「内弁慶」は「身内に対しては強気で威圧的なのに、外ではしおらしい人」を例えた表現で、老若男女に使える言葉です。悪口とは言い切れませんが、ほめ言葉でもありません。今回は「内弁慶」を使ったことわざや、対義語ともいえる「外弁慶」についても解説します。あなたの身近にいる「内弁慶」な人をイメージしながら、彼らの特徴を考えてみるのもおもしろいかもしれませんよ。
【目次】
【「内弁慶」を理解するための「基礎知識」】
■「意味」
小学館『デジタル大辞泉』によると「内弁慶」とは「家の中では威張り散らすが、外では意気地のないこと。また、そのさまやそういう人」という意味の言葉です。「陰(かげ)弁慶」ともいいます。
■「語源」は?
「内弁慶」の「弁慶」は平安時代末期から鎌倉時代初期に活躍した僧兵、武蔵坊弁慶のこと。京都の五条大橋で若き日の源義経牛若丸と出会ったと伝えられ、歌舞伎の定番『勧進帳』にも描かれた人物です。「弁慶ほどの豪傑でも、痛がって泣く急所」という意で、「向こう脛(ずね)」は「弁慶の泣き所」と呼ばれます。このように、豪傑で知られた「弁慶」に例え、「内=家」では威勢のよい人を「内弁慶」と呼ぶようになりました。例えば、家では言いたいことを言ってわがままなのに学校など外に出ると引っ込み思案になってしまう子どもや、妻や子どもには威張り散らすくせに、仕事では必要以上にペコペコ頭を下げている人などが「内弁慶」の典型。年齢性別に関係なく使うことができる言葉です。
■英語で言うと?
「家の中では威張り散らすが、外では意気地がない」という二面性をひと言で表す英単語はありません。「彼は内弁慶だ」を「家ではボスのようだが、ほかでは臆病だ」「家ではライオンのようだが、外ではネズミのようだ」といった文章で表現します。
・He is bossy at home but timid elsewhere.
・He is a lion at home and a mouse outside.
【「内弁慶」の「使い方」がわかる「例文」5選】
■1:「一般的に、一人っ子には内弁慶が多い傾向があるといわれている」
■2:「幼稚園の先生に指摘されて初めて、自分の子どもが内弁慶であることを知った」
■3:「典型的な内弁慶の部長は、プレゼンにはまったく向いていない」
■4:「内弁慶の夫はストレスのせいなのか、家ではますます饒舌になった」
■5:「偏見かもしれないが、内弁慶と呼ばれる人は意気地なしが多い気がする」
【ことわざ「内弁慶の外地蔵」とは?】
温和な人の比喩として「地蔵」という言葉が使われた「内弁慶の外地蔵」は、「家の中では威張り散らすが、外では気が小さくおとなしいことや、そういう人」という意味のことわざです。「内弁慶外味噌」とも言います。この場合の「味噌」は弱者をあざけっていう語で、「泣き味噌(すぐ泣く人)」「みそっかす(一人前に扱ってもらえない子ども」などと使われました。
【「類語」「言い換え」表現】
■「内で蛤(はまぐり)、外では蜆(しじみ)」
「家の中では態度が大きいが、外では小さくなっている」の意で、「内弁慶の外地蔵」と同じ意味です。
■亭主関白(ていしゅかんぱく)
「関白」は昔の権力者の称号で、天皇を補佐した重職のことで、「亭主関白」は「家庭内で夫が主導権を握っていること、状態」をいいます。ただし「亭主関白」には「外では引っ込み思案になる」といった二面性を示すニュアンスはありません。
■引っ込み思案 ■内気 ■気弱
「消極的で、物事や人間に対して働きかける力が弱い様子やそういう性質」という意味では、「引っ込み思案」や「内気」「気弱」が「内弁慶」の「類語」となりますが、「身内には強気な態度を取る」といった二面性を示すニュアンスはありません。
【「外弁慶」はほめ言葉?】
■意味
「外弁慶」は「内弁慶」の逆で、「家では気弱で意気地がないが、外では威勢がいい人」を指します。「彼は厳しい家庭で育ったためか、外弁慶だ」などと使いますが、辞書には記載されていない俗語です。「内弁慶」同様、悪口とは言えませんが、ほめ言葉でもありませんね。
■類語
・居丈高 ・外柔内剛
「居丈高」は「人に対して威圧的な態度をとるさま」という意味ですが、内外(ウチソト)の区別はありません。「外柔内剛」は外見はおとなしそうなのに、内面は医師が強くしっかりしていることを表す四字熟語です。こちらにもにも内外の区別はありません。
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「内弁慶な人」は外面のよい人が多いようです。ビジネスシーンではうまく立ち回っているのかもしれませんが、家族は大変そうですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)/『新選漢和辞典Web版』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :