「まさかと思ってガン見した」のように使われる「ガン見」は、「凝視」を意味する若者言葉です。何かに驚いてじっと見つめてしまったり、無意識に「推し」の姿を目で追ってしまったり…。今回はさまざまなシーンで使われる「ガン見」の意味を解説します。
【目次】
【「ガン見」を正しく理解するための「基礎知識」】
■意味
『現代用語の基礎知識』に「ガン見」が初めて掲載されたのは2019年。「顔見」と書き、1990年代に登場した言葉で、「凝視すること。ガンガン見る」と説明されています。現代でも、正面からまともに見据えること、まじまじと見ることといった意味で使われ、今や「ガン見」はほんの一時の流行言葉ではなく、「フツーの日常語」として定着した、若者言葉のひとつといえます。
「ガン○○」という若者言葉は、「ガン見」のほか、「ガン無視」「ガンギレ」「ガン泣き」などがあります。「ガン無視」は「徹底的に無視すること」で、「ガンギレ」は「かなり(すごく)キレていること」、「ガン泣き」は「号泣」という意味です。そこから考察すると、どうやら「ガン」は言葉の頭について「程度が甚だしい」ニュアンスを言葉に添える役割があるということがわかります。実は「ストーブをがんがん燃やす」のように、元々「がんがん」には、「勢いが盛んで激しい様子」という意味があるのです。
■方言なの?
「ガン見」は方言ではなく、若者の間で自然発生した言葉です。
■英語というと?
「凝視」に相当する英単語は[a stare]や[a gaze]です。[stare]には、人に対して不躾(ぶしつけ)な感じのニュアンスが含まれています。
・The man gazed [stared] at the sea.(男は海をじっと見ていた)
・He gazed [stared] into a person's face [eyes](彼は人の顔[目]を凝視(ガン見)した)
【「ガン見」の「使い方」がわかる「例文」4選】
では実際に「ガン見」がどのように使われているのか見てみましょう。何かに驚いて思わず見入ってしまったり、自分が興味や好意を抱く対象を無意識に見つめてしまったりする状態を「ガン見」と表現しているようです。因縁をつけるという意味で「ガンを飛ばす」という言葉がありますが、例文を見れば、「ガン見」には特に悪意は含まれていないことが多いとわかります。
■1:「あの人の服装ヤバすぎて思わずガン見しちゃったよ」
■2:「Aさんのこと好きなのはわかるけど、そんなにガン見しないほうがいいんじゃない?」
■3:「他人のことガン見するのは失礼でしょ。親に習わなかった?」
■4:「階段から落ちそうになって叫んだら、ガン見されちゃったよ」
【「ガン見」の「類語」「言い換え」「対義語」表現】
■類語
・凝視…目をこらしてじっと見つめること。
・熟視…じっと見つめること。凝視。
■言い換え
・まじまじと見る
・じっと見つめる
・視線が釘付けになる
・じろじろ見る
■対義語
・チラ見
・一瞥(いちべつ)
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街で初々しいスーツ姿を見かける機会が多い4月。2023年の今、2000年生まれも続々と社会人となっています。若い世代におもねるつもりはなくても、彼らが便利に使っている言葉については、なんとなくニュアンスを理解しておきたいもの。「おもしろい!」と思ったら使ってみるもよし、嫌なら使わなければいいのです。とはいえ、ビジネスシーンでの「ガン見」使用はNGです。不用意に使ってしまったら、「ガン見」されてしまうかもしれませんよ!
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:/『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『現代用語の基礎知識』(自由国民社) :