今回は「紳士」という言葉について。「紳士」は男性、「淑女」は女性を表しますが、「紳士的」「淑女的」も男女で使い分けるもの? ジェンダーレスやジェンダーニュートラルなこの時代、性別を示す言葉は使いにくいこともあるので、しっかり「紳士」や「紳士的」の意味を理解しておきましょう。

【目次】

「紳士的」とは?性別に関係なく使用可能です。
「紳士的」は性別に関係なく使用可能です。

【「紳士」の「意味」など基礎知識】

■「紳士」の意味

「紳士(しんし)」は、性質や品行が正しく、礼儀に厚く、学徳の高い貴人を指す言葉です。

■由来

「紳」という字は公家の正装である衣冠束帯(いかんそくたい)で身に付ける幅の広い帯を意味し、官位が高く身分ある人は礼装の際に笏 (しゃく) をこの大帯に差し挟んだところから、貴人を表す言葉となったとか。それが転じて、1879年ごろから英語の[gentleman]の訳語として、上流社会や地位、財産のある男性を示し、さらには、知性や教養が豊かで、礼節や信義をわきまえた男性の呼び名として使われるようになりました。


【「紳士」と呼ばれる人とは?「特徴」

■内面

・教養がある ・品格がある ・礼節をわきまえている ・優しい ・頼りがいがある 

・有言実行 ・冷静 ・信頼できる ・他者を不快にさせない

上記のような男性を「紳士」と呼びます。乱暴な言葉遣いをしないとか、身勝手な言動をしないという「他者を不快にさせない」のが、もっとも基本的な条件と言えるかもしれませんね。

■外見

1879年は明治12年、都市部の経済や人々の暮らしが驚異的な速さで変化した時期です。そんな時代に生まれた「紳士」という言葉が示す男性には、内面的な品位や教養の高さはもちろんのこと、身なりにも条件がありました。シルクハットないしは山高帽を被(かぶ)り、男性用礼服だったフロックコートかモーニングコートを着用という、文明開化を象徴する装いをしてこそ「紳士」と呼ばれたのです。

現在ではシルクハットにモーニングコートというような具体性は薄れたものの、場にふさわしく、清潔感のある装いが求められます。


【「紳士的な人」とは?】

■「紳士」と「紳士的な人」は違います!

「紳士」は男性を表すひとつの言葉です。「紳士服」や「紳士用下着」などと言ったら、男性用につくられた商品のことですね。一方「紳士的な対応」や「紳士的な人」のように「的」が付く、「品格があって礼儀正しく、相手の立場を尊重するさま」となるので性別を限定するものではなくなります。

■「紳士的」は女性にも使える?

例えば、非常識と思えるクレームで興奮している人に対しても、冷静に対応する姿は「紳士的」。男性の「紳士」に相当する女性を表す言葉のひとつは「淑女」ですが、「淑女的な対応」や「淑女的な人」とは言わず、女性であっても「紳士的」と表現します。内面も外見も、「紳士的」と言ったら「他者への気遣い」が必須条件のようですね。


【「紳士的」の類語・言い換え、対義語】

「紳士的」はジェンダーレスに使える言葉ですが、語彙力強化のために言い換え表現などもおさらいしましょう。

■類語・言い換え表現

・洗練されている ・育ちがよい ・折り目正しい ・温和 ・柔和 ・上品 ・物腰が柔らかい ・態度が柔らかい ・人当たりがよい ・懐が深い ・包容力がある ・人柄が穏やか  ・人間が丸い ・如才がない

■対義語

・粗野 ・野蛮 ・下品 ・無粋


【英語ではなんと言う?】

「紳士」は[gentleman]、「紳士的」は[gentlemanly][gentlemanlike]と言います。

・I'm always impressed by his gentlemanly behavior.(彼の紳士的なふるまいにいつも感銘を受ける)

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知性や教養があり、勇敢で優しく、礼儀や礼節を重んじ、他者を思いやり気遣う…そんな「紳士的な人」になれるよう、努力したいものですね。

この記事の執筆者
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