「二面性」は「物事のふたつの側面」を表す言葉ですが、多くは「相反していたり、矛盾していたりふたつの要素を内包した性格」を指して使われます。「あの人、二面性があるよね」という言葉に若干の棘(トゲ)を感じるのは、「二面」という言葉には「裏と表」という意味があるから。今回のテーマは「二面性」です。意味や使い方はもちろん、反対語や英語表現まで解説します。

【目次】

「ふたおもて(二面)」には「表裏のある心」という意味もあります。
「ふたおもて(二面)」には「表裏のある心」という意味もあります。

【「二面性」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「二面性」は「にめんせい」と読みます。

■意味

まず、「二面性」の「二面」とは何を意味しているのでしょうか? 「二面」とは、文字通り「ある物などのふたつの面」という意味のほかに「物事などのふたつの側面、観点」という意味があります。また「二面」を「ふたおもて」と読む際には「表と裏のふたつの面」「表裏のある心」という意味が加わります。接尾語の「性」は名詞のあとについて、物事の性質・傾向を表します。

従って「二面性」とは、「物事がもつふたつの側面」と「表と裏の心」、つまり「ふたつの相反する、もしくは矛盾する要素を内包した心」を表す言葉です。前者は事物について使われ、後者は人の性格や性質、気持ちについて使われます。

「二面性をもつ人」とは、「表向きとは別の顔をもつ人」「裏のある人」といったネガティブな意味合いで使われることが多く、「多才な」といったニュアンスの褒め言葉としては使わないので、注意しましょう。


【「二面性」の「使い方」がわかる「例文」5選】

■1:「A部長は普段はにこにこと優しいが、怒ると誰よりも怖いという二面性をもっている」

■2:「アイドルの○〇ちゃんは確かに可愛いけれど、実は二面性がありそうで好きになれない」

■3:「“雨に濡れた捨て犬を拾うヤンキー”的な二面性を感じさせるキャラ設定は、マンガやアニメの定番と言っていい」

■4:「Bさんは一見、人当たりがいいのだが、常に損得を考えているような言動に二面性を感じてしまう」

■5:「多くの文学者は反戦の立場をとるが、一方で戦争プロパガンダのための表現も存在する。相反するふたつの役割を果たす文学には二面性があると言える」


【「二面性がある」の「類語」「言い換え」表現】

■「いい意味」での言い換え表現  

「二面性がある」のは、悪いことばかりではありません。“ギャップ萌え”という言葉もあるように、相反(矛盾)する性格を内包する人は、理屈では説明できない不思議な魅力をもっていることも多いようです。

・別の顔をもっている

・とらえどころがない

■「悪い意味」での言い換え表現

「二面性」という言葉が悪い意味でとらえられてしまうのは、「基本の軸足が悪いほう」に傾いている場合でしょう。「いい人そうに見えて実は怖い」というのが典型で、これは相手に不信感を与える原因となりそうです。

・表裏がある

・腹黒い

■類語と言える「四字熟語」

・「八方美人」
「どこから見ても難点のない美人」の意から、「誰に対しても如才なく振る舞うこと。また、その人」という意味になりました。どちらかといえば、非難の気持ちを込めて用いられることが多いですね


【「二面性」の「対義語」は?】

■表裏のない

■純真

「純真」は「邪心がなく清らかなこと」。「表裏がある」「腹黒い」といった意味での「二面性」の対義語と言っていいでしょう。


【「英語」で言うと?】

■double-faced

「両面のある、(織物などが)両面仕上げの」という意味をもつ[double-faced]には「ふた心のある、偽善的な、不誠実な」という意味があります。また、[two-facedness]や[tow-side]も、二面性のある、ふたつの顔をもつ、という意味です。

ちなみに、「相反する感情を同時に持つこと」や「心理的葛藤(かっとう)」を意味する「二面性」の英語表現は[ambivalence]です。[an ambivalence between love and hate]は「愛憎の葛藤」や「可愛さ余って憎さ百倍」と訳すことができます。

例:an ambivalence of idea about modern science(近代科学に対する賛否半ばする考え)

カタカナ語の「アンビバレント」の豆知識もひとつ。特定の人や物に対して、ふたつの相反する感情をもってしまったとき、それを「アンビバレントな感情」と言います。つまり、好きであると同時に嫌いであるのが、典型的なアンビバレントな感情です。

***

「二面性」と混同されやすい言葉に「二重人格」があります。こちらは「ひとりの人間の中にふたつの全く異なる人格が交代して現れること」であり、精神医学的に「解離性同一性障害」とも言います。まったく違う意味をもつ言葉なので、間違えないように注意してくださいね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :