人生をご機嫌にする!『ひとり』の贅沢

 

「ひとり」— この言葉から何を連想しますか? 特にこの数年、コロナ禍という環境のもと、人と触れ合うことの大切さを強く感じた方もいることでしょう。その一方で、「ひとり」内面を見つめること、他人の価値観ではなく自分の価値観で行動し、生きることの重要性を実感した方も多くいるのではないでしょうか。

雑誌『Precious』12月号では「人生をご機嫌にする!『ひとり』の贅沢」と題し、人生のセカンドシーズンにひとりで過ごす“贅沢”にクローズアップ。達人や賢人たちが過ごす「ひとり時間」に注目し、そのヒントをご紹介しています。今回はプレシャス世代が実感する「ひとり」について、読者アンケートを実施。総勢約700名(!)から集まった声を徹底分析します。

〈読者アンケート〉プレシャス世代が実感する「ひとり」についての意識調査

今回の企画を立ち上げるにあたり、まず行ったのが「ひとり」に関するアンケートです。すると、総勢約700名(!)もの声が集まりました。年齢を重ねたからこその叫び、隠れた本音、そして未来の展望まで徹底分析します。

〈質問1〉「ひとり」になりたいと思うことはありますか?それはどんな時?

 

まず最初に聞いたのが、「ひとり」になりたいと感じることは? また、その思いはどんなときに訪れるのか? でした。

「待ちに待った週末の朝、好きなことだけにフォーカスしたいのに、家族の予定や行動に思いがいたり、やるべきことがどんどん出てきてしまうとき」(51歳・弁護士)、「在宅勤務の日、リモートワークの夫とオンライン授業の息子、それぞれから食事を催促される。ひとりで集中して仕事がしたい」(48歳・広告代理店)、「夕食の片付けを終え、大好きなドラマを見始めたとき、母が私を『どんな話?』『誰が好きなの?』と質問攻めに。怒りを通り越して悲しくなった」(47歳・人材派遣会社)。

24時間、朝昼晩問わず、家庭内で「ひとり」への思いを募らせることが多いようです。

「夫が、私の趣味ではないアートをリビングに飾ったとき。義母から譲られた古くさいティーセットが食器棚の一段を占拠したとき。狭くてもいいから、好きなものに囲まれてひとりで暮らしたいと思う」(53歳・薬剤師)、「大好きなフィギュアスケート鑑賞をしているとチャンネルを変えてくる夫。それなのに自分の趣味のゴルフ観戦を強要してくるのはいかがなものか」(49歳・システムエンジニア)、「せっかくお気に入りのバスソルトを入れたのに、夫と娘に『変な匂い!入りたくない』と言われ、思わずイラッ」(44歳・医療事務)。

趣味嗜好が合わないストレスを抱える様子も見受けられます。

もちろん、家族がいなくても「ひとり」を思う気持ちは芽生えるもの。「愛する人でも、他人は他人。“生きるリズム”が違うなと感じるとき、ひとりになりたいと思います。例えば私はせっかち、相手はのんびり。旅先でどう過ごすかを相談するときなど、それが顕著になるかもしれません」(54歳・PR会社経営)。

パートナーの有無、同居する家族の有無にかかわらず、人は「ひとり」を切望する…そんな姿が浮かび上がってきました。

〈質問2〉「ひとり」になりたいのに、それができない…その理由は?

温泉 女性 後ろ姿
 

その一方で、ではどのように“ひとり”で過ごしているのかを聞いてみると

「仕事の帰りにカフェや本屋に立ち寄る」(42歳・アパレルVMD)、「家族が寝静まった深夜にネットフリックス鑑賞」(46歳・印刷会社)、「移動の車内で好きな音楽をかけて、コーヒーをゆっくり飲む」(55歳・製薬会社営業)、「半年に一度、午後半休をとり、美術館へ」(50歳・税理士)など、短い時間に限られている人が多い様子。

そこで、ひとりになりたいのにできない理由、その時間を捻出するときに障害となるものを聞いてみました。

「家族が帰る前に夜ごはんを準備しておかないと。そう考えて気が焦ってしまう」(50歳・損害保険会社)「上の息子が高校生、下の娘が中学生で、長時間の外出はまだ心配。出先でも思いきり解放感にひたることができない」(48歳・土地開発)など、妻、母としての義務と責任を感じている人が多数。また「ひとりでいることに慣れていないので、他人の視線が気になって仕方がない」(42歳・国家公務員)、「一度、カウンターフレンチのディナーにトライしたものの、“おひとりさま”を楽しめなくて…これは自意識の問題?」(46歳・歯科衛生士)など、ソロ活に居心地の悪さを感じてしまう人も。

ただ「家族のわがままぶりに嫌気が差し、1泊2日でひとり温泉を決行。すると『ママがいなくてゆっくりできた』『また行ってきたら?』と大好評(笑)。背負いすぎていたのかも…とプチ反省」(45歳・大学講師)、「友人に誘われた油絵のワークショップで、私がその魅力に開眼。今では各地のデッサンクラスにひとりで参加するように。好きなことこそ、ひとりで極める楽しさを知りました」(56歳・化粧品会社)など、思いきって「ひとり」で過ごすことで、考え方が変化したという声も聞かれました。

〈質問3〉50歳未満と50歳以上…「ひとり」に対する思いは変わりましたか?

 

考え方の変化という点で、興味深い意見が挙がったのが、昔と今とでは「ひとり」への思いは変わったか、という問いへの答えです。

「20代のときは、友人が多い人=魅力的な人。好かれること、嫌われないことばかり考えていたので、『ひとりぼっち』は恐怖でした。30代で結婚、出産し、話の合う人が限られるように。でも頭の中につねに誰かがいて、人と比べて生きていた気がします。それが抜け始めたのが40代。ようやくひとり飲みができるようになり(笑)、サードプレイスの効用も理解し始めました。そして50代は、『ひとり』の気ままさと寂しさ、その両方を味わいながら、登山やキャンプなど本格的なソロ活に励もうかなと計画中」(51歳・出版業)、「若い頃はひとりでいるのが不安で、無理して人の輪に入ろうとしていました。怒涛の子育てを経た今は『ひとりって最高!』。一度奪われた時期があったからこそ、その貴重さを噛みしめています」(52歳・同時通訳)。

さまざまな経験を経て培われてきた、大人の「ひとり」論に心打たれます。

最後に、まさに今が「ひとり」適齢期だと手応えを感じる人々の声を紹介しましょう。

「若い頃は自分をもて余していたけれど、今は自分が何に難儀するのか、何が嫌いで何に喜ぶ人間なのかがわかってきた。ようやく今、本当の意味で『ひとり』を楽しめるし、それこそがご機嫌な人生につながる気がする」(56歳・進学塾経営)、「人と関わることの楽しさと煩わしさ、その両方を味わってきて、今ちょうど人生の折り返し地点に。金銭的余裕があり、まだ体力もある今こそ、あえて『ひとり』を選択したい。ずっとひとりではなく、今はひとり。この先、しなやかな人生を送るために」(50歳・スタイリスト)。

一人ひとり違う、自分だけの「ひとり」を追求する。これからはそんなオリジナルの「ひとり」が求められる時代かもしれません。

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PHOTO :
Getty Images
EDIT :
兼信実加子、喜多容子(Precious)
取材・文 :
本庄真穂