「闇堕ち」とは、「もともと善良な人物が、あるときを堺に道を踏み外し、悪いことを行う側(ダークサイド)に行ってしまうこと」を表す言葉です。もともとはアニメや漫画におけるストーリー展開の定番を指していましたが、現在では人の精神状態を表す言葉としても使われています。今回は、「闇堕ち」の意味や使い方から、「闇落ち」との違い、闇墜ちした有名キャラクター、類義語と対義語まで、広く解説します。

【目次】

闇落ちとは?ダースベーダーが由来?
漫画やアニメのある種定型とも言えます。

【「闇堕ち」ってどんな状態?】

■意味

『デジタル大辞泉』によれば、「闇堕ち」とは、「物語などで、もとは善の側であった登場人物が、道を踏み外して悪の側になることを俗に言う語」です。元々はアニメや漫画にありがちな、善と悪、あるいは美と醜といった二元論的な価値観において、善良で心優しい登場人物が、ある契機を境に醜悪・残酷・非人間的・悪魔的な要素を志向するようになる様子を指して使われていました。

■「由来」や「語源」は?

「闇」とはストーリー上の「敵」、「悪」を指しています。元々「光」という語には希望や光明といった意味があり、アニメの世界では正義や善、希望の象徴であるヒーローを「光」に喩えていたことから、その対極である「闇」が「敵」や「悪」を象徴するようになったのです。つまり「闇堕ち」は、味方(善)だった人物が、敵側(悪)にまわってしまうことを意味する言葉です。

■「闇落ち」との違い

「闇堕ち」は「闇落ち」と表記されることもあり、意味は同じです。ただし、「堕」という漢字には、「土が上から崩れ落ちる」という意味があり、「悪い道へ落ちること」を意味する「堕落」や「壊れて崩れること」を意味する「堕壊」のように、単に「落ちる」だけでなく「落ちぶれる」「品格が下がる」「道を踏み外す」といった意味合いを含んでいます。そのため「闇落ち」よりも「闇堕ち」のほうが、よりドラマティックで救いのないイメージが伝わるかもしれませんね。


【「闇堕ち」で有名なキャラクターといえば?】

アニメや漫画、映画などにおいて、主要登場人物の「闇堕ち」は、ストーリー展開の定番ともいえます。「闇堕ち」という言葉がピンとこない人であっても、その代表的なキャラクター名を耳にすれば、その存在がはっきりとイメージできるのではないでしょうか。実は「闇堕ち」キャラはとても魅力的に描かれることが多く、元々の善人キャラだったときよりも人気を集めることが少なくありません。

■ダース・ベイダー(映画『スター・ウォーズ』)

世界的にもっとも有名な「闇堕ち」キャラといえば、映画『スター・ウォーズ』に登場する「ダース・ベイダー」であることに、異論を挟む余地はないでしょう。映画『スター・ウォーズ』が初公開されたのは、今から半世紀近く前の1977年。3部作3組から構成される9つのエピソードのうちの中盤、エピソード4〜6がまず製作され、そこでは悪の象徴としての「ダース・ベイダー」が描かれていました。次に公開されたエピソード1〜3で描かれたのは、才能と正義感に溢れた若く美しい戦士。ストーリーが進むにつれ、その若き戦士が「ダーズ・ベイダー」の、かつての姿であったことが明らかになっていくのです。

かつての「光」が「闇」へ落ちていたドラマティックなストーリー展開は、当時、世界中の人々に大きな衝撃を与えました。真っ黒なビジュアルや不気味に響く息音など、「ダース・ベイダー」はまさに「闇堕ち」を具現化した存在といえるでしょう。

■夏油傑(漫画『呪術廻戦』)

『呪術廻戦』は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載中のダークファンタジー・バトル漫画です。人間の負の感情から生まれる化け物(呪霊)と、呪術を使って呪霊を祓(はら)う呪術師との闘いを描いています。

史上最強の呪術師である五条悟の親友・夏油傑(げとう・すぐる)は、誰よりも優しく正義感の強い人物として描かれていましたが、ある事件をきっかけに最悪の呪詛師(呪力を用いて人に気概を与える存在)となってしまいます。元々は真面目すぎるほど正義感が強かった夏油が、呪詛師としての孤独感や空しさ、親友に対する劣等感、疎外感、人間の醜い本性に対する憎しみなど、さまざまな負の感情に蝕まれ、その爆発とともに一気に「闇堕ち」していく姿に、多くのファンが涙しました。

基本的には、人並み以上に正義感が強く心の優しい人物が、「劣等感」や「憎しみ」といった負の感情と葛藤し、何らかの出来事を転機に自分の意志で敵側へと転じ、主人公と対立していくのが、「闇堕ち」ストーリーの定型です。


【同じ意味の「類語」・「言い換え」表現】

「闇堕ち」という言葉は、普段から漫画やアニメに親しんでいる人以外には、あまり浸透していない言葉かもしれません。一般的にわかりやすいフレーズに言い換えてみましょう。

■敵に寝返る

■悪に覚醒する


【「反対語」「対義語」は?】

「闇堕ち」の反対、つまり「悪の道を歩んでいた人物が善に目覚める」といった意味の言葉をいくつかご紹介しましょう。

■改心

「悪い心を改めること」を「改心」といいますね。

■改悛(かいしゅん)

「改悛」は「心持ちを悔い改めること」です。

■心を入れ替える

「悪い考えを改め、今までと違った気持ちを持つ」ことを表すフレーズです。

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「闇堕ち」は、もともとは善良な人物が自分の中にある負の感情と葛藤した末、ダークサイド(敵側)に落ちていくことを表す言葉です。そのドラマティックな展開は漫画やアニメの定番となっていますが、「闇堕ち」する人物が高潔な性格であればあるほど、心優しい性格であればあるほど、観る者に与える衝撃は大きくなるものです。日常生活でも、凶悪事件が起こった際のインタビューで、容疑者を知る人物が「あんなにおとなしい人がまさか事件を起こすなんて…」と話していることがありますよね。「闇堕ち」は、いつ、誰に起こっても、おかしくないことなのかもしれません。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館) :