「時代をさかのぼれば、歌舞伎は最新エンターテイメントのひとつ。肩の力を抜いて観に行ってほしい」中村隼人さん
「『あなたは立ち役が似合う』、坂東玉三郎さんに背中を押されたのが人生のターニングポイント」中村隼人さん
――梨園に生まれ、小さな頃から舞台に立ち続けている隼人さん。これまでの人生で『ターニングポイント』だと思うのはいつですか?
「"ふたつ"あります。まずは、芸能活動に理解のある高校に進学したこと。そこで、歌舞伎にかかわらず、各分野の第一線で活躍している友人がたくさんできました。Hey! Say! JUMPの山田涼介くんとか、俳優の神木隆之介くんとかがそうですね。いまでも連絡を取り合っている間柄です。テレビで彼らを見かけると、よし僕も頑張ろう!と励みになる。業界が違うので特にライバル視することもなく、素直に意見を言い合えるんだと思います」
「もうひとつは、高校2年生の時に、人間国宝の坂東玉三郎さんの相手役を勤めさせていただいたこと。それまで僕は、家系的に女形しかやったことがなかったんですが、そこで『あなたは立ち役が似合う』、と背中を押していただいて。僕は身長が高かったので、女形を演るにはどうしても深く腰をかがめる必要があったんですが、それがなくなって、のびのびと舞うことができるようになりました。僕の歌舞伎人生での大きな転機でした」
――隼人さんは、『スーパー歌舞伎』など新しいことにも果敢にチャレンジされていますが、一方で、"古典歌舞伎"の良さとは何でしょうか?
「まず、古典歌舞伎って音楽が全て生演奏なんです。これはミュージカル作品でもなかなか無いことだと思います。生の音楽を聞くチャンスだと思うと、観劇が二倍楽しくなるのではと思います。歌舞伎って歴史上の人物を『ヒーロー』として描いている題目が多いんですが、それって、今で言えば漫画・アニメや、もっと言うとハリウッド映画にも通ずるものがあると思うんです。原点ともいえるんじゃないかな。難しいものと敬遠されがちな古典歌舞伎ですが、時代をさかのぼれば、歌舞伎は最新のエンターテイメントだった。基本的には人が楽しめるように作られているので、ぜひ肩の力を抜いて観に行っていただけたらと思います」
――歌舞伎は『若いうちはオリジナリティがいらない』と言われる世界と伺いました。その中でも、ご自身の「色」をどう魅せていきたいですか?
「どなたが言った言葉だったか…『型があるからこそ型破り』と。僕は、古典を教わるときは、まずは『物まね』から入ろうと思っているんです。自分のオリジナリティを無理に出そうとは思っていないですね。400年間上演され続け、長い年月をかけてそぎ落とされてきた結果がその役であるわけなので、20代そこそこの役者がオリジナリティを入れたとして、これを超えられるわけがないというのが僕の考え方です。だからその役の抱える歴史に『胸を借りる』つもりで、教えていただく通りに演じることを目指します。ただ忘れてはいけないのは、『自分で考え続けること』。なぜこの形になったのか、そこに行き着くまでにはなにがあったのか…。常に考えながら役に挑めば、新しく見えてくることもあるんです」
「若い世代の方々にももっと歌舞伎を観に来て欲しい」中村隼人さん
――SNSやYouTubeでは、プライベートの様子を積極的に発信していますね?
「歌舞伎って"宣伝"がないんですよ。歌舞伎のCMって観たことがありますか? 特別な公演以外ほとんど無いと思います。広告効果としてSNSが注目されている今の時代だからこそ、少しでも多くの人に『歌舞伎』を知ってもらうきっかけになるといい。そう思って発信するようにしています。やっぱり若い世代の方々にもっと歌舞伎を観に来てほしいですから」
――SNSを拝見すると、交友関係がとても広いようにお見受けします。
「大変ありがたいことに、いろんな現場でいろんなジャンルで活躍している方々に仲良くしていただいています。ただ、僕はもともとシャイで人見知りなほう。長く共演していても、なかなか一緒にご飯に行けなかったりも…。そう思うと、いろんな方とオープンマインドで付き合えるようになったのは割と最近かもしれませんね。根が器用じゃないので、仕事とプライベートのオンオフができないんです。だから、どの現場でもありのままをさらけ出すようにしています」
――では最後に、仕事の息抜きのためにしていることを教えてください。
「たくさんあります! この前のオフはシュノーケリングに行きました。その前は沖縄でダイビング。海だけではなく、山にも行きますね。キャンプ大好きです。料理が好きなので、キャンプ飯にもこだわりますし。昔は街で遊ぶのが好きだったんですが、コロナ禍にゴルフを始めてから"自然っていいな"って思えるようになって。息抜きというか、心のチャージ方法となっています」
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- Precious.jp編集部
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