心豊かなフレグランスライフのために知っておきたい【キーワードで読み解く香りの世界】
いつの時代も人々の身近にあり続ける香り。その理由は、まとう人の内面に響き、記憶や情緒に働きかける本質的な魅力にあります。旬のキーワードで奥深い世界を解説しましょう。
Keyword・・・「タイムレス」の背景
時代を超えて輝き続ける名香『シャネル N° 5』。その背景にあるのが、「特別な栽培」への思いです。舞台となるのは、南フランスのグラース。『N° 5』に欠かせないグランディフローラムという特別な品種のジャスミンは、ミュル家が守り続ける伝統的な栽培方法と機械ではなしえない緻密な手摘みで昔も今も収穫されています。
1921年に誕生したメゾン初の香水。80種類以上の天然香料とアルデヒドを組み合わせた複雑で豊かなフローラルブーケに欠かせないのが、ミュル家が手掛けるグラース産ジャスミン。メゾンと調香師、ミュル家との絆は最初のフォーミュラがつくられたときから連綿と続き、1987年にはパートナーシップを締結。香水30mlボトル一本には、約1000輪ものグラースのジャスミンと12輪のグラースのローズ ドゥ メが使われている。
香水発祥の地といわれるグラースのなかでも最も大規模な花の栽培者であるミュル家。曽祖父の代から土地を守り、畑の土から手入れ、丹念な手摘みによる収穫までを厳格に管理し、高品質なジャスミンを生産。メゾン歴代の調香師と厚い信頼関係を築いている。
本来なら急速な土地開発と共に失われるレガシーを守ったのが、グラースに根差す自らの歴史を重んじながら躍進するメゾンの取り組みです。
4代目専属調香師オリヴィエ ポルジュは、「私たち調香師はシャネルのフォーミュラの番人となり、あらゆる手を尽くして、シャネルの香りの原料を確実に管理しなくてはならないのです」と語ります。
栽培者と調香師に共通するものづくりへの矜持と情熱があればこそ、『N° 5』はタイムレスな名香として存在し続けるのです。
Keyword・・・香りの記憶
初めて触れた香りなのになぜか懐かしく感じたり、不思議なほど強く惹かれたり…そんな経験はありませんか?
香りを通して当時の記憶や感情が蘇ることを、「プルースト効果」といいます。フランスの作家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』で描かれる、マドレーヌの香りから幼少期の思い出が蘇るシーンに由来しています。
その仕組みを、日本フレグランス協会の吉岡さんは「五感のなかで嗅覚だけが、記憶や情動を司る大脳辺縁系にダイレクトにつながっています。香水を通して特定の人を思い出したりするのはそのためです」と語ります。
それでは、相手の好みの香りを知っていれば好印象を残したりすることもできるのでしょうか? 「肌の香りとなじんで唯一無二の存在感を放つので、そんなに単純ではないかもしれませんが…(笑)。ただ、脳を活性化することは確かです」。いきいきと美しくあるために、自分にとっての「いい香り!」を見つけましょう。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
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問い合わせ先
- PHOTO :
- 撮影/石倉和夫(人物)、小池紀行(CASK/静物)
- STYLIST :
- 小倉真希
- HAIR MAKE :
- 三澤公幸(Perle)
- MODEL :
- 大塚まゆか
- EDIT&WRITING :
- 岡本治子、五十嵐享子(Precious)
- 撮影協力 :
- 日本フレグランス協会、ブルーベル・ジャパン、NOSE SHOP
- 参考文献 :
- 『「香り」の科学』平山令明著(講談社)、 『ボケたくなければバラの香りをかぎなさい~脳を刺激する生活習慣のススメ』天野惠市著(ワニブックス)