「明日は半ドンだから、子どもたちにどこか行こうってせがまれちゃって…」「半ドンでも、なかなかカラダは休まりませんね」。この会話、あなたは理解できますか? 今回取り上げるのは「半ドン」という言葉です。なにそれどこの方言? など、聞いたことがない、知らないという人も多いかもしれませんね。確かに事実上死語ではありますが、「半ドン」を体験してきた世代はまだまだ現役! 今回は上司や年上の人との会話で「?」にならないよう、その意味や語源などを解説します。

【目次】

半ドンの意味とは?
「半ドン」世代は何歳ぐらいまで?

「半ドン」は「方言」?「意味」と「語源」】

■方言?

なんだかおかしな言葉に感じるでしょうか。「もしかして方言?」と思われるかもしれませんね。ところが「半ドン」は方言でもスラングでもなく、辞書にも掲載されているれっきとした名詞です。

■意味

勤務が午前中だけであること。また、その日のことを表します。日曜休業の企業や役所では土曜日が「半ドン」になることが多く、かつては学校教育の場でも土曜日の授業は午前中のみの「半ドン」が採用されていました。

■語源

そもそも「ドン」とはどういう語なのでしょう? 諸説ありますが、オランダ語で「日曜日」「休日」を意味する[zondag]がなまって「ドンタク」となったというものが有力です。「半分のドンタク(半分の休日)」を略して「半ドン」というわけです。ちなみに「博多どんたく」の「どんたく」も、この「休日」という意味から付けられています。ほかには、明治時代から太平洋戦争にかけての時期に空砲を撃って正午を知らせる地域があり、半日経った正午に「ドン」と撃つことからお昼の時刻を「半ドン」と呼んだのだ、とも。


【なぜ「半ドン」に?「何時」のこと?「いつまで」使われていた?】

具体的に「半ドン」について解説しましょう。

■いつ始まった?

1876(明治9)年に公官庁で土曜の午後を休業とすることを「半ドン」と新聞が報じ、一般企業などにも制度とともに普及したとみられます。イギリスで1850年から定められている制度を参考に導入されたとか。

■何時まで?

午後休みというだけで時間の定義はありませんが、おおむね正午以降が休みということでしょう。

■なぜ使われなくなった?

「半ドン」という言葉を知っている、あるいは使っていたという人は、かなりのベテラン層かもしれません。現在〝死語化〟している背景には、「週休2日制」の導入があります。

労働基準法は「少なくとも週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」と定めています。曜日の指定はありません。1980年代には多くの企業で「週休2日制」が導入され始めました。厚生労働省によると、昭和59(1984)年に「完全週休2日制」を導入していた企業は全体の6.7%でしたが、本年(2023年)の調査では48.7%に。40年間で普及率約5割を、多いとみるか少ないとみるかは業種・業態によるところが大きいので一概には言えませんが、これにより「土曜日の勤務はお昼まで」という職場は減り、「半ドン」という言葉も使われなくなったのです。

ちなみに「週休2日制」は「1か月に1回以上、週に2日の休みがある」ことを指します。連休にするとは定められていません。一方「完全週休2日制」は、「毎週休みが2日ある」ということ。こちらも曜日の指定や連休とする決まりはありません。公立の学校では、平成4(1992)年に第2土曜日が休校に、その3年後には第4土曜日も休みになり、祝祭日を除いても月に2回が連休となりました。そして小・中学校は平成14(2002)年に、高校は翌年から週5日制が導入され、小学校から高校まで日曜日と土曜日の授業が廃止に。現在では見直しも図られている「ゆとり教育」ですね。


【「半ドン」の使い方がわかる「例文」5選】

■1:「小学生のころ、母親のナポリタンが大好きで、半ドンの土曜日は走って家に帰って昼に作ってもらうのが嬉しかった」

「土曜のランチのナポリタンがご馳走だった」ということ。今ほどパスタの種類はなく、「スパゲティ」がパスタの総称だった昭和の時代の話です。

■2:「半ドンの普及と供に、鍵っ子も増えたよな。平和な時代だったな」

土曜日、子どもはお昼前に帰宅するけれど大人は仕事…という家庭では、子どもは家の鍵を持って登校。昭和の時代、そういう児童を「鍵っ子」と呼びました。現在ほど各家庭のセキュリティが万全ではなかった時代に、家に子どもだけという状況も珍しくなかったのです。

■3:「明日は半ドンだというのに、特に予定もないなぁ…」

■4:「役所や銀行が半ドンでないと、いろいろな手続きができない」

■5:「半ドンも週休2日制も、学童保育などの体制が整っていないと保護者の負担は増すばかりだ」


【「類語」「関連語」「英語」表現】

■類語

・半休 ・午後休 ・早帰り

■関連語

・花金 ・プレミアムフライデー

■英単語に「半ドン」はある?

「休日」は[day off]ですから「半ドン」は[a half day off]、または[work a half day][half-holiday]となります。

・I will work  a half day tomorrow.(明日は半日仕事です=明日は半日休みです)

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死語となっている言葉には、時代が反映されているものが多いですね。年の離れた人との会話で出てくる知らない言葉はスルーせず、意味を尋ねるのも会話術のひとつ。意外におもしろい話が聞けるかもしれません。

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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :