「申し送り」とは、「前任者から後任者へ必要事項を伝えること」です。異動や配置換えで業務を誰か別の人に引き継いでもらう際には、「申し送り」を適切に行うことがとても大切。今回はスマートな「申し送り」をするためのポイントや注意点について、詳しく解説します!

【目次】

「申し送り」の頻度が高いのは、シフト制の職場や業務を数人で分担する職種。
「申し送り」の頻度が高いのは、シフト制の職場や業務を数人で分担する職種。

【「申し送り」の「意味」は?】

■「申し送り」とは「前任者から後任者へ必要事項を伝えること」

「申し送り」とは、「事務引き継ぎなどの際、前任者から後任者へ、それまでの業務進捗や引き継ぎ事項を伝えること。また、その内容」を指して使われます。その際、伝えるべき情報を「申し送り事項」などと言います。

■「申し送り」が特に重要視されている職種や業界は?

「申し送り」が行われる頻度は職種や業界によって異なります。頻度が高いのは、シフト制の職場や業務を数人で分担する職種です。具体的には主に看護・介護業界や警備職、営業職などが挙げられます。なかでも看護や介護の現場は24時間体制で観察やケアが必要なことも多いため、シフトの交代時だけでなく、外来や病棟、手術室、検査部門など患者を移動するたびに申し送りを行います。看護ではカルテとは別に患者の情報を「申し送り」としてまとめ、後任のスタッフが状況を正確に把握できるようにするのが通例。医療ミスを起こさないためにも、適切な「申し送り」が何より大切なのです。

営業職においては、医療や介護の現場のように、1日のうち数時間単位で業務を担当する人が入れ替わることは多くないでしょう。とはいえ、異動や配置換え、あるいは長期休暇などで、今まで担当していた営業先を別の担当者に引き継ぐときには、申し送りが必要となります。主な「申し送り事項」は進捗状況、担当先の決済者、先方の印象や対応時の注意点など。前任者がそれまで培ってきた、顧客に関する知識や付き合いのコツなども含めて申し送りすることで、後任者が顧客と打ち解けるきっかけとなり、結果として円滑な営業業務へとつながります。


【「申し送り」に関する基本的な「マナー」】

「申し送り」という言葉を使う際のマナーをご紹介しましょう。

■社外の方に「申し送り」は使わない

「申し送り」は基本的に社内、関係者内での情報の伝達・共有を指します。「現状を申し送りしていただけますか」のように、取引先など社外の人に対しては使えないので注意しましょう。

■「申し送る」とは言わない

「申し送り」という言葉は、「申し送りをする」もしくは「申し送りを行う」「申し送りを済ませる」「申し送りをお願いする」などと用いられます。


【効率よく、適切な「申し送り」をするためには?】

■ポイントを整理して伝える

「申し送り事項」が整理されていないと、後任者に要点が伝わらなかったり、さらには誤った解釈をされてしまう危険性も。誰が読んでも容易に理解できるようにするためには、ポイントや優先順位をわかりやすく整理する必要があります。「申し送り」のために事前に用意されたフォーマットを「申し送り書」と呼びます。最近では無料でダウンロードできる「申し送りフォーマット」を活用して共有する機会も増えているようです。メールなどを使って「申し送り」する場合でも、案件のタイトル、進捗状況、担当先の決済者、先方の印象や対応時の注意点など、記載項目を統一することで、情報を理解しやすくなります。

■「事実」と「感想・意見」は明確に区別する

「申し送り」は、後任者が取引先との信頼関係を築くための橋渡し、という役割もあります。取引先が好むアプローチの仕方、反対にNG事項など、業務を滞りなく引き渡すためには事実を伝えることはもちろん、自分なりの印象や推測を伝えるのも有効です。ただし、客観的な事実と主観的な推測・意見が混同しないよう、それぞれをきちんと区別して記載しましょう。〈所感〉〈感想〉など項目を設け、「ここからは個人的な意見である」ことを明確に区別することを心掛けて。後任者が取引先を色眼鏡で見てしまうような、偏った記載は控えるべきです。


【「申し送り」の「言い換え」「類語」表現は?】

■「引き継ぎ」

「引き継ぎ」とは、後任者が前任者から、その職務が担当すべき事務を受け継ぐこと。「申し送り」が「業務に必要な情報を伝え共有する」ことに重きを置いているのに対して、「引き継ぎ」は「前任者の仕事の続きを後任者が行う」、つまり作業の担当者の変更という意味で使われます。

■「ご連絡いたします」「お伝えいたします」

前述の通り、「申し送り」は社外の人に対しては使えません。言い換えの例文をご紹介しましょう。

社内:「○○について申し送りをお願いします」
社外:「○○について詳しくお教えいただけますか」

社内:「以下、○○に関して申し送りいたします」
社外:「以下、○○に関してお伝え(ご報告)いたします」

たとえ社内であっても、相手との関係性によっては、「申し送り」よりも「お伝えいたします」といった丁寧な表現が適切である場合も。臨機応変に使い分けましょう。

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ビジネスシーンで「申し送り」が重要視される理由は、前任者から業務を引き継いだ後任者が、円滑で適切な業務を行うための情報源となりえるためです。自分が新たな営業担当になったとき「欲しい!」と思う内容を伝えることは、新任者のメリットになるだけでなく、営業部門全体の、ひいては会社の利益につながることをお忘れなく。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) :