雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、「Papel Semente」CEO兼共同創設者 アンドレア・カルバーリョさんの活動をご紹介します。

アンドレア・カルバーリョさん
「Papel Semente」CEO兼共同創設者
大学で心理学を学ぶ。20代から古紙のリサイクルを行うNGOで活動。’09年にシードペーパー製造会社を創業。国内外の企業をクライアントにもつ。現在は10か国の企業への輸出も行い、生産量の5%を占めている。

紙から芽が出るシードペーパーゴミから生まれる製品で社会に変化を

古紙を再生する際に花の種を漉き込んだリサイクル紙「シードペーパー」(※)。ひと晩水に浸けてから土に埋めると植物が芽を出し、紙の部分はそのまま土に還っていくというアメリカ発祥の製品で、アンドレアさんはブラジルで初めて生産方法を確立。’09年に起業した。その挑戦の原動力となったのが、20代から続けていたボランティア活動での経験だ。

「20代の頃、うつ病を患っていた私は、友人に誘われてNGOで活動を始めました。そこでは、ゴミ収集で生計を立てる人たちが集めた紙ゴミを、ハンドメイドでリサイクル紙にして販売していて。私は、彼らの貧しい現実と、彼らにとってはゴミは生きる手段であり、とても大切なものなんだということを知ったのです。活動のなかで私はたくさんの人に助けてもらった。シードペーパー事業で、その恩返しができたら、と」

創業以来58トンの紙をリサイクル。国内外の大手企業をクライアントに抱え、ヨーロッパへも輸出している。働き手としてゴミ収集を生なり業わいとする人々が90の貧困地区から参加。多くの雇用を生み出している。’11年に脳卒中で倒れたことも、事業を転換させた。

「倒れる以前は自分ひとり、信念だけで動いていた。病気をしたことで、ビジネスの視点が欠けていたことに気付けました。改めて専門学校でビジネス管理を学び、会社を拡大することができました」

「問題と共に解決策は存在する」。その精神で、コロナ禍でもひとりも解雇することなく乗り越えた。一般の紙よりも高価なシードペーパー。その価値を訴えていくことは困難だらけだが、「古紙から植物が芽を出すように、変化は起こると信じている」と笑った。

【SDGsの現場から】

●工場には特注の機械が揃う

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集めた古紙を溶かして植物の種を漉き込み、乾かす。トマト、クレソン、人参などから選べる。

●お気に入りを長く乗るというスタイルに

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製品は企業のイベントなどでタグ、フライヤー、包装紙、カード、封筒などに使用されている。

※シードペーパーとは​…1995年にアメリカ・コロラド州で、紙ゴミのリユースを目的に事業が立ち上げられたのが始まり。日本では、(有)スープの登録商標。SDGsの視点で近年注目を集めている。

WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT&WRITING :
正木 爽(HATSU)、喜多容子(Precious)
撮影・取材 :
Naoko Takahashi(写真提供/Papel Semente /Gustavo Cabral)