今回のテーマはビジネスシーンではおなじみの、「概算」です。「概算で結構ですので、見積書をいただけますか?」あるいは「こちらは概算となりますが、ご参考までに」などと使われます。「概算」は「ざっくりした計算」という意味で、プライベートでもワリカンの計算などに使われます。とはいえ、正確な意味を聞かれるとなんだかあやふや…。この機会に「概算」に関する知識をアップデートしましょう!

【目次】

少々古風な響きの言葉です。
少々古風な響きの言葉です。

 【「概算」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「概算」は「がいさん」と読みます。

■意味

意味は、「大体の数量または金額を計算すること」です。「概計(がいけい)」とも言います。ビジネスシーンでは、「おおよその見積もり」や「ざっくりした計算」を指して「概算」が使われます。「概算」の「概」は訓読みで「おおむね」。「おおよそ、大体」という意味があり、「概要」「概略」といった熟語に使われています。


【「計算」との違いは?】

ここで言う「計算」とは、「加減乗除など、数式に従って処理し、数値を引き出すこと」。「概算」とは「ざっくり計算すること」ですから、加減乗除によって数値を導き出すのは「計算」と同じです。違いは、たとえば先輩の異動祝いに、送別会をすることになったとします。幹事から「参加費は先輩を除いた4人でワリカンね。1人3,000円のコースだから5人で1万5,000円。ざっくり4,000円の参加費だけど、いいかな?」。これが概算です。端数が省略されることが多く、きちんと計算すると参加費は1人3750円。誤差は250円ですから大体の予算感は伝わりますね。


【「例文」で使い方をチェック!】

「概算」とは「大体の数量または金額を計算すること」です。

新規のイベントに関する費用を上司に報告する必要があるとしましょう。イベントは、開催が決まっただけで詳細は不明。必要な金額を明確にはできません。とはいえ、今までの前例から、「この規模でこの会場を押さえた場合は…」という数字を出すことは可能です。このように、予測可能な範囲でおおよその金額を算出した際に、「これは概算ですが…」として見積もりを提出するのです。ポイントは、その数字は「あくまで概算であり最終的な数字ではない」ことを相手に明確に伝えること。そして参考にした前例や資料、データがあれば、それを添付すること。概算の前提条件を明示することで、数字の説得力や信頼性を高めることが可能です。

■1:「こちらの数字はあくまで概算ですので、最終的な数字ではないことをご承知おきくださいませ」

■2:「ビジネスシーンでは、『費用事前に大雑把に算出すること』を『概算見積』あるいは単に『概算』という」

■3:「予算が100万円以内に収まるのか、あるいは150万円を超えるのか。規模感を知りたいので、概算を出してくれないか」

■4:「結婚すると決まったら、式の費用に引っ越し、新居の敷金礼金、新婚旅行とお金のかかることばかり。概算してみてゾッとした…」

■5:「国や地方自治体からの支援金など、支払い額が決定する前におおよその額を支払い、後日、金額が確定した時点で過不足を精算することを『概算払い』という」


【「類語」「言い換え」表現】

■見積もり

「見積もり」は「ある事にかかるであろう物量や費用について、あらかじめ計算すること」または「予め計算された大体の数値」のことです。「概算」とほとんど同じ意味の言葉ですが、業界によっては使い分けされているので、注意が必要です。

■試算

「試算」とは、大体の見当をつけるため「試しに行う計算」のこと。「概算」も「試算」も最終的な数値ではなく、「一応」の数字を出すという点では共通していますが、「試算」は端数切り捨てなどを行わず、綿密に計算し、その時点での詳細な数字を出すことに、違いがあります。


【「英語」にすると?】

「概算」に相当する英単語は[approximation]です。たとえば、「太陽から地球までの概算距離」を[an approximation of the distance of the earth from the sun]のように表現します。また、「概算する」「見積もる」を表す動詞は[estimate]です。

・I estimated the cost of a college education.(大学にいくらかかるか見積もった)

・He estimated the loss at three million yen.(彼は損害を300万円と見積もった)

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ビジネスシーンにおいて、数字の正確性に対する評価はとてもシビア。それだけに「概算」の扱いは、提示する側も受け取る側も、「正確な数字ではない」ことを共通認識としてもっておく必要があるのです。一方、個人的な将来設計を考えるうえでも、必要な支出の概算はとても大事な作業ですね。とはいえファッションにおいては、たとえ予算との折り合いはつかなくても手に入れたい「運命の出会い」はしばしば訪れるもの。予測通り、データ通りにはなかなか進まないのが、悩みでもあり醍醐味でもあるようです。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) :