「八方美人」は文字通りに解釈すれば「どの方向から見ても美しい人」「誰に対しても愛想よく振る舞う人」という意味ですが、好意的に使われることが少ない熟語ですね。それはなぜ? 今回は「八方美人」という言葉の使い方や、ニュアンスを柔らかくする言い換え表現などを解説していきます。
【目次】
- 「八方美人」の「読み方」と「意味」
- 職場で「八方美人」と言われる人の「特徴」5選
- 職場で「八方美人」が「嫌われる」理由
- 「八方美人」のいいところ
- 「八方美人」の「類語」「言い換え」、ポジティブワードにするには?
【「八方美人」の「読み方」と「意味」 】
■読み方
「八方美人」は「はっぽうびじん」と読みます。
■意味
『デジタル大辞泉』によると「誰に対しても如才なく振る舞うこと。また、その人」とのこと。そして、「非難の気持ちを込めて用いることが多い」とも記されています。
■由来
そもそも「八方美人」とは、「どこから見ても難点のない美人」ということです。「八方」は、東西南北と、その中間の南東・南西・北東・北西の合計8つの方角を言います。要するに、「全方位、360度どこから見ても美しい人である」ということですね。この熟語自体にネガティブな要素は見当たりません。
ところが、「どこから見ても美人(美しい)」→「誰に対しても如才なく振る舞う人」→「他者に悪く思われないよう振る舞う人」と展開され、結果、ほめ言葉ではない意味で使われるようになったのです。しかも、「八方美人」という言葉には、見た目を指す要素はなく、内面に言及しています。
■男性でも「八方美人」?
「美人」は容姿の優れた女性を指す言葉ですが、「八方美人」という熟語は性別を問わず使えます。
【職場で「八方美人」と言われる人の「特徴」5選】
では、具体的にどんな人のことを「八方美人」というのでしょうか。あなたの職場にこんな人はいませんか?
■1:「相手によって態度を変える(相手に合わせる)」
「八方美人」は「どこから見ても美人」という意味でしたが、言い換えれば「誰から見ても美人」ということ。例えば、ライバル関係にあるA部長とB部長への対応もカメレオンのごとく、どちらにもいい顔をします。利害関係が発生するシーンでは顕著です。
■2:「誰にでも愛想をよくする」
「八方美人」は他者から嫌われるのを恐れるあまり、誰にでも愛想を振る舞います。職場ではむすっとしているより明るい人のほうが好まれそうですが、お愛想も過ぎるとうっとうしいと思われるのでご注意を。
■3:「本心・本音がわからない」
常に明るく誰にでもいい顔をして愛想を振る舞う…場を明るくしてくれますが、つかみどころがありません。真摯に向き合う姿勢が見られなければ、他者から信頼されにくくなるのは明らかです。
■4:「その場にいない人の悪口を言う」
目の前の人にいい顔をすることが優先される「八方美人」は、ときとしてその場にいない人の悪口を言ってしまうことも。これは「あなたのことを大切に思っていますよ」と伝えたいあまりだとしても行きすぎ! 批判や批評は本人に、が原則です。
■5:「嘘をつく」
「八方美人」は結局自分がいちばん好き。ですから自分を守るために偽る、嘘をつくことにあまり抵抗がありません。
【職場で「八方美人」が「嫌われる」理由】
「八方美人」はなぜ嫌われるのでしょう? その理由はズバリ、信頼できないから。誰からも好かれたい、嫌われたくない、良く思われたいという気持ちが働くため言動に一貫性がなく、人によって態度が変わることも。仕事の現場では、過去の実績による信用をもとに信頼関係を築いていくもの。そこに不安がある「八方美人」は敬遠されることになるのです。
【「八方美人」のいいところ】
「八方美人」はもともとは「素敵な女性」を意味する言葉です。ここまで短所を挙げてきましたが、「聞き上手」や「ほめ上手」だったり、「柔軟性がある」「適応力に優れている」など、好意的に解釈することもできます。
【「八方美人」の「類語」「言い換え」、ポジティブワードにするには?】
■類語・言い換え表現
・二心を持つ(にしんをもつ):心をふた通りにもつこと
・日和見(ひよりみ):有利なほうにつこうと、形勢をうかがうこと
・ことなかれ主義:周囲との摩擦を避け、平穏無事を願う消極的な考え方
・節操がない:主義・意見・考えなどを保持することなく、場当たり的に変えること
■ポジティブな意味で使う場合の言い換え
・協調性がある人 ・気配りができる人 ・コミュニケーション能力が高い人(コミュ力が高い人)・世渡り上手 ・如才がない
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「彼女は八方美人だから信頼できない…」と「彼女ってコミュ力高いよね!」は、同一人物を指すことも。感じ方や捉え方には個人差があるものですよね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『新選漢和辞典 Web版』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :