「尊敬の念を抱く」や「尊敬の念に堪えません」といったスピーチや紹介文などで見たり聞いたりすることがある「尊敬の念」というフレーズ。ちビジネスシーンでの少しかしこまった雑談などにも登場しがちです。いざというときに正しく使えるでしょうか? 今回はこの「尊敬の念」について理解を深めます。
【目次】
【「尊敬の念」の「意味」を徹底解説!】
■読み方
「そんけいのねん」と読みます。
■意味
「尊敬」の意味を『デジタル大辞泉』で調べてみると、「その人の人格を尊いものと認めて敬うこと」「その人の行為・業績などをすぐれたものと認めて、その人を敬うこと」とあります。「尊敬」とは、その人の人格や行いを敬うことです。
「念」も調べてみると、(1)「感謝の念」というように「思い」や「気持ち」を表したり、(2)「念のため」の「念」は「心配り」「注意」のことで、(3)「念願」の「念」は「望み」などがあります。そして、「尊敬の念」の場合は(1)の「思い」「気持ち」ということ。つまり、「尊敬の念」とは、「その人の人格や行いを尊いものと認めた」ということなのです。
■使い方
「尊敬の念」というフレーズに続く動詞には、「~を抱く(いだく)」「~に堪えない」「~を覚える」「~が起きる」「~をもつ」「~を示す」「~が募る(つのる)」があります。また、「~に満ちた」「~を禁じ得ない」「~でいっぱい」なども続けて使います。次の章で使用例を見ていきましょう。
【「尊敬の念」の使い方がよくわかる「例文」10選】
■1:「人格者である〇〇さんに尊敬の念を抱いている人は多いはずだ」
■2:「尊敬の念に堪えない人との出会いは、一生の宝物だ」
■3:「真摯なお仕事ぶりに、いつも尊敬の念を覚えております」
■4:「尊敬の念を抱く理由は、相手の年齢や経験年数とは関係ない」
■5:「めんどうな仕事を快く引き受けてくれる人には、尊敬の念をもって接したい」
■6:「些細なことでも相手に尊敬の念を示すことが、円滑なコミュニケーションの秘訣です」
■7:「先輩のように私も丁寧に仕事を重ねていきたいと、尊敬の念を募らせています」
■8:「尊敬の念に満ちた眼差しがまぶしい」
■9:「何年も変わらず尊敬の念を禁じえません」
■10:「尊敬の念でいっぱいで言葉もございません」
【「尊敬の念」の「言い換え」と「注意点」】
スピーチや手紙などで使われることの多い「尊敬の念」というフレーズですが、別の言葉での言い換え表現も覚えておきましょう。
・敬意を表す ・敬意を払う ・リスペクトする
英語の[respect]は、「尊敬すること。敬意を表すこと。価値を認めて心服すること」です。「彼の作品を愛し、リスペクトする若手アーティストによる~」といったように、近年「リスペクト」という単語はよく使われていますね。「尊敬の念」の使い方として注意したいのは、「尊敬の念すら覚える」という言い方。「すら」は「さえ・でも・でさえ」と同義語でもあるので、「尊敬の念すら覚える」では、相手を否定したり皮肉ったりした表現になってしまうのでNGです。
ちなみによく見かける「尊敬の念を抱く」の「抱く」は「“いだ”く」と読むのが正解。一般的に物理的なものは「だく」、感情など抽象的なものに使う場合は「いだく」と読みます。また、よく似たフレーズに「畏敬の念」という表現がありますね。「畏敬」とは「崇高なものや偉大な人を恐れ敬うこと」です。「尊敬の念」は人に対してしか使えませんが、「御社のご活躍に畏敬の念が堪えません」といったように、「畏敬の念」は人以外にも使用可能です。
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「尊敬の念」は、日常的には使う機会がなくても、退職する上司へのスピーチや手紙といったように、ここぞの時に使いたいフレーズです。だからこそ、しっかり身に付けておきたいものですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『ビジネスですぐ使える 語彙力が身につく本』(三笠書房) :