「稀有」は「稀(まれ)」「めったにないなこと」「とても珍しいこと」を意味する言葉で、「稀有な存在」「稀有な才能のもち主」などと使われます。今回は「稀有」の読み方や「希有」との違い、また混同が多い「杞憂」について解説します。
【目次】
【「稀有」を正しく理解するための「基礎知識」】
■読み方
「稀有」は「けう」と読みます。「希有」の漢音は「きゆう」であるため、「きゆう」と呼んでも間違いとは言えませんが、一般的には「けう」と読まれています。ところで、「稀有」と意味も読み方も同じ言葉として、「希有」があります。これは「稀有」の「稀」は常用漢字ではなく、公用文で使用できないため。代わりに「希有」が使われるようになったのです。
■意味
「稀」という漢字は、もともと穀物のまばらなことを意味しており、ここから転じて、「まれ」という意味になりました。「有(う)」は仏教用語で「生存」や「存在」、哲学用語で「存在」を表す言葉です。「稀有」は、その存在自体が「稀(まれ)であること」「とても珍しいこと」を意味する言葉です。
■「稀有に終わる」は誤用です
「稀有」と音が似た言葉として「杞憂(きゆう)」があります。「稀有」と同じ意味で使われる「希有」の読みが「きゆう」でもあったことから混同されたのかもしれませんが、「稀有」と「杞憂」はまったく別の意味をもった言葉です。「杞憂」は「無用の心配、取り越し苦労」を指す言葉で、「杞憂に終わる」「杞憂に過ぎない」のように用いられるため、「稀有に終わる」という誤用が散見されます。注意してくださいね。
【「使い方」がわかる「例文」4選】
「稀有」は形容動詞として、主に「稀有な○○(名詞)」というかたちで使われます。多くは、その希少性や独自性をポジティブに評価した文脈で用いられます。
■1:「彼は非常に稀有な才能のもち主として社内で知られている」
■2:「将棋史上初となるタイトル独占を達成した藤井八冠は、万人が認める稀有な存在だ」
■3:「彼女は新人ながら、営業成績1位という稀有な記録を残した」
■4:「今回の稀有な体験は、彼の今後の人生に大きな影響を与えるだろう」
【「稀有な人」「稀有な存在」って、ほめ言葉?】
「稀有な人」あるいは「稀有な存在」とは、滅多にいない珍しい人(存在)、つまり「換えの効かない存在」という意味の言葉です。先に挙げた例文からもわかるように、ほとんどの場合はほめ言葉として、ポジティブに用いられています。
【「類語」「言い換え」表現】
「稀有」の「類語」をいくつか挙げてみましょう。
■珍しい
■稀(まれ)な
■未曾有
「未曾有」は「みぞう」と読み、「今までに一度もなかったこと。また、非常に珍しいこと」という意味の言葉です。
■稀代
「希代」とも書き、読みは「きだい」あるいは「きたい」です。「世にも稀(まれ)なこと」を意味します。
■不世出
「不世出」は「ふせいしゅつ」と読み、「世にまれなこと。まれにしか世に現われないほど優れていること」を意味します。
【英語で言うと?】
「めったにない。稀(まれ)である」ことを英語で表現すると[unusual]になります。「稀有な事件」は[a most unusual incident]です。また、レア、とカタカナ語としても使われる[rare]も、「稀有な」「珍しい」「めったにない」などの意味をもっています。[a rare genius]で「不世出の天才」という意味になりますよ。
・She showed rare tact in inviting them both.(彼女はまれに見る如才なさを発揮して両人を誘った)
・Totally rare!(実に素晴らしい)
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「稀有」な才能のもち主は、その希少性から、多くは賞賛を集める存在です。「稀」が「まれ」と読むことを覚えておけば、「杞憂」と混同することもないのでは。大人の語彙力として頭に留めて置きたい言葉のひとつです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :