身長156cmのインテリアエディターDが、おすすめのアイテムを実際に体験しながらレポートする本連載。前回に続き、世界中で再評価されているジョージ・ナカシマの名作家具をピックアップします。

今回ご紹介するのは、実際に座り比べてみて最もかけ心地のよかった『コノイドチェア』。アメリカ・ニューホープにある、ジョージ・ナカシマ設計「コノイドスタジオ」でも使われていたダイニングチェアで、畳ずりのソリ型の二本脚からはり出した座面がダイナミック。建築家でもあったナカシマの魅力を味わえる名作です。

「家具は小さな建築」と称したナカシマらしい構造美が魅力!

ジョージ・ナカシマのコノイドチェア
【ブランド】桜製作所 【商品名】コノイドチェア【価格】¥300,000程度〜(注文製作により要問い合わせ) 【サイズ】幅535×奥行き570×高さ900、座面高440 (mm) 【材質】ブラックウォールナット ホワイトアッシュ 写真/(C)H・AMEMIYA

ソリ型の二本脚から、ヌッと突き出した座面がなんともダイナミック! 緻密に計算された力学と形態が無駄のない緊張感を醸し出し、木質家具特有のほっこりしたイメージとは一線を画しています。

褐色のブラックウォールナット材に白木のホワイトアッシュ材の背棒の対比が美しく、経年することでウォールナットはより明るく、アッシュ材は飴色になるため杢目は異なりながらも一体感のある様に変化していきます。

堅牢な見た目からは想像もつかない優しい座り心地!

直線を基調とした骨太なシルエットの『コノイドチェア』。彫刻作品のようにインパクトのある造形は、空間の中で威風堂々として映えます。

お恥ずかしいのですが、正直実際に座る前はオブジェとして捉えていました。座ってみて大反省。力学的に緻密に計算された背板の角度と人の形に沿って座面を彫り込んだ「坐繰り(ざぐり)」の効果で、どこにも違和感のないソフトなかけ心地が味わえます。

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ほかの椅子がお目当てだったのに『コノイドチェア』のかけ心地がずば抜けてよくて動けない!

奥まで腰かけて背中をもたれると、笠木(背もたれの上部の横木)の形状の当たりが心地よく、自然と骨盤が立ち背筋が伸びます。楽な着座姿勢が美しい『コノイドチェア』。かつて着座する前と後でここまで印象が変った椅子があったでしょうか?

ジョージ・ナカシマのコノイドチェア
上から見るとバナナのようで、手で引きやすいように後方は面取りされている笠木の形状
ジョージ・ナカシマのコノイドチェア
左/斜めに支えている二本脚もシャープな印象 右/寺社建築に見られる釘を用いない「木組」の工法が用いられています

ジョージ・ナカシマから厚い信頼を寄せられた「桜製作所」

サクラ製作所(現・桜製作所)は、モダンオリジナル家具の製造をする会社として1948年に高松顕(初代社長)と建築設計技師の永見眞一の二人が香川県高松市で創業しました。

ジョージ・ナカシマの精神を受け継ぎ、その家具を作り続けているのは、日本の「桜製作所」と、ジョージ・ナカシマの娘であるミラ・ナカシマが守り続ける米国ペンシルヴェニア州ニューホープのアトリエの2か所のみです。

ナカシマの家具には、職人の「手の感覚」によって木の特徴を最大限に生かす「技」が必要
ナカシマの家具には、職人の「手の感覚」によって木の特徴を最大限に生かす「技」が必要

今回はジョージ・ナカシマの名作椅子から『コノイドチェア』をご紹介しました。

木と対話して家具製作をしていたナカシマが信頼を寄せた日本の職人の卓越した技術や、世界中で再評価される唯一無二のデザインの魅力が伝わったでしょうか?

ぜひ、ショールームで着座して背が伸びる心地よさも味わってみてください。

問い合わせ先

  • 桜製作所 銀座店 
    営業時間/11:00~18:00
    休業日/お盆・年末年始
    TEL:03-3547-8118
  • 住所/東京都中央区銀座3-10-7ヒューリック銀座三丁目ビル1F

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM