【目次】

【「八方美人」とは?「読み方」と「意味」】

■読み方

「八方美人」は「はっぽうびじん」と読みます。

■意味

「八方美人」とは、「誰に対しても如才なく振る舞うこと。そう振る舞う人」を意味する四字熟語です。一般的に「誰からも悪く思われないように振る舞う人」「誰に対しても愛想のよい人」を指して、どちらかと言えばネガティブに用いられることが多い言葉です。

■由来

「八方美人」の「八方」は、東西南北と、その中間の南東・南西・北東・北西の合計8つの方角、つまり「すべての方向」のことです。「美人」には、古くは「行いの優れた人」という意味があり、ここでは「評判がいい人」と考えるのが適切。性別は問いません。つまり、「八方美人」とは、「どんな相手からも評判がいい人」という意味の言葉です。

この熟語自体にネガティブな要素は見当たりませんが、実際には「どんな相手からも評判がいい人」→「どんな人に対しても愛想よく振る舞う人」と、ややネガティブなイメージで使われています。


【職場で「八方美人」と言われる人の特徴】

では、具体的にどんな人が「八方美人」と言われてしまうのでしょうか。

■1:「相手によって態度を変える」

「八方美人」は誰からも悪く思われないようにふるまおうとするので、相手の出方や意見に合わせて、その都度自分の意見も変えてしまいます。例えば、ライバル関係にあるA部長とB部長がいた場合、「八方美人」さんは、まるでカメレオンのごとく自分の意見を変え、どちらに対してもいい顔をしようとします。利害関係が発生するシーンでは、それが表面化してしまうことも少なくありません。

■2:「誰に対しても愛想がいい」

「八方美人」は誰にでも愛想よく振る舞います。むすっとしているより明るい人のほうが好感度は高いですが、お愛想も過ぎると「調子がいい」と思われるのでご注意を。

■3:「本心・本音がわからない」

常に明るく、誰にでもいい顔をして愛想よく振る舞う…まったく問題ないと思いきや、「八方美人」と言われる人は、本音がどこにあるかわからず、つかみどころがありません。相手と真摯に向き合う姿勢が見られなければ、他者から信頼されにくくなるのは明らかです。

■4:「その場にいない人の悪口を言う」

自分の意見や意思を貫くよりも、目の前の人に対して「いい顔をするこ」とを優先する「八方美人」さん。ときとして目の前にいる人の気分をよくするために、ついついその場にいない人の悪口を言ってしまうことも…。本人には悪気はないとしても、「誰かを上げる(褒める)」ために「誰かを下げる(けなす)」のは、決してほめられた行為ではありませんね。そして、それがバレてしまえば「八方美人」認定です。

■5:「嘘をつく」

「八方美人」は結局自分がいちばん好き。ですから自分を守るため、つじつまをあわせるため、嘘をつくことにあまり抵抗がありません。呼吸するように嘘がつける…それも「八方美人」と言われる人の特徴です。


【八方美人が「嫌われる」理由】

「八方美人」はなぜ嫌われるのでしょう? その理由はズバリ、信頼できないから。誰からも好かれたい、嫌われたくない、よく思われたいと思うあまり、言動に一貫性がなく、相手によって態度を変える人を、信頼する人がいるでしょうか? ビジネスの現場では、たとえ一時的には双方の意見が対立したとしても、本音で意見を交換し、相手の考えを尊重しつつ、ベストの結論を探っていくものです。

でも、常に本音を明かさず、のらりくらりと調子のよい言葉を並べているだけの人と、信頼関係は築けません。「面白い企画ですね!」「いいアイデアですね!」と言われても、「本当にそう思っているのかな…?」と訝しく思われたり、別の場所で否定している発言をしていたことを耳にしたりすれば「なんだ、気休めを言っただけか」とがっかりされます。職場は意外とツーツーですからね。信頼できない人をパートナーにしたいと思う人はいませんよね。結果、「八方美人」は敬遠されることになるのです。


【「ほめ言葉」にするには…「類語」「言い換え」表現】

上述した通り、「八方美人」本来の意味は「どんな相手からも評判がいい人」です。誰とでも上手に付き合える人のことを、別の言葉で表現してみましょう。

■四字熟語

・八面玲瓏(はちめんれいろう)
「八面」も「八方」同様、「すべての方向」を意味します。「玲瓏」は中国語の擬態語で、「明るく透き通っている様子」を表します。「八面玲瓏」は「どの方面から見ても明るく透き通っている」ところから、「欠点がなく素晴らしい」ことを表すようになりました。「誰に対しても愛想よくふるまう」と、ややネガティブに使われることもありますが、「八方美人」ほどにはマイナスのイメージは強くありません。

・円転滑脱(えんてんかつだつ)
「円転」は「ぐるぐる回る」、「滑脱」は「滑らかに抜け出る」ことを意味します。「円転滑脱」は似たような意味の言葉を重ねて強調した表現で、「とても滑らかで、自由に動かせる」という意味の四字熟語です。「誰とでもうまく話ができて、危なげなくものごとをこなせる」といった意味で、いい意味での「八方美人」と同じように使われます。

■言い変え表現

・協調性がある人  ・気配りができる人  ・コミュニケーション能力が高い人(コミュ力が高い人)
・如才ない人 ・誰に対しても公平な人 ・誰とでも分け隔てなく付き合える人

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「八方美人」は悪いことばかりか、というとそうではなく、長所もあります。「八方美人」は聞き上手でほめ上手。柔軟性に富み、適応力にも優れています。「彼女は八方美人だから信頼できない…」と「彼女ってコミュ力高いよね!」は、同一人物を指すことも。感じ方や捉え方には、個人差があるもの。一部からネガティブな評判が立ったとしても、必要以上に気にしない、というのもビジネスパーソンとして大切なスキルなのかもしれません。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『四字熟語ときあかし辞典』(研究社) :