【目次】

「匂わせ」とは?「意味」

ネット上に横行するさまざまな「匂わせ」、言葉としての意味とその使われ方について正しく理解する…というのが今回のお題です。

「匂う」とはもともと「匂わせる」や「匂わす」という言葉で、「(1)香りを漂わせる、香らせる」と「(2)気配、雰囲気、特徴などを漂わせる」という意味があります。SNS投稿に使われる今どきの「匂わせ」は(2)の意味で使われています。

(2)の意味の「匂わせ」を少し解説しましょう。

例えば、恋愛に関する投稿においての「匂わせ」は、「誰かと交際していることを匂わせる」ということ。交際を公言していないものの(できない事情あり?)、付き合っていることをそれとなく知らせたい、実は公表して自慢したいなどの真理が働く際に、交際相手が好きなものや持ち物などを自分の投稿写真や動画に写し込ませる…なんていうのは初級中の初級。芸能人がこれをやると一瞬で炎上しますね。

かつて韓国の男性アイドル歌手が投稿した「自宅めし画像」のスプーンに女性が写り込んでいて密会が発覚した、なんてこともありました。これが「匂わせ」だったのか、それとも本当に「うっかり」だったのかは謎のままですが、話題になったことは間違いありません。

また、プライベートでも仕事でも、マウントを取りたい人はよくこの「匂わせ」を使います。誰に会ったとかどこへ行ったとか、今日はこれを食べた、あれを買った、こんなこと言われちゃった…。たとえ本人にその気はなくても、うがった見方をすれば、これらもすべて「匂わせ」。つまり、その投稿を見た人が「羨ましい」と思うであろうという状況をSNSで発信すれば、それはもう「匂わせ」認定されても致し方ない、というのが現状です。

そういう人を「匂わせ女子」と言ったり、「匂わせ投稿」や「匂わせツイート」「匂わせSNS」というように、「匂わせ○○」という使い方や、「あの子、また匂わせてる…」「彼女の匂わせにうんざり」というように使います。


「匂わせ写真」「匂わせストーリー」など…「匂わせ」の例 】

もう少し具体的に解説しましょう。

■匂わせ画像(写真)

最も手軽でわかりやすい「匂わせ」は、この「匂わせ画像(写真)」です。「付き合っている人はいない」と公言しながら、交際相手の腕や手、うしろ姿をさりげなく(?)映り込ませるなど、「誰かと一緒にいる」という“気配”を感じさせる構図で撮影したものをSNSに投稿。疑惑の相手と同じものを持っていたり、同じ時刻に同じ場所にいたことがわかるような写真を投稿したりも…。画像は簡単に加工もできるので、そのようなシーンをつくることも可能です。

「〇〇ちゃんとカフェでお茶。楽しい!」という言葉とともに投稿された飲み物の写真の奥にぼんやりと、でも確実に高級ブランドのバッグが映り込んでいる、「写真撮るのヘタクソ(笑)」といった自虐コメント付きのカップを手に持った写真には、高級ブランドのそれとわかるデザインリングをつけている手元がはっきりと映っている…etc. 「匂わせ画像」は恋愛に関わらず、さまざまなシーンで使われます。

■匂わせストーリー

Instagramの「ストーリーズ」という機能を使って匂わせる行為。この「ストーリーズ」とは、投稿した画像や動画が24時間で消えてしまうところがミソです。同じ時間を共有できる、一瞬で繋がれるなどで、特にSNSネイティブのZ世代に支持されています。「ストーリーズ」を使用した「匂わせ」はチラ見せと同じ効果というわけ。興味をそそる映像のシェア(閲覧)が24時間限定だということでより刺激的に伝わり、拡散にも拍車がかかるので、「匂わせ」たい人にとっては効果的なのです。


【「匂わせ女」の「あるある」とは?】

「匂わせ女」や「匂わせ女子」といわれる行動例を挙げてみます。「匂わせなんて、他人事です」と思っている方も、無意識にやっていることがあるかも…⁉

■高級レストランや人気カフェなどでのおしゃれな写真や動画を頻繁に投稿する

■いかにも自撮りではない、「誰が撮ってるの?彼氏?」と思われる写真や動画を投稿する

■投稿映像に男性の手や背中などが写り込んでいる

■メンズサイズの服を着て「#おさがり」「#お気に入りゲット」などのハッシュタグをつけて投稿する

■ハッシュタグに「#大好き」「#いつもありがとう」「#相棒」「#趣味倍増」など意味深なワードを用いる

■明らかにふたり分の手料理を投稿する

■寝顔を投稿する


【「匂わせ」の「心理」とは?】

「匂わせ」をする人の心理の代表格が「承認欲求」です。自分のアカウントをフォローしている人に幸せアピールをして「いいね」を獲得することで承認欲求を満たしているのでしょう。「彼がいる」ことでもらう「いいね」より、「彼がいるとは公言していないけれど、私は今ラブラブ~」でもらう「いいね」のほうがその人にとって価値が高い、というわけです。

また、反応を期待しての「匂わせ」という場合もあるでしょう。「あれ、彼氏できた?」「それ入手困難な限定品じゃない?」などのコメントが来ることが嬉しいのです。

こうした匂わせ投稿をする人は得てして敬遠されます。羨ましいという心理が働いて妬まれることもありますが、何より「匂わせ女」は「面倒な人」だと思わせてしまうから。幸せ、嬉しい、楽しいなど自然とにじみ出てしまうハッピーオーラは周囲も温かな気持ちにしますが、SNSでのアピール、しかも匂わせ投稿は知人友人をしらけさせ、度を超すと敬遠されて人間関係に悪影響を及ぼしかねません。頻繁な「匂わせ」は、知り合いにうざいと思われ、敬遠されてしまう可能性だってあるのです。


「英語」で言うと?

ほのめかす、暗示するなどの意味をもつ、[hint][intimate][suggest]がよさそうです。

■hint

She hinted that she was going abroad soon.(彼女は近く海外に行きそうなことを匂わせた)

■intimate

He  always intimates that he will be the next manager.(彼はいつも自分が次のマネージャーになるのだと匂わせている)

■suggest

He only suggested it.(彼は匂わせただけだ)

***

「匂わせがうざい」と思われがちなのは認証欲求のほかに、そこに、その人の自慢癖や“マウンティング体質”を感じてしまうからかもしれません。また、特にキャリアアップを目指す人はSNSでの「匂わせ投稿」にご注意を。意図していないつもりでも、「匂わせタイプか」と思われてしまったらマイナスです。「この人と仕事をしたらSNSで情報漏洩されそう」と考える人もいるのです。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『使い方のわかる 類語例解辞典』/小学館 :
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