「最寄り駅から弊社までは徒歩で約5分です」「当社自慢のロングセラー商品です」の「弊社」も「当社」も、自分が所属している会社のことを示した言葉です。ほかにも「自社」「我が社」「小社」とあり、どう使い分けるのが正解? 今回はそのハテナに応えます。

【目次】

対外的に使いやすいのは「弊社」、いちばんへりくだったのが「小社」です。
対外的に使いやすいのは「弊社」、いちばんへりくだったのが「小社」です。

「自分の会社」の丁寧な「言い方」「言い換え」は5つある!】

仕事での会話やメール、資料などで、会社のことを社外の人に示す言い方は複数あります。まずはそれぞれの言葉としての意味を確認しておきましょう。

■弊社(へいしゃ)

自分の属する会社をへりくだって言う語。 「弊」という字には、「悪いこと、間違っていること、欠点」や、「疲れ、衰えること」という意味があります。「弊害」や「疲弊」という単語でも漢字がもつ意味がわかりますよね。この「弊」という漢字を自分方に添えることで、謙遜を示す言葉になります。

■小社(しょうしゃ)

自分の属する会社をへりくだっていう語。 また、規模が小さな会社のこと。

■当社(とうしゃ)

自分の属する会社のこと。また、「この会社」と指し示す語。自分の会社を言いたいときに用いる丁寧語で、謙遜の意味はありません。

■自社(じしゃ)

自分の属する会社のこと。また、自分が経営している会社のこと。「当社」同様、謙遜や尊敬の意味はない丁寧語で、「当社」のほうがより丁寧な言い方です。

■我が社(わがしゃ)

自分の属する会社のこと。尊敬やへりくだりの意味はありませんが、「我が」という言葉は親しみや誇りを感じているさまを表すため、社長や役員など地位のある人が使うのがふさわしいでしょう。

いずれも「自分が属する会社(組織)」を示す言葉ですが、「へりくだった言い方」「フラットな言い方」によっても違いがあるので、相手やシーンによって使い分ける必要があります。

次に具体例を見ながら、使い分けを確認しましょう。


【社外向けへりくだった表現「弊社」「小社」…例文5選】

社外の人に向けてへりくだっていう場合は「弊社」か「小社」を使用するといいでしょう。

■1:「このたびは弊社(小社)商品をご購入いただき、誠にありがとうございました」

■2:「弊社(小社)へお越しの際は、お手数ですが1階受付にて入館手続きをお願いいたします」

■3:「ご利用いただいております弊社(小社)サービスにつきまして、一部変更がございますことをお知らせいたします」

■4:「小社(弊社)経理担当○○へ、請求書をご送付いただきますようお願いいたします」

■5:「不具合がございましたら、小社(弊社)コールセンターへご連絡ください」


社外向け表現「当社」「自社」「我が社」…例文5選】

へりくだる必要がないシーンや、自分の会社を強調したい場合には「当社」「自社」「我が社」を使います。

■1:「当社が得意とするのは地域密着型サービスです」

■2:「当社の新企画についてご説明いたします」

■3:「自社ブランドが目標を上回るペースで成長したため、来期は新たな展開を予定しています」

■4:「雇用調整助成金の受給申請をした理由として、自社の業績悪化の回復が見られないためと説明があった」

■5:「我が社(当社)も創立からようやく半世紀が経ちました」

口頭の場合、「自社」は意味が伝わりにくいケースがあるので、「自社製品」「自社ブランド」など、すでに一般化している言葉以外は、会話やスピーチなどでの発言の際は、「我が社」や「当社」を使う方がベターです。


【社内の人には「自社」「我が社」例文3選】

相手が社内の人であれば、「自社」や「我が社」を。ただし「我が社」は上長(年齢や地位が上の人)から目下の相手に向かって使用します。

■1:「既存の自社製品に愛情があってこそ、新しい企画も生まれるのではないでしょうか」

■2:「我が社がお客様に選ばれる理由を、10は挙げられるようになってほしい」

■3:「我が社も今秋には創立100年を迎えるため、従業員ひとりひとりが誇りと意識を新たにしてもらいたい」


【転職希望の面接時には?】

転職活動中の面接で、現在の職場での実績で自分をアピールすることがあると思います。その際に「弊社」や「当社」を使用するのはNG! 「現職では○○のチームリーダーを務めました」や「現在の勤め先では5年前より○○を担当し、売り上げを毎年伸ばしてきました」とするのが正解です。


【「弊社」「小社」「当社」「自社」「我が社」使い分けのまとめ】

■社外の相手にへりくだって

・弊社 ・小社

■社外の相手にフラットに

・当社 ・自社 ・我が社

■社内の相手に

・自社 ・我が社

少々ややこしかったかもしれませんね。最も重要なのは、へりくだった表現をする必要がある社外の人にはどれを使うか、ではないでしょうか。メールやスピーチ、企画書や説明書などでは「弊社」を使用する、と覚えておきましょう。

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所属する会社のことをどんな言葉で表現するか…? ルールはあるものの、いずれも愛情や愛着をもって使いたいものですね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :