今回取り上げる「足元」は、誤用もよく見かける単語です。「足元をすくわれる」というフレーズがその最たるものでしょう。ここで「え?」と思った人は要注意! 正しい使い方をしっかり確認してくださいね。

【目次】

「足元」は見られたくないものですね。
「足元」は見られたくないものですね。

「足元」とは?「読み方」と「意味」 】

■読み方

「足元」と書いて「あしもと」と読みます。

■意味

「あしもと」はさまざまな意味をもつ単語です。使用例とともに見てみましょう。

(1)足が地についている所やその周り。例)「足元にご注意ください」

(2)足の下部。例)「足元が冷える」「足元が泥はねで汚れた」

(3)ある人の、ごく身近な所。身辺。例)「まず足元を固めて仕事にかかる」

(4)足の運び方。歩きぶり。足どり。例)「足元がふらつく」「足元がおぼつかない」

(5)苦しい立場。差し迫った状況。弱点。弱み。例)「足元につけ込む」「足元を見る」

(6)物事を行うためのよりどころ。立脚地。足掛かり。足場。例)「事業の足元を固める」

(7)家屋の地面に近い部分。縁の下や土台など。例)「この家は足元がしっかりしているから安心だ」

(8)近いこと。直近。最近。例)「足元金利の安定」「足元の企業業績は好調」

慣用句としてなじみのある使用例もあるのではないでしょうか。また、相手が優れていて敵わない、比べものにならないことを「足元にも及ばない」、身に危険が迫っていることを「足元に火が付く」ともいいますね。

■英語では?

「足元」の英語は[foot][step][leg]など。工事現場などでよく見る「足元に注意ください」は[Please watch your step]、「足元を見る」の一般的な言い方は[take unfair advantage of~]となります。


「足元」と「足下」「足許」の使い分け】

「あしもと」と読む単語には、「足元」のほかに「足下」や「足許」などもあります。「足下」は足が地面や床についている、まさにその場所のこと。「足許」は「足元」より広範囲を指します。「足下 < 足元 < 足許」といったイメージで覚えておくとわかりやすいでしょうか。上記で紹介した「足元」の例文の(1)~(4)は、足下でも足許でもOKとされています。ただし、(5)~(8)は「足元」を使うのが正解。ちなみに「足下」を「そっか」と読む場合は「あなたのそば」という意味で、手紙の宛名の左下に書き添えて敬意を表す語「脇付(わきづけ)」としても用いられます。


ビジネスシーンでの「足元」の使い方がわかる「例文」4選

■1:「本日はお足元の悪いなかお越しくださいまして、誠にありがとうございます」

■2:「先輩の足元にも及びませんが、日々精進を重ねて少しでお役に立てるよう努めます」

■3:「新規事業への参入より、新天地で足元(足下)を固めることが先決だ」

■4:「取り引き先との交渉は、足元(足下)を見られないよう強気でいこう」

3と4は、「足下」を使ってもOKな例文です。なお、相手の隙をついて失敗させることを「足元をすくう」と表すのは間違い! この場合は「足をすくう」が正解です。間違えやすいのでしっかり覚えておきましょう。


【「足元」の「類語」「言い換え」】

「足元」を「弱点」と捉えた際の類語には「痛いところ」があげられます。「足元を見る」「足元につけ込む」は「痛いところをつく」といいますね。また、自分の置かれている状況を表して「足元を固める」などと表現しますが、この場合には「足元」を「土台」や「基礎」「立場」などに言い換えても。

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「足元にも及ばない」「足元を見る」「足元につけ込む」など、慣用句としてもビジネス使用されている「足元」について見てきました。金融業界では現在の状況や目前の状態を「足元では」と表すことがあり、これが業界用語として広まったともいわれています。今日もひとつ、“大人の語彙力”が増えましたね!

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人の語彙力大全』(KADOKAWA)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社) :