京都の新名所はタイと日本の「おもてなし文化」の融合でゲストをお迎え

西本願寺と東本願寺のちょうど中間、京都駅から歩いて10分ほどの中心地かつ閑静なエリアにオープンした「デュシタニ京都」。「デュシタニ」は、タイの大手ホスピタリティグループであるデュシット・インターナショナルのフラッグシップブランドです。

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京都市立植柳小学校の跡地活用事業として、京都市が「国内外の文化交流とまちの賑わいが生まれる施設」を計画。デュシット・インターナショナルが選定された。

ファサードは縦のルーバーが特徴的なモダン・ジャパニーズ建築。シックなダークグレーの外壁とあいまって、「新解釈の京都」といった印象です。車寄せのあるエントランスを抜け、ロビーに入ると正面にはタイの伝統的なトレイである「パーン」をモチーフにした荘厳なオブジェが。これを京都らしく木で仕立ててタイと日本のコラボレーションを演出。

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京都らしい町並みを抜けて車寄せに入ると、ベルスタッフがにこやかにお出迎え。タイ流のおもてなしはここから始まっている。駐車場は32台分。
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タイの伝統的な調度品「パーン」を京都目線でアレンジ。一般的にパーンは金属製ですが、木を使って創作することでシックな印象に。

デュシット・インターナショナルは「優雅さの4本柱」と呼ぶ、以下のフィロソフィーを掲げています。
・ゲストのニーズを予測し、パーソナライズした想像以上の「サービス」を提供する。
・ゲストの身体的、精神的「ウェルビーイング(幸福感)」に注意を払い、あらゆるシーンにウェルネス要素を取り入れる。
・ゲストにユニークなローカル体験を提供し、ゲストと地域社会双方によい影響をもたらす「ローカリティ」。
・地域の環境に敬意を払い、提供するサービスが社会、経済、環境に対し「サステイナブル(持続可能)」であること。

そのおもてなしと他者への貢献の精神が凝縮されたサービスは、まさに「Ryokan」と「Hotel」の融合。日本家屋を彷彿させる低層建築と最新の近代建築の融合を感じる建物も、それを体現しています。

タイと日本のインテリアデザインチームの協業で日本文化を再解釈

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天井が高く、広々としたロビー。アクセントとなっているリボン状の布帛は、タイのインディゴ、日本の藍染、デュシタニのブランドカラーという3つのブルーを表現。

フロントを通り、突き当たり右奥には現代流にアレンジした茶室が。今後は定期的に茶会も開催されるそうで、ステイのタイミングが合えば参加するのも楽しそうです。このホテルはタイと日本のデザインチームがタッグを組んでインテリアを担っています。ところどころにあるメタリックなペイントアクセントは、金継ぎからインスピレーションを受けたもの。伝統とモダンのミックス具合が新鮮です。

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外光が降り注ぐ明るいラウンジの傍らにはモダンな茶室が。カウンターの右端にある模様は、「金継ぎ」をイメージしてアクセントを施した。
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毎月、茶道の先生を招いてこのスペースで茶会を開催する予定。

和の要素にタイスタイルをアレンジした趣き豊かな147室のゲストルーム

客室は全147室。インテリアはタイと和の文化を折衷。インペリアルスイート(173平米・1泊¥750,000~)はじめデラックスツイン(40平米・1泊¥50,000~)など、オケージョンに合わせてバリエーション豊かに(※いずれも税・サ別・宿泊料のみ)。コネクティングルームの用意もあり、家族や親戚、グループでの宿泊にも喜ばれそう。

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ワンベッドルームコーナースイート(88平米・1泊¥190,000~税・サ別・宿泊料のみ)
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ワンベッドルームコーナースイートのリビングダイニングエリア。極上のくつろぎ時間を約束。
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ウェルカムスイーツはチョコレート。ひと息つきつつステイ中のプランを練って。

ルームアメニティはタイを代表するウェルネスブランド「HARRN(ハーン)」のシャンプー、コンディショナー、ボディソープ、ボディミルクが。「デュシタニ京都」の特長のひとつでもあるサステナビリティを体現しているのが全館「ノープラスティック」主義。カードキーも木製、歯ブラシやコームは再生プラスティックを使用しています。素敵な取り組みです。

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ルームアメニティはタイの有名ブランド「HARRN(ハーン)」を採用。
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デュシタニ京都では全館で「ノープラスティック」を目指し、環境への配慮に取り組んでいる。客室やスパに用意されているコンプリメンタリーのミネラルウォーターも、アルミ缶のもの。

京都大原の自社農園と宇治の茶畑を有して地産地消に取り組む

ダイニングエリアへは中庭を通ってアプローチ。ワインカーブをイメージした内装のバー「Den Kyoto(デン・キョウト)」、鉄板焼「紅葉(こうよう)」、そしてシグネチャーとなるメインダイニングが「Ayatana(アヤタナ)」です。

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ダイニングエリアに向かうアプローチは、外の空気に触れつつ京都らしい中庭を眺める趣向。
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メインバー「Den Kyoto(デン キョウト)」では、選りすぐりのワイン、ウイスキー、カクテル、そして軽い食事を用意。
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鉄板焼「紅葉(こうよう)」は鉄板焼スタイルのシェフズテーブル。京都を中心に、厳選された関西の食材を愉しんで。

ミシュラン・ガイドブックで複数年にわたり一つ星を獲得したバンコクのタイ・レストラン 「Bo.lan(ボー・ラン)」 のシェフ、ドゥアンポーン・ソンヴィサヴァ氏とディラン・ジョーンズ氏が監修。永らく途絶えていた正真のタイ伝統料理を、コース仕立てでいただきます(¥24,800・税込)。日本の「金継ぎ」からインスパイヤされたエレガントな空間、エンタテイメント性のある「参加型」のインタラクティブな演出はサプライズ満載。

まずはレセプションで扇子を選び、「ゆっくり仰いで、風そして扇が発する香りを愉しむように」と促されます。「Kati(カティ)」という京都初のタイデザートのアトリエスペースでウェルカムドリンクとスナックを。タイのバンコクでは夕刻の交通渋滞に巻き込まれることが多々あり、慌てて到着したゲストにひと息ついていただくという文化を再現しています。

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メインダイニング「Ayatana(アヤタナ)」のエントランスで手渡される扇子。ウッディな香りが非日常へと誘うトリガーに。
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ダイニングテープルに着く前に、ソルティでクランチーなオリジナルスナックと蓮根とオリジナル紅茶を使ったモクテルを。

ダイニングルームに足を踏み入れると、そこはタイの伝統をモダンにアレンジした空間。オープンキッチンが活気を生みつつもエレガントで上質な雰囲気が漂います。「Bo.Lan(ボー・ラン)」仕込みのエッジが効いた料理に期待が膨らみます。

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Ayatanaのムーディーでシックなテーブルセッティング。中庭の日本庭園を眺めながら、タイキュイジーヌを堪能する無国籍感。同行のフォトグラファーも「日本にいる感じがしませんね。海外に来たみたい」と思わず漏らすほど。京都にいながら海外旅行気分。
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ディラン・ジョーンズ氏がオープンに合わせて来日。日本の食材では「葱」に興味をそそられる、とのこと。意外にも「居酒屋が好き」だという、タイ・キュイジーヌの奇才はオーストリア人。

一皿一皿に精進料理のコンセプトをふんだんに取り入れているのも、タイと京都の相性の良さを感じます。普段私たちが日常的に親しんでいるタイ料理が家庭的なものだとするならば、丁寧に、素材を活かし、目にも愉しさを感じさせてくれる、特別感あふれたエレガントで色気のある上質なタイ料理が続きます。
食材は関西を中心に国産のものを。無農薬、無肥料で固定種野菜を育てるOHARA FARMYと業務提携して、京都・大原エリアに自社農園「デュシット・ファーム」を開設。パクチーなどのタイ料理に欠かせない野菜を自ら栽培することにも力を入れています。サステイナブルな食文化の創造に、真剣に取り組む企業姿勢も素敵です。

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タイ南部風のライスサラダ。香草や酸味や辛味、甘味、塩味、旨味が絶妙。バナナの葉を蓋に用いるプレゼンテーションも美しい。
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カラメルココナッツとカニを卵でつくった網状の衣で包んだアミューズブッシュ。
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メインはサラダや炒め物、スープ、カレー、蒸した魚などが少しずつライスと一緒に供されるスタイル。白米はタイ米と京都産をブレンド。
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シロップ仕立てのさっぱりしたものから焼き菓子まで、デザートも趣向を凝らしたものがいくつか運ばれてくる。
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デザートのひとつ。ガヤッサーと呼ばれる、いわば雷おこしのようなお菓子を目の前で燻製に。時々組み込まれてくるサプライズの演出に、最後まで飽きさせないホスピタリティが。

このメインダイニング「Ayatana」では、ワインと日本酒のペアリング(¥8,000~税・サ込)も。料理に合ったドリンクの提案で、より奥行きのあるディナータイムに。今回は、開業のタイミングで来日中のタイの著名ミクソロジストであるパキー・ププラディスト氏(通称:キー氏)考案の、タイと京都の食材を使ったモクテルをいただく機会に恵まれました。スイカ、かつお節、はちみつのモクテルや白みそ、ココナッツミルク、ココナッツシュガーなどユニークな彼のレシピは、「今後も定番ドリンクメニューとしてオーダーできるといいのに!」と思わずリクエストしてしまうほど独創的で繊細な数々でした。

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来日中の著名なミクソロジストであるキー氏。タイで唯一のモクテル・バー「インタンジブル・バー」にて、現地のコミュニティと協業し、その地域で栽培された食材を使ったオリジナルモクテルを提案する。

スパ「DEVARANA」のテーマはデトックスとリラックス

タイと言えば、忘れてならないのがスパとタイ式マッサージ。デュシタニ京都のスパ「DEVARANA(デバラナ)」は、日本の伝統的な「Shiatsu(指圧)」や「緑茶」、「玄武岩のホットストーン」などの技法やパワーを取り入れつつ、ホリスティックな観点からタイならではのウェルネス思考を取り入れたホスピタリティあふれる癒しの場です。デバラナとは「天国の庭園」を意味し、タイの伝統的なメソッドを現代流に再解釈した独自メニューで心身を整えます。

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DEVARANAのレセプション。日本語が堪能なタイ人レセプショニストが温かい笑顔で出迎えてくれる。メディテーション&マインドフルネス60分¥12,000、アンシエント タイ マッサージ、デバラナ シグニチャー マッサージ各90分¥38,000ほか。
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カウンセリングの後、ゲストのコンディションに合わせてオリジナルのオイルを調合。ラベンダー、カモミール、ローズを足したり、オートミールをスクラブとして混ぜたり。
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トリートメントルームはシングルが4室。タイ式マッサージを施術するための畳敷きツインルームも。
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シンギングボウルを鳴らして施術開始。場と気を清め、メディテーション効果があるとも言われている。

スパエリアには、プール、ジム、ヨガスタジオも併設。旅行中とて1日たりともトレーニングを欠かしたくはないというストイックでアクティブなゲストも心配は無用です。

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スイミングプールも完備。旅支度に水着とキャップをお忘れなく。
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美食の旅になることは間違いなしの京都旅行。24時間利用可能なジムでウエイトコントロールを。

京都なのに、まるで海外にいるかのように心が高揚する特別な空気感。ホスピタリティあふれるタイ人スタッフはじめ、海外からの精鋭スタッフのおもてなしは非常に心地よく、何度もリピートしたくなるフレンドリーな接遇に、新たな京都の「行くべきスポット」登場を垣間見た訪問でした。

この記事の執筆者
『美的GRAND』(小学館)はじめ、女性誌・ライフスタイル誌の美容ページに携わる。星付きからB級まで、食や国内外の旅全般、クルマと猫が好き。 メディア制作会社「株式会社三井組」代表。
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横田紋子(小学館)