「人間万事塞翁が馬」――聞いたり見たりしたこと、ありますか? 「見たこともないし、どう読むのかわからない」という人もいるでしょう。中国の故事に由来することわざですが、私たちが仕事をしていくうえでも大変役に立つものなのです。知っているという人も初めての人も、ビジネスシーンで活用できるよう、しっかりとその意味などを解説していきます。

【目次】

「人間万事塞翁が馬」を正しく読めますか?
「人間万事塞翁が馬」を正しく読めますか?

【「人間万事塞翁が馬」って一体なに!? 「読み方」や「超訳」も】

■読み方

「にんげんばんじさいおうがうま」と読みます。

■意味

人間の吉凶や禍福は、転変きわまりがないことをたとえています。人生の禍福(災難や幸福、不運や幸運)は予測できないことであり、不幸が幸福に、幸福が不幸に転じることもあるのだから、安易に悲しんだり喜んだりするものではない、という意味です。
「人間」は「じんかん」と読む場合は世の中を指します。「にんげん」でも「じんかん」でも、この場合は「人生」と訳せばいいでしょう。「万事」は「すべてのこと」、「塞翁」は「塞(とりで)に住む老人」を意味します。直訳すると「人生は塞翁の馬のよう」となるでしょう。

■由来

「塞翁の馬」とはどういう意味なのでしょう。
「人間万事塞翁が馬」は、中国の前漢時代(紀元前206~紀元前8年)の哲学書『淮南子(えなんじ)』に記された人間訓のひとつです。
「昔、中国の北辺の塞(とりで)のそばに住んでいた老人が飼っていた馬が逃げたが、数か月後に足の速い優れた馬を伴って戻ってきた。老人の子供がその駿馬(しゅんめ)に乗り落馬して足を折ったが、怪我のおかげで兵役を免れて命が助かった」という故事からきています。
馬に逃げられたのは不運、駿馬を伴い戻ったのは幸運、怪我は不運、けれど助命したので幸運、というわけです。

■「人間万事塞翁が馬」を簡単にいうと…

超訳すると「人生何が起こるかわからない!」ということ。本来の意味は「安易に一喜一憂するな」と戒めているのですが、ビジネスでは「転じて福となる」とポジティブにとらえてもいいでしょう。


【「ビジネスシーンでの使い方」がわかる「例文」3選】

■1:「新プロジェクトのメンバーに選ばれなかったからと気を落とすことはない。人間万事塞翁が馬、君にとってもっとよい仕事がめぐってくるよ」

■2:「プレゼンは通ったけれど本当の勝負はここから。人間万事塞翁が馬と肝に銘じ、気を抜かず取りかからなければなりません」

■3:「予定の新幹線に乗り遅れて飛行機を使うはめになったが、おかげで事故に巻き込まれず大事な商談に間に合った。万事塞翁が馬を実感したよ」

「人間」を省いて「万事塞翁が馬」としてもOKです。


【同じような意味で「ビジネスで使えることわざ」】

「いいことがあっても浮かれず、悪いことがあっても気を落とさず」と、ビジネスシーンではポジティブにとらえて使いたいのが「人間万事塞翁が馬」です。

これに似たような意味のことわざや格言をご紹介します。

■雨降って地固まる  ■禍(わざわい・災い)転じて福となす  ■怪我の功名 
■失敗は成功のもと(母)  ■七転び八起き 


【「人間万事塞翁が馬」を座右の銘にしている有名人】

「人間万事塞翁が馬」を正しく読めるようになっただけでも今回の成果ですが、仕事にプライベートにと、常にその心意気で臨みたいもの。最後に「人間万事塞翁が馬」を座右の銘としている有名人を紹介しましょう。

・山中伸弥さん(京都大教授。iPS細胞の作製に成功した医学者)

・松井秀喜さん(元プロ野球選手)

・岡田武史さん(元サッカー日本代表監督)

・芦田愛菜さん(女優)

 

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いいことがあればうれしいし、嫌なことがあれば気分が沈む。人間は感情をもつ生き物なので当たり前なのですが、気持ちのもちようや考え方次第で、心身へのダメージを抑えることはできます。いい時も悪い時も、奢らず浮かれずあきらめず…なかなか難しいことですが、今回「人間万事塞翁が馬」を知ったことをきっかけに、そんな心もちでいることを始めてみませんか?

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社) :