「蛙化現象」という言葉をご存じですか? 「蛙化現象」とは「好きな人と両思いになった途端に、相手のことが気持ち悪くなってしまう現象」のことです。それにしても、なぜ「蛙」なのでしょうね。今回はその理由や「蛙化現象」の症状についてご説明します。

【目次】

あなた自身が「蛙化」しないとは限りません。
あなた自身が「蛙化」しないとは限りません。

【「蛙化現象」を読み解くための「基礎知識」】

「蛙化現象」は「かえるかげんしょう」と読みます。「かえるか」という読みに違和感のある言葉ですし、ネット用語と勘違いする人もいるかもしれませんが、そうではありません。心理学の視点から「蛙化現象」を分析する論文も数多くあるそうです。

■意味は?

「蛙化現象」とは、片思いのときはすごく好きだったのに、両思いになった途端、相手に興味を失ったり、気持ち悪く感じてしまったりする現象や心理状態を指す言葉です。つまり「蛙化」してしまうのは自分が好きだった人。単に嫌いになるだけでなく、生理的な嫌悪感を抱いてしまうようになることもあるようです。簡単に言えば、「好きだった相手に好意をもたれるとイヤになる」という感覚です。

■由来は?

「蛙化現象」はグリム童話の『カエルの王様』が名前の由来とされています。内容を忘れてしまった方のために、あらすじをご紹介しましょう。

「ある国の王女が、なくしてしまった金の毬を探し出してもらう代わりに、カエルと寝食をともにする約束をしました。王女はカエルを寝室には入れましたが、やはりどうにも気持ちが悪く、カエルを壁に叩きつけてしまったのです。 もがき苦しむ姿を憐れに思った王女がカエルを抱き上げると、カエルにかけられていた魔法が解け、カエルは美しい王子に姿を変えます。恋に落ちた王女と王子は結ばれ、いつまでも幸せに暮らしました」

グリム童話のストーリーは、カエルが王子に姿を変え、ハッピーエンドを迎える「王子化現象」ですが、「蛙化現象」はその逆。王子様のように見えていた相手が、(一般的には)生理的に受け入れられない醜い蛙に変身してしまう(ように思える)現象です。同じ対象への気持ちが真逆に変化するところに着目し、「蛙化現象」という名前が付けられたといわれています。

典型的には恋愛経験の乏しい、思春期の女子にありがちな傾向とされていますが、実は大人の女性も例外ではありません。恋愛に対して強いこだわりや高い理想を抱いている人は、「蛙化現象」に陥りやすいといわれています。付き合う前に自分が思い描いていたドラマや小説のような恋愛のイメージと現実のギャップに幻滅してしまうのです。あるいは、「両思いになるまでの過程」を重視するタイプも、猛烈にアプローチして望みが達成されてしまうと、一気に冷めてしまう傾向にあるようです。


【「蛙化現象」の「具体的」な症状は?】

『カエルの王様』のストーリーを思い出してみてください。カエルとベッドを共にする気持ち悪さに耐えきれなかった王女は、カエルを壁に叩きつけてしまいました。これはかなり強い拒絶反応ですよね。 このように、「蛙化現象」は単に「相手を好きでなくなる」という程度の反応にとどまらず、相手に生理的な嫌悪を抱き、気持ち悪さを感じてしまうことが多々あります。

■好きだった相手を「気持ち悪い」と思ってしまう

「蛙化現象」の代表的な症例です。それまで好きだったはずの相手に嫌悪感を抱き、同じ空気を吸いたくない、一緒にいるとイライラするなど、不快感が表れます。

■スキンシップが取れない

相手に対する不快感が生理的な嫌悪感にまで達すると、「触られると寒気がする」といった事態に発展してしまいます。

■自己嫌悪感に陥ってしまう

付き合いだした途端に相手をイヤになってしまったとき、相手に対して「申し訳ない」という気持ちから、自己嫌悪に陥るケースも少なくなりません。そしてその罪悪感から、恋愛そのものに臆病になってしまう人もいるようです。


【「蛙化現象」の「類語」「言い換え」表現】

■幻滅

「幻滅」とは恋愛に限らず、「期待や憧れで空想し美化していたことが現実とは異なることを知り、がっかりすること」です。

■リスロマンティック

「リスロマンティック[Lithromantic]」とはあまり馴染みのない言葉ですね。誰かに恋愛感情はもつけれど、その人から恋愛感情をもたれることは望まないセクシュアリティを指します。なかには、恋愛という概念そのものに嫌悪感をもつ人もいます。「蛙化現象」には、「好きな人に振り向いてほしい」など、恋愛成就の願望がある(あった)ものですが、「リスロマンティック」は相手から恋愛感情を向けられること自体を望まないことが、大きな違いです。

■リスセクシュアル

「リスロマンティック」は恋愛指向を指す言葉ですが、「リスセクシャル」は性的指向を指します。つまり、他者に対して性的な感情を抱くことはありますが、同じ感情を自分に向けられると嫌悪感を抱くセクシャリティのことです。好きな人からであろうと、性的な目で見られることに不快感を感じます。「リスロマンティック」であり、なおかつ「リスセクシャル」、つまり人から恋愛感情を向けられるのも性的な目で見られるのも、どちらもイヤという人もいます。

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ほとんどのシンデレラストーリーが「そしてふたりは幸せに暮らしました」で幕引きとなりますが、現実は厳しいものですよね。せっかく両想いになれたのに…という状況で、自分、あるいは相手が「蛙化現象」に陥ることもあるでしょう。それはとても辛いことですが、「蛙化現象」という言葉を知っているだけでも「そういうこともあるのだ」と俯瞰で見ることができ、多少なりとも前向きになれるのではないでしょうか。いつかネタ元である『カエルの王様』の王女さまのようなパートナーに出会えるといいですね。

この記事の執筆者
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