2月17日より公開されたアニメ映画『BLUE GIANT』で主役の宮本 大(みやもと・だい)の声優を務める俳優・山田裕貴さん。発売中のPrecious3月号では、自身とキャラクターとを重ねて、役者としてのこだわりやモットーについてお話いただいています。本記事では本誌に載せきれなかった未公開インタビューを未公開カットと共にご紹介します。

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山田裕貴さん
俳優
(やまだ・ゆうき)1990年、愛知県出身。2011年『海賊戦隊ゴーカイジャー』で俳優デビュー。近年は、連続テレビ小説『ちむどんどん』、映画『東京リベンジャーズ』『夜、鳥たちが啼く』など話題作へ続々出演。『オールナイトニッポンX』月曜パーソナリティも担当。2023年大河ドラマ『どうする家康』、フジテレビ『女神の教室〜リーガル青春白書〜』に出演中。2月17日(金)公開の主演アニメーション映画『BLUE GIANT』(東宝)は、世界的ピアニスト・上原ひろみ氏が音楽を担当することでも注目を集めている。

――『BLUE GIANT』という作品について、原作漫画あるいは台本を初めて読んだときの印象を教えてください。

まず、主人公の宮本 大(みやもとだい)というキャラクターがとにかく光り輝いて見えました。こんなにも自分を信じている人はこの世にいないんじゃないかと思うくらい、ブレないですよね。周りからどう言われるかとか、マジョリティーはこうだとかは関係ない。自分を信じられるって本当の強さだと思います。かといって、挫折を知らないかと言われるとそういう訳でもない。原作漫画で言うと、初めての客前でのセッションでお客さんにうるさいと怒鳴られて帰らされたり、なんてエピソードもあります。

『BLUE GIANT』って、ふとした場面での描写がオシャレなんです。たとえばこのお客さんに怒鳴られたあと、普通だととぼとぼ歩きながら泣く、なんてシーンが頭に浮かぶ。だけど、歩いて、歩いて、歩いて…という描写があって、公園のベンチにふと座って、大の背中が映し出されて、そこで初めて、「なんてことねえべ」、とだけ呟く。読者の“こういうときはこんな反応があるだろう、こうするだろうという”想像の逆を行く感じ、その裏切りがオシャレだなって思うんですよ。 

俳優の山田裕貴さん
想像の逆を行く感じがおしゃれな作品です(山田裕貴さん)

ストーリーをメロディに例えるとしたら、え、ここでその音を吹くの?っていう感じに近い。この作品自体が“ジャズ”のようなものなんですよね。ページから音が聞こえてくるようだと言われているのはそういうところにも理由があるんじゃないかと思います。

そもそも僕は原作漫画のファンなんです。読者の立場で言わせてもらうと、この作品を実写にするのは絶対無理だと思っていたんです。この音を体現できる役者さんは、いないんじゃないかと。マネージャーから『BLUE GIANT』のアニメ映画の仕事が来たよ、って聞いたときに、まず思ったのが、「そうだその手があった!」でした(笑)。そうか、この漫画を映像化するにはそういう手があったんだ、と。
え、本当に僕に?というのは、その後に遅れてやってきましたね(笑)。プロの声優の方にではなく、僕に?って。自分が主人公の“大”だと聞いて、さらに大丈夫なんだろうかってなりました(笑)。とはいえ、やるからには全力で取り組みたい。大というキャラクターを僕という音で表現できるよう、一音一句考え抜きました。

――ご自身と「大」との共通点はありますか?

大は、サックスがほぼ吹けないころから、世界一のジャズプレーヤーになる!と言い続けているキャラクターなんですが、僕も上京してすぐの頃にバイトしていた飲食店では、ネームプレートに、「俳優王になる」って書いていたんです(笑)。成し遂げたいことはまず口にする。そして曲げない、そういうところは近いのかな?と思います。

俳優の山田裕貴さん
成し遂げたいことはまず口にする、そして曲げない(山田裕貴さん)

――今回、主要キャラクターを同世代でもある間宮祥太朗さん、岡山天音さんと3人で演じていらっしゃいますが、ストーリーを構築していく中で、お三方での”セッション”などありましたか?

3人でアフレコをする初めてのシーンで、マイク前お互いに顔を見合わせたら、みんな不安そうな顔をしていたんです(笑)。きっと僕も同じような顔だったと思います。実写での演技の場ではあまり見ない表情でしたね。プロの声優ではない僕たちが役を務めることに、みんな少なからずプレッシャーを感じていたと思うし、反面僕たちがやる意味を出せたらと、そんな意気込みもあったと思います。作品になぞらえて表現すると、僕らが生み出せる一瞬の炎――赤い火ではなくて青い炎を感じてもらえると良いなと思って全員で挑みました。

俳優の山田裕貴さん
僕らが生み出せる一瞬の炎――赤い火ではなくて青い炎を感じてもらえると良い。(山田裕貴さん)

――最後に、改めてこの映画の見どころをご紹介ください!

僕が演じる役もそうですが、間宮くんが演じる雪祈(ゆきのり)も、天音くんが演じる玉田も、みんな壁を乗り越えてきていて、そういうそれぞれの苦しみや努力のうえで迎える、ラストの3人のシーンがとても心に残ります。演じながら、自然と泣けた自分がいたんです。僕、実は芝居で泣くのが苦手なんですが、台本読んだときも、アフレコしているときも、なんならラッシュを見たときも自然と涙が出ていましたね。本当に良い作品だと思います。

演じている僕自身としてお伝えしたいのは、ぜひ、劇場まで聞きに来て欲しいということです。原作漫画を読んだことがまだなくても、ジャズを知らなくても、必ず感動できる作品です。人間同士のつながりが丁寧に描かれていて、心の中に絶対に持っていたほうがいい気持ちとか、いまの自分は本当に頑張れているのかと振り返りたくなる感動とか、全てが詰まっていると思います。この作品がテレビアニメではなく『映画』として世に出て行くことは、映画館という最高の環境で「音楽」を聞いて欲しいという、作り手側の強いメッセージを感じる作品です。だから、本当に聞きにきてほしい。絶対に後悔はさせません!

俳優の山田裕貴さん
ぜひ、劇場まで聞きに来て欲しい(山田裕貴さん)

『BLUE GIANT』2023年2月17日(金)全国公開!

(C)2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会  (C)2013 石塚真一/小学館
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原作:石塚真一『BLUE GIANT』(小学館「ビッグコミック」連載)
監督:立川譲 脚本:NUMBER 8 音楽:上原ひろみ
声の出演/演奏:宮本大 山田裕貴/馬場智章(サックス)
沢辺雪祈 間宮祥太朗/上原ひろみ(ピアノ)
玉田俊二 岡山天音/石若駿(ドラム)
アニメーション制作:NUT
製作:映画『BLUE GIANT』製作委員会
配給:東宝映像事業部

2013年に石塚真一が『ビッグコミック』(小学館)で連載を開始した漫画『BLUE GIANT』(シリーズ累計:920万部超)。その圧倒的表現力は多くの読者を魅了し、“漫画から音が聞こえてくる”とも評され、現実のジャズシーンにも影響を与えている。
その『BLUE GIANT』が、「最大の音量、最高の音質で、本物のジャズを届けたい」という想いから、映画化される。監督は、『モブサイコ100』シリーズや劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』(18)で注目の立川譲。脚本は、連載開始前からの担当編集者で、現在はstory directorとして作品に名を連ねるNUMBER 8。アニメーション制作は『幼女戦記』(17)などで注目のスタジオ・NUTが手掛ける。
そして主人公・宮本大の声には、原作を読みひたむきに夢を追う大の姿に自身もシンパシーを感じていたという山田裕貴。大が東京で出会うピアニスト・沢辺雪祈に間宮祥太朗、そして大に感化されドラムを始める玉田俊二を岡山天音と、数々の話題作に出演し、目覚ましい活躍をみせる豪華俳優陣がキャラクターに命を吹き込む。
また、“音”の面でも最高のスタッフが集結。音楽は、世界的ピアニストの上原ひろみが担当。上原は、主人公たちのオリジナル楽曲の書き下ろしをはじめ、劇中曲含めた作品全体の音楽も制作する。また、主人公たちのバンド・JASSの演奏を支えるアーティスト陣も豪華なメンバーが揃った。サックス(宮本大)は、国内外のトップアーティストが集まるオーディションを経て選ばれた馬場智章。ピアノ(沢辺雪祈)は、音楽の上原ひろみ自身が演奏し、ドラム(玉田俊二)の演奏はmillennium parade等、多数のアーティストから支持を集める石若駿が担当。最高のジャズトリオの演奏が作品を彩る。

(C)2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会  (C)2013 石塚真一/小学館

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PHOTO :
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WRITING :
佐藤久美子