雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回はパラリンピック選手・絵本作家、小学校教師 サラ・アンドレス・バリオさんの活動をご紹介します。
障がいへの理解を深めるために。子供への教育で社会を変える
自著の絵本を持って立つサラさん。その両足は義足だ。小学校教師をしていた25歳のとき、交通事故で両足を切断。後に復職すると共に、陸上競技選手として活動を開始し、国際大会とパラリンピックでメダリストとなった。
「事故後は、私自身の自分に対する偏見のほうが強くて、足のことは隠していました。でも、時間が経ち、スポーツを始めたこともあって、義足のことを初めて子供たちに話したんです。驚き、怖がる子もいました。そのとき、健康な子には障がいとは何かということがわからないんだと気付いたのです。障がいを社会に知ってもらうためには、幼い頃からの教育が必要だと。そこで、絵本にして伝えようと思いつきました」
タイトルは『私はだあれ?』。さまざまな障がいをもつ5人の主人公が、日々の生活のなかで起こる「冒険」に、障がいを生かして挑戦する物語だ。5冊のシリーズで、現在2巻まで刊行されている。
「義足や競技用車椅子、脳性麻痺の子供へのセラピーなど、障がいに関連する情報も紹介していますし、いじめの話も書きました。多くの現実に触れることで、子供たちは人生に対する準備ができるようになります。障がいをもつ人と知り合うだけではなく、自分だけでなく、家族や友人にも、ある日突然、体の一部を失う日が来るかもしれない。そんなとき、この本や、私のことを思い出して、『そういえば義足でも普通に生活して、幸せにしていた人がいたなあ』と思えれば、乗り越えられるはず」
現在は競技活動に専念。世界大会とパラリンピックでの入賞を目指して、週に6日練習している。
「目標を定め、挑戦すると決める。それが、人生をやり直す方法です」
【SDGsの現場から】
●パラ競技の100m走、200m走、幅跳びに出場(※)
●一気に描き上げたオリジナル絵本『私はだあれ?』
※パラ競技とは…障がいの種類と程度により細かくクラス分けされている。サラさんは「T62」で、トラック競技/下肢切断の競技用義足使用のクラスに属する。
- PHOTO :
- Javier Peñas(撮影協力/Librería Benedetti)
- WRITING :
- 剣持亜弥(HATSU)
- EDIT&WRITING :
- 大庭典子、喜多容子(Precious)
- 取材 :
- 小林由季