雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は大阪公立大学 現代システム科学研究科 准教授 千葉知世さんの活動をご紹介します。

千葉 知世さん
大阪公立大学 現代システム科学研究科 准教授
幼い頃、原油流出事故でオイルまみれになった海鳥の姿をニュースで見てショックを受け、海を守らなくては、と使命感を抱く。京都大学総合人間学部卒業、京都大学大学院地球環境学舎博士課程修了。1歳・4歳児の母。

海洋ゴミ問題を、まず足元から。大阪湾の無人島で調査研究を実施

和歌山県の友ヶ島(ともがしま)。明治時代に建造された旧日本軍の砲台跡が残る無人島で、観光地としても人気の場所で、千葉さんは’19年から海洋ゴミを回収・調査している。

「海洋ゴミ問題(※)って、規模が大きすぎて、実態がわからないですよね。私は環境学を学んでいた学生時代から、現場に行くことを教え込まれてきたので、まずは自分が住む場所から近い大阪湾のゴミ問題に取り組もうと思いました。

地図を眺めながら潮流や地理状況を考えていたら、友ヶ島にゴミが流れ着いているな、と。行ってみると、やっぱり海岸にゴミがたくさんある。人の手が入っていない自然と、大量のゴミとのコントラストが、非常に印象に残りました」

数名の学生と共に始めた調査は、対岸の加太地区の住人や和歌山市の協力も得て法人化し、「加太・友ヶ島環境戦略研究会(KATIES)」を立ち上げての継続的な活動に。軸は調査研究だが、千葉さんは「成果を伝えて社会に還元し、人々の意識を変えていくことにも注力したい」と語る。

「講演会のように、一方的にしゃべって終わり、ではなく、みんなでゴミを拾いながら交流する。ゴミでアート作品や楽器をつくったり、調査の一部を経験してもらったり。芸人さんや企業と一緒のイベントも開催しています。特に子供たちは楽しんで参加してくれる一方、『ゴミを鳥や動物が食べてしまうとね…』といった話には真剣な表情に。こうした体験が未来につながっていくと思うんです」

’25年に開催される大阪万博では、大阪湾内の人工島が会場に。

「海洋ゴミ問題への意識を高める機会になるはず。研究者として、そして子をもつ母として社会が変わるお手伝いをしたい」

【SDGsの現場から】

●観光客向けに海洋ゴミを展示する企画も

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今年7月に行った展示企画。友ヶ島初の試みで、拾うだけでなく、学びも意識した啓発に。

●友ヶ島に集結し、海洋ゴミを分類・測定調査

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回収したゴミをシートに広げ、素材や重量などによって分類。大学生や企業なども参加。

※友ヶ島の海洋ゴミ問題​とは​…瀬戸内海国立公園内の友ヶ島には、和歌山県のほか、大阪府、兵庫県など県外からのゴミも漂着。外国語が書かれたペットボトルなども。

PHOTO :
香西ジュン
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
木佐貫久代