【目次】
【「構いません」の「意味」】
■「意味」
「構いません」は動詞「構う」の否定形「構わない」を丁寧にした表現です。
「構う」には「世話を焼く」「からかう」などの意味がありますが、多くの場合、打消しの表現を伴って用いられ、「気にする。気を遣う」「ほかのことに関わって、差し支えが生じる」という意味をもちます。つまり、「構いません」は「気にしません」「差し支えありません」という意味のフレーズなのです。
■「構いません」は「敬語」といえる?
「構いません」は「構わない」を丁寧に表した敬語表現です。ですが、「丁寧語」であって、尊敬語や謙譲語のように、相手を敬ったり、自分をへりくだったりする意味合いはありません。
【ビジネスでそのまま使える「例文」】
ビジネスシーンでは、相手との関係性によって使用する言葉やフレーズ、その使い方などを鑑みる必要があります。とはいえ毎回じっくり考えながらでは会話は成り立たず、メールなどでも効率が悪い…。下記のシーン別例文を丸暗記するくらいの気持ちで覚えておくと便利です。
■シーン1:許可を求められたとき
両者の間に上下関係がある場合。上位の人が「構いません」を使用する例文です。
・「企画書の提出ですが、金曜日でもよろしいですか?」「週明けでも構いませんよ」
・「企画書に記載したA案とB案、どちらがよいでしょうか」「どちらでも構わないのでお任せいたします」
■シーン2:相手からの謝罪を受け入れるとき
相手からの謝罪に対し、「私は大丈夫ですよ」「気にしていませんよ」という意味で「構いません」が使われることがあります。深刻な状況ではなく、あくまで軽いミスに対するやり取りです。
・「うっかりしておりました。申し訳ございません」「構いませんよ。お気になさらず」
・「遅れまして申し訳ございません」「時間には余裕で間に合いますから、構いませんよ」
「構いません」の「せん」が少し強い印象を与えてしまいそう、というケースには断定を和らげて、聞き手に安心感や許可を与えるニュアンスを生む終助詞「よ」をつけると安心です。
■シーン3:相手の許可を求めるとき
自分から許可を願い出るときにも「構いません」は使われます。「大丈夫ですか?」より丁寧な印象です。
・「先方の希望を優先すると経費がかさみますが、構いませんか?」
■応用編:何かを勧められたとき
「構いません」の応用編は「お構いなく」です。直訳すれば「気にしないで」。例えば訪問先で「何かお飲み物を召し上がりますか?」と勧められたときに、「お気遣いなく」という意味で「お構いなく」という言葉が使われます。
・「恐れ入ります。どうぞお構いなく」
・「ありがとうございます。どうぞお構いくださいませんように」
【「失礼」と感じる理由は?】
シーンや相手によっては「失礼!」と感じさせることになりかねないのが「構いません」というフレーズです。上述した通り、丁寧な敬語表現とはいえ尊敬語や謙譲語ではないので、敬意の度合いは高くありません。しかも、「(私は)気にしません」という主観的な「許容」や「許可」のニュアンスを伴う言葉です。ときに「上から目線な印象」を与えてしまうので、取引先や目上の方に対して使うのは控えましょう。
次に、そういう場合の言い換えを見てみましょう。
【目上の人に失礼にならない「言い換え」例文】
上記のシーン別例文で出てきた「構いません」を、相手が目上の人と仮定して言い換えてみます。
■「週明けで差し支えありません」
■「どちらでも支障ございません」
■「問題ございませんので、どうぞお気になさらないようお願いします」
■「電車の時間には十分間に合いますのでお気になさらず」
「差し支え」は「支障」「都合の悪い事情」という意味。「差し支えありません」は「問題ありません」「支障ありません」ということであり、「私は気にしない」といった「許容」のニュアンスは含まないので、上司など目上の方に使ってOKです! 取引先など、さらに丁重度を高めたい相手に対しては、「差し支えございません」が正解です。
■類似語「大丈夫です」も言い換えて!
「気にしなくて大丈夫です」「どいちらでも大丈夫です」「これで大丈夫ですか」「全然大丈夫です」など、「構いませんよ」「構いませんか」というニュアンスで「大丈夫」を使うこともあると思います。口癖になってる…という人もいるかもしれませんね。
「大丈夫」は形容動詞ですが、近年「必要/不要」「可/不可」「諾/否」の意味で相手に問いかけたり答える用法が増えています。「重そうなので持ちましょうか」「大丈夫です」の場合は「不要」の意味。「試着したいのですが大丈夫ですか?」「はい、大丈夫です」は可否を問い、可能だと答えています。
しかし、例えば「次の会議室の利用予約を〇曜日15時に取りますか?」と聞いた場合の「大丈夫です」は、その時間で問題ない、という意味なのか、取らないでいい、という意味なのか計りかねますね。このように、場合によっては「いいの? だめなの?」とどちらとも取られることがあるので、相手にしっかり伝わるように言葉を補足するのが大人の語彙力です!
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例えば、取引先へのプレゼンに使う書類をつくっているときに、上司から「その会議の日程が前倒しになりそうなんだけど…」と相談されたとき、とっさに「構いません」と答えてしまうこと、ありませんか? 丁寧な表現なので使ってしまいがちですが、正しい意味を理解すれば「構いません」は使用シーンや相手によって要注意ワードであることがわかります。本当に期日に間に合う算段がつくのなら、すっと「問題ございません」が出てくるといいですね。「言葉の使い方は相手との関係次第」。まずは基本を頭に入れて、状況次第では言い換える…こんな応用力を身に付けてください。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :