「中二病」とは、思春期の子どもにありがちな、無理に背伸びした言動を揶揄(やゆ)する言葉です。「病」と表現されますが、医学的な治療を必要とする病気や精神障害ではありません。今回は少々わかりにくい「中二病」について、その意味や拡散の経緯、使い方などを解説します。

【目次】

思春期の子どもにありがちな言動を揶揄する言葉です。
思春期の子どもにありがちな言動を揶揄する言葉です。

【「中二病」は若者言葉?「意味」など押さえておきたい「基礎知識」】

■「意味」    

「中二病」とは、中学校2年生前後の、思春期の子どもにありがちな言動や態度を表す俗語です。自分をよく見せるための背伸びや、自己顕示欲と劣等感を交錯させたひねくれた物言いなどが、その典型。思春期特有の不安定な精神状態による言動と考えられており、「病」という名が付いていますが、医学的な治療を必要とする病気や精神障害ではありません。

■「由来」は?

「中二病」という言葉が初めて使われたのは、深夜ラジオ番組『伊集院光のUP’S 深夜の馬鹿力』(TBSラジオ)のコーナーにおいてであったといわれています。そのコーナー終了後、2000年代半ばになってから、インターネットの掲示板などで広まったようです。

■「どんなとき」に使われる?

「中二病」は、もともとは思春期によくある無理に背伸びした言動を、自虐を込めて表現する言葉でした。しかし、言葉が拡散されるに従い、思春期にありがちな自己愛に満ちた空想や嗜好などを揶揄する表現へと変化していきました。具体的には、不自然に大人びた言動や、「自分が特別な存在である」という根拠のない思い込み、またはコンプレックスなどを指します。創作物においては「壮大すぎる設定や仰々しすぎる世界観をもった作品」が「中二病」と認定されるようです。


【「中二病」と言われる人の特徴とは?「あるある」3つ】

思春期の子どもたちにとって「中二病」特有の言動は、珍しいものではありません。行きすぎた場合は別として、ある意味、「誰もが通る道」であり、「少々恥ずかしい黒歴史」とも言えます。

■いわゆる“ヤンキー”のような服装で非行行為に走ったり、自分を強く見せるために嘘をついたり、周りを威嚇したりする

■自分は周りとは違う「特別な存在」だと思い込み、音楽やファッション、思想など特定のジャンルにおいて、あえてマイナー路線を気取り吹聴する

■「自分は特殊能力が使える」など、超自然的な能力を備えていると信じて、アニメや漫画、妄想の世界と現実の境目が曖昧になってしまう


【使い方がわかる「例文」5選】

「中二病」は思春期の子どもに多く見られる心理状態ですが、最近では大人に、大人になっても「中二病的」な言動から抜け出せない「幼稚な大人」に対しても、「中二病」が使われます。自分の感性に酔いすぎて、周囲からは「イタい人」「面倒臭い人」と言われることも少なくありません。

■1:「実家暮らしの弟が、散らかった部屋の掃除をしてくれた母に向かって『プライバシーを尊重しろ!』と激昂しているのを見て、中二病かよ、と地味に引いた」

■2:「中二病真っ盛りだった10代のころ、『大人って汚いよな』が私の口癖だった」

■3:「私は30代になっても、いまだに中二病をこじらせているような気がする」

■4:「トレンドを追いかけるなんてカッコ悪いと、『人と違うことをする』ことにエネルギーを全振りしている彼は、慢性中二病だ」

■5:「部長って、ポエマーみたいな発言多くない? まさか中二病?(笑)」


【「類語」「関連語」表現】

■厨二病

ネットスラングとしては、中学生を表す「中坊」から転じた“2ちゃんねる”用語「厨房」と融合して、「厨二病」とも表記されます。「中二病」と概ね意味は同じですが、侮蔑的なニュアンスが強められています。

■社二病

『現代用語の基礎知識』によれば、「中二病」の社会人版ともいえる心理状態が「社二病」です。社会人2年目くらいの社員が、勇ましい、先輩から見ると生意気にも映る言動に走ること。「中二病」が中学校2年生に限らないのと同様に、「社二病」も広く若手社員全般に関連し、医学的な病名ではありません。上司や先輩に対する下克上型、やたらと夢を語るビジョン提示型、次のステップを語る新しいことやりたい型、ミッションの重さアピール型、過労アピール型、背伸び消費型など、さまざまな類型が存在します。

■ピーターパンシンドローム

 「ピーターパン」は同名の物語の主人公で、「永遠に大人にならない少年」を象徴する存在です。精神的に未熟で大人の社会に入れない男性の示す心理的症候群を「ピーターパンシンドローム」といいます。アメリカの心理学者ダン=カイリーの同名の著書が出典です。

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「中二病」は、子どもから大人になっていく過程で誰もが経験する心理状態です。ほとんどの人は年齢を重ね、現実に適応(迎合とも?)していくものですが、ポジティブに「中二病」を継続し、「自分には特別な力がある」と思い込める人こそが、起業などのビジネスにおいて成功を収めるともいわれています。「中二病」の対義語にあたる言葉は「リアリスト」です。リアリストは堅実で慎重。確実に歩を進めるタイプですが、創造性には欠けがち。「中二病」独特の、子どものように無邪気に「自分を信じる力」は、ときに未来を切り開くパワーになるのかもしれません!

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『現代用語の基礎知識』(自由国民社) :