

「恐縮至極」は、「謝罪のシーン」と「感謝のシーン」のほかにもうひとつ、「依頼」のシーンでも使われます。

・「恐縮至極に存じますが、ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます」

・「恐縮至極に存じますが、ご対応いただけますと幸いです」


【「恐縮至極」の「言い換え」「類語」表現は?】

「感謝」や「謝罪」を表す場面での「恐縮至極」の言い換え表現はいくつかあります。

■「恐悦至極」  ■恐縮の限り  ■恐縮の極み

「依頼」の場面で「恐縮至極」を使うのであれば、「大変恐れ入りますが〜」「大変恐縮ですが〜」と言い換えることもできます。

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あまりなじみのない「恐縮至極」ですが、文書や手紙、メールで、感謝や謝罪の気持ちと共に、相手への敬意を表現するのにふさわしい言葉です。頻繁に使うには少々重い言葉ですが、ここぞというシーンで使ってみてくださいね。今回も、最後まで読んでいただき、感謝至極にございます!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) :